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中国における老人性認知症の疫学及び介入のための施策

2017年04月17日 17時00分 JST | 更新 2017年04月17日 17時00分 JST

『中国養老金融発展報告(2016)』によると、65歳以上の高齢者人口推移については、2030年に2.8億人に上昇し、総人口に占める割合は20.2%、2055年にはピークの4億人、27.2%となると推計されている。

その中で、2040年までは高齢化が最も急速な時期であり、年平均上昇率が0.5%を上回るようになる。多くの国が人口高齢化の課題に直面しているが、中国にとって最大の違いは、「先進国になる前に高齢化社会に入ってしまう」ことである。

高齢者人口の急増に伴い、高齢者に係る様々な老年性疾患の罹患率も明確に上昇して行き、そのうち、老人性認知症は日常的に認められる疾患である。

一、老人性認知症の定義

老人性認知症とは、神経変性疾患、脳血管障害、感染症、外傷、腫瘍、栄養代謝障害等多数の原因による認知機能障害を主な臨床症状として呈する、一連の日常的に認められる老年性疾患を指す。

国際疾患分類 (ICD-10)に基づき、老人性認知症はアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症等に分類される。アルツハイマー型認知症は、神経病理学並びに神経化学上の特徴を有する、いまだ原因不明の原発性脳変性疾患である。

この疾患は通常自覚症状のないまま発病し、進行が緩慢で長年に渡って徐々に症状が目立つようになる。脳血管性認知症の原因は、高血圧性脳血管障害を含む血管疾患による脳梗塞の結果であり、このような梗塞は通常微小であるが次第にその影響力が大きくなり、寿命の末期に発症する。

アルツハイマー型認知症または脳血管性認知症以外その他の原因による認知症もあり、 生涯にわたりいつでも発症の可能性があるが、高齢者の発症はまれである。

二、中国における老人性認知症の罹患状況

中国人の老人性認知症の患者数は全世界の1/4を占め、毎年約30万人の新規発症者があり、罹患率は毎年上昇していく傾向にある。65歳以上の高齢者のうち老人性認知症の有病率は3.5~5.4%で、80歳以上の高齢者では20%に上り、女性が男性より高い状況にある。

中国における老人性認知症罹患率に係る研究は比較的少なく、60歳以上の高齢者では0.9~1.2%とされている。中国でもアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症は最もよく認められる2種類である。認知症全患者数のうち、アルツハイマー型認知症が50~70%を占め、脳血管性認知症は10-20%を占めている。

発症の危険因子として、アルツハイマー型認知症では、年齢、女性、低学歴、活動の欠如、心血管疾患及び鬱病等があり、脳血管性認知症では、年齢、男性、活動の欠如、喫煙及び循環器疾患等がある。

三、老人性認知症に対する介入のための施策

(一)一次予防

主に、健康的な生活習慣の普及を推進し、健康上有益な簡素で栄養価の高い飲食を維持することが提唱されている。野菜や果物、魚介類、豆・ナッツ等の食べ物を多く摂取し、調理時に動物性脂肪の代わりに植物油を用い、特にオリーブ・オイルの使用が勧められる。減塩を重視し、飽和脂肪酸を含有する食べ物を避ける。更に、循環器疾患の早期治療を受け、禁煙・節酒を励行し、血圧や血糖値を下げるように注意を払うべきである。

脳の訓練が機能の活性化に有効であり、また、認知トレーニングの強化は認知症の3次予防システムにまで効果的な役割を果たすことから、全ての人の全ての段階において良好な予防効果がある。

認知トレーニングは脳の神経密度に影響を与え、シナプスの再生及び血管の保護になり、グリア細胞及びその代謝活動を活力化し、栄養因子及び海馬神経細胞の再生を促進を通じて、神経の可塑性を改善する作用を持つ。そのため、高齢者の健康的な認知促進技術として、特に認識障害の危険因子を持つ人の認知改善方法として、その応用に有望な見通しが立てられている。

疫学研究によると、有酸素運動が認知症予防に効果的な役割を果たすとともに、関連疾患の進行を遅らせることができる。この観点を支持する根拠としては、神経栄養因子の放出を活力化し、血管生成の促進により神経の形成並びにシナプス再生を促進し、更に記憶力と認知機能の向上になることが示されている。

