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「ベンチャーは個の持つ指向性が柱になる」サザビーリーグ創業者・鈴木陸三が起業家たちに伝えたいこと

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80年代のカフェや雑貨ブームの火付け役となった「アフタヌーンティー」に始まり、近年は「スターバックス」の日本展開や西海岸のライフスタイルブランド「ロンハーマン」、行列のできるハンバーガーレストランの「シェイクシャック」など、衣・食・住の様々なブランドを40近く展開するサザビーリーグは日本の小売業界の中でも異色の存在だ。

昨年からライフスタイル業界の新規事業をインキュベーションする「リアンプロジェクト」を創設し、小売・飲食・ファッションなどのベンチャー企業と、大手企業や投資家をマッチングさせるエコシステムを作ろうとしていることも、IT業界以外の動きとしては異例だろう。

今回は創業者の鈴木陸三氏にインタビューし、同社が新規事業支援の仕組みを作ろうとする理由と自身が考えるベンチャースピリットとは何かを聞いた。

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■ 30歳になっても方向性は見つかっていなかった

やりたいことを見つけるまで、30歳まではフーテンをするって決めていた。
大学を卒業してお金を貯めるとすぐヨーロッパを目指して旅立ち、ロンドンを拠点にヨーロッパで遊学して29歳で日本に帰ってきたけど、海外に行ったからといって何か方向性が決まったわけでなくてね。自分のわくわくすることで飯を食べたいけど、それが何かまだわからなかった。だから僕は会社に入らず起業するしかなかったんだよね。笑

起業した70年代は模索の時代だった。自分の体験した西洋をどうやってビジネスに落とし込むか。大手アパレル企業の下請けでTシャツのデザインなんかして食べていくことはできたけど、それだけでは儲からなくてね。ファッションを学んだわけでなくバックボーンがないから、縦に深堀するのではなく横に広げていった。ヨーロッパのユーズド家具の輸入もバッグの企画も、とにかく横に広げていく中で飲食業、レストランも自然と始めることになった。

■「プロ」へのアンチテーゼから生まれた、業界人の集う伝説のレストラン

70年代のレストランはどこも白ナプキンでフルサービスで、高級なカトラリーを使っている肩肘を張ったスタイルばかりだった。僕が一人の顧客だとして、楽しくておしゃれで粋で、僕自身行きたいと思えるレストランがなかった。当時は食器や什器にお金を掛けて豪華なつくりにすることが当たり前、それが「プロ」のやり方だった。だけど僕はプロのやり方は古いんじゃないかと思って。もっとおいしい料理を気軽に味わってもらいたいと思いました。

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創業時の鈴木陸三

そんなプロへのアンチテーゼから生まれたレストランが高樹町(現在の青山)に開店した「シルバースプーン」だった。当時会社にお金もなかったし、如何にコストを抑えて格好いいお店にするかが第一プライオリティ。内装は配管むき出しのスケルトン。「開店祝いのお花は要りません。」と社員や知り合いに伝えて、代わりに使い古しのカトラリーを持ってきてもらった。形も色もバラバラの食器。当時サザビーが輸入していたユーズドのヨーロッパ家具を置くけどやっぱり椅子もバラバラで。笑 パリ修行から帰ってきた熊谷喜八さんにシェフをお願いしたけど、最初は「こんな、どこが入り口かわからないようなレストランで料理なんて出せません」なんて言われたけどね。

--レストランビジネスをやったことがないのにいきなり型破りなことをして、周囲に反対されませんでした?

独断でやったからね。笑
20代にヨーロッパで現地の生活を知って、起業してからは買い付けのための渡航も何度も繰り返し、その度にいろんなホテルにも泊まって。自分が見てきた世界と生活、その中で作られた価値観や志向があってそれに応える自分が行きたいレストランを作った。結果的に当時のレストランの常識では考えられない空間や料理を提供したことが反響を呼び、川久保さん(コム デ ギャルソン デザイナー)、ヨウジさん(ヨウジヤマモト デザイナー)をはじめ、ファッション業界の打ち上げから芸能人、モデル、来日したハリウッドスターまでが訪れるお店になりましたね。

いろんなことが後付けで語られるんだけど、一つのことを深く突き詰めるのではなく飲食やアパレルなどを横に事業を広げてきたことが結果的にサザビーリーグを「ライフスタイルの先駆者」にしてくれた。今マーケットがないからダメではなくマーケットがないから自分たちがここで無から有を作る勝機があると思った。俯瞰して見たときに自分もセミマジョリティのひとりで、自分と同じようにそこに新しいわくわくする新しい価値をほしいと思っている人がいると思ったし、自分のことを今でもプロではなく「手強い消費者」だと思っている。

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鈴木が立ち上げたアフタヌーンティー1号店の写真(渋谷パルコ)

--そんな半歩先のライフスタイルを提案し続けるサザビーリーグが今年も3月に「リアルでもまだまだやれることがある」をテーマにしたライフスタイルビジネスの事業案を支援するピッチイベントを開催されますが、現在の起業家に向けて何かアドバイスはありますか?

このイベントは銀行など投資関係者や我々の同業他社、デベロッパーの方々に来場してもらい、ライフスタイルに関連する起業家とのビジネスマッチングが目的だ。

そして僕個人の視点から言うと、起業家にチャンスをつくることが僕らを育ててくれた業界への恩返しの意味もあると思っている。

僕にとっては「何か面白いことがしたい」という思いがベンチャースピリットだった。それも前向きな普通生活者の自分自身がわくわくできること、手の届くことを形にしたかった。だから、起業家の人にはまず自分が、個が大切と伝えたい。個の持つ志向性が柱となってしかるべき。

そして起業した後には混乱したりカオスなときもあるだろうけど、まずは信頼できるパートナーを見つけてこれだと信じるものを突き詰められるかが大事。だけどそれと同時に、自分たちがやってることに絶えず疑いをもって文化社会学者のように生活の流れや思考を大別しながら今の時代を検証する視点が必要だ。その上で自分で違ったプラスアルファを考えていけばいいんじゃないかな。今年どんな起業家に出会えるか、楽しみにしています。

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ピッチイベント「Lien Project」会場