また、有酸素運動は、活性酸素分解酵素、内皮型一酸化窒素合成酵素、脳由来神経栄養因子、神経生長因子、インスリン様成長因子及び血管内皮増殖因子の合成を向上させるとともに、脳領域、特に記憶力に係る海馬領域のフリーラジカルの発生を減少させることができる。加えて、ある研究によれば、有酸素運動は、黒質にあるドーパミンニューロンの変化を抑制し、更にドーパミンとグルタミン酸神経の伝達を通して、大脳基底核の機能を最適化させること報告されている。

うつ病の治療も老年性認知症の予防方法と見なされており、高齢者の感情コントロールを助け、気分転換になり、良好な心理的健康並びに生活の質を維持することに繋がる。

(二)二次予防

ほとんどの場合、一般的な人は認知症に係る一連の症状に気付かないままであることが多い。通常、記憶力低下が認知症の症状と見なされているが、興味喪失または行為の変化等の他の症状が十分認識されていない。患者及び家族が、記憶力低下が高齢化の一部と考える場合、医療的援助を求めない場合がある。

認知症に係る知識の欠如は、恐れと偏見を深め、患者及び家族が社会から孤立され、診療及び援助を求める機会の遅延に繫がる。関連知識を把握して理解を深めることで、疾患に対する恐れと偏見を低らし、患者及び家族がよりよく援助を求められるようになるとともに、社会にとってもより良くそのような人々にサポートを提供することができる。

政府と有識者が公衆の意識向上並びに関連知識の普及を重視し、認知症への偏見を低減し、認知症患者を尊敬し、介助並びにサービスを与えるよう、世界アルツハイマーデー等に応じて様々なイベントも開催している。

認知症は、世界的に静かに進行する流行病と見なされ、直面しなければならない課題が沢山ある。そのうちの一つとしては、タイムリーに的確に診断することである。医療従事者や他の専門家は、その役割を果たし、高齢者の認知症症状を評価し、深刻な患者へ関連情報を提供し、認知症患者が早期診断されるよう協力している。

早期診断により早期介入が可能となる。その結果、患者が生活を維持し、合併症を最小限に抑え、生活の質を向上させることが出来、効果的な施策を講じることができる。早期診断は、家族介護者への教育、研修、カウンセリング及びサポートに繋がり、より良い家族の対応施策を策定するができる。

関連研究によると、正常な高齢者と認知症患者の間に、軽度認知障害という段階があり、この段階の患者の早期識別及びコミュニティのフォローアップを行い、対症療法または支援ができれば、症状進行を遅らせる点で有利である。

(三)三次予防

前述のとおり、認知トレーニングは老年性認知症患者に対して症状の進行を遅らせる予防効果がある。多数の研究により、認知トレーニングは認知症患者の認知能力の改善に対しても効果的であることが実証されている。

認知症末期の患者は、殆ど完全に他人による看護を受け、自分で行動できなくなる。重度の記憶障害が出て、その徴候及び症状が益々顕著になっていく。

症状は、時間・空間への意識喪失、親戚や友人の識別が難しくなり、自立出来ずより多くの介入や介助を要し、歩行も困難になり、攻撃性を含みより多くの行動変化が出てくる。この時、症状の進行を遅らせ、身体障害・死亡率を減らす為に、薬剤による治療、身体機能のトレーニング及び栄養によるサポート等の適切な対症療法を行うべきである。

現在、認知症患者にホスピスケアの提供も上海市等の地域で試行的に行なっている。医療機関や介護施設の臨床医または他の専門的経験を持つ人材によって、ホスピスケアの管理または実施しされ、今後発生しうる問題に対応する。

これらの問題は、痛み、食べ物や飲み物の嚥下困難、介護者と家族への心理的カウンセリング、緩和ケアへの適応等を含む。患者及び家族へのホスピスケアは有益なものであり、家族並びに社会に評価されている。

参考文献

1.『中国養老金融発展報告(2016)』

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(2017年4月7日「MRIC by 医療ガバナンス」より転載)