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いかにエリアマネジメントを持続可能なものにしていくか

2016年02月16日 16時54分 JST | 更新 2017年02月15日 19時12分 JST

つづくまちの開発論」、安田不動産の複合再開発物件「ワテラス」プロジェクトインタビューの後編をお送りします。後編ではまず、エリアマネジメントの担当者が得たノウハウの活かし方について聞いていきます。

「つづくまちの開発論」ワテラスインタビュー

まちづくりのプロフェッショナルとなるために、末永くひとつの街の仕事を続けていくことも可能なのでしょうが、それでは後進が育たず「例外的な人材」で終わってしまいます。

安田不動産はワテラスで培った知見を今後の事業でどう活かしていくのか、民間による長期的なエリアマネジメントを実現するためには、何を達成しなければならないのかについて迫る内容となっています(ジンボ)。

聞き手:荒昌史(HITOTOWA INC.)、寺井元一(まちづクリエイティブ)、ジンボユウキ

「半公共」的な組織は民間企業にとってもメリット大

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左:資産営業事業本部の松本久美さん

右:資産営業事業本部の永塚武さん

寺井:ここまでのお話をうかがってきて、エリアマネジメントという「地域貢献・社会貢献」に近い活動を、民間企業が本業の延長線として手掛けている点が興味深いところだと思いました。

短期的な視点、それこそ開発時期に本業とシナジーがあるのは分かりやすいけれど、長期的な視点での利益を出すと考えるとなると簡単ではない。その辺りを踏まえて、今後の運営をどうやっていくのかな、という部分に興味があるんですが、どうお考えでしょうか?

助川:まず、直接的な運営について言えば何かトラブルがあった時に調整役として出てくるぐらいの立ち位置が理想的ですね。土地・建物のオーナーであることから始まって、管理会社、エリアマネジメント組織の事務局機能は残るでしょう。町会長さんに以前言われたのは「私はいずれ引退するけど、安田不動産さんがしっかりと法人として残っていてくれるのが心強いよね」ということなんです。

永塚:困った時の存在ということだよね。「何かあった時には安田不動産がいてくれる」という安心感というか。

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毎月第2金曜・第4日曜に開催する「ワテラスマルシェ」の様子

――「長期的に残っていく人材」といえば、ワテラスに関わる学生さんたちの今後についてお聞きしたいと思います。彼ら・彼女らが卒業した後でも「自発的に関わりたい」という学生さんたちに対するプログラムや仕組みはあるんでしょうか。卒業後にワテラスへ戻ってくるということは想定していますか?

永塚:待ってました(笑)。

松本:いずれそうした仕組みは作りたいと思っていますが、今の段階ではまだ無いですね。ただ今年はOB・OG会を立ち上げようと思っています。

永塚:彼ら・彼女らがいずれ神田の文化の発信役になってくれるとすごく嬉しいよね。

寺井:ワテラスを開発して運営するまでの約10年間の知見はすごく貴重なものだと思うんですが、今後それはどのように活かされていくんでしょうか?

助川:当社は今後、日本橋浜町や神田において、大きさや形は様々ですが、開発しながらまちづくりをしたいと考えています。そこでも法人化するかどうかは別にして、ある程度エリアマネジメントをやる必要があると思っているんです。そこにはきっとワテラスのノウハウは活きてくるはずです。その場所に合ったやり方があると思います。

――なるほど。

助川:純粋な民間企業ではなく、地域住民も入った組織なので淡路エリアマネジメントの「半公共」な組織の強みっていうのはかなりあるんです。

寺井:メンバーに町会長が居たりするわけですから、単なる民間企業とは違うんですね。

助川:町会長が「やりたいんです!」と言えると(笑)。一方で、エリアマネジメント組織存在は町会にとってもメリットがあるんですよ。結果的に町会も含めた地域のにぎわいづくり、活性化、防災活動の一部を担っているので。

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全国の農産品、農産物加工品、雑貨などを販売する「ワテラスマルシェ」

まずは黒字運営が目標。並行展開できるサスティナブルなエリアマネジメントへ

寺井:今回、お話をうかがっていてすごく興味深かったこと一つあります。会社組織だと、属人的すぎる仕事はあまり良しとされないじゃないですか。ただそのなかでも独自性、創造性の追求みたいなことを考えると、例外が出でてしまう。

まちづくりはそういう部分が多くて、開発するまでの権利者との人間関係の構築もそうだし、建物ができた後のエリマネもその個人によるところが大きいと思います。今だと、担当者にエリマネのノウハウが俗人的に蓄えられている。

運営のノウハウがある程度溜まってきた段階で外注も検討していくと思いますうが、その場合、担当者に蓄えられたノウハウをどう活かしていくのかっていう点にも興味が湧いてきます。

助川:どう答えればいいんだろう(笑)。会社としては1人の担当が永遠に担当することはないので、個人に蓄えられたノウハウ=属人的な要素を一般化・マニュアル化しなければならないということはあります。それを踏まえて、担当の個性を加えていくというようなことだと思います。

永塚:エリアマネジメントの業務だけに限らず、それは当社としても問題意識を持っていると思います。総合職だったらジェネラリストとして3年周期でいろんな部署を経験させるみたいなことがあるじゃないですか。だけど今の時代はスペシャリストの要素も必要になってきている。

:エリアマネジメントを含めてまちづくりの仕事って、どれだけマニュアル化できたとしても、つまるところは属人的な部分がありますよね。

松本:業務の引き継ぎ自体はできるけれども、という話ですよね。

:これまでの不動産ビジネスは「誰が作っても同じものを展開できる」っていうモデルが強みでした。だからこそ今まちづくりの新しい分野であるエリアマネジメント事業が面白いとも思うんです。

まさに各社さんの個性が出る、面白いところですよね。例えばブランドや立地で差別化するのではなくて、人材の質によってまちづくりの価値が上がるんだっていう考えもできると思うんです。僕らがやっている仕事はそれに近い部分があって。

寺井:最後の質問ですが、ワテラスでのエリアマネジメントの取り組みを通じて、前向きな意味での今後の課題というのは何かありますか?

松本:冒頭で話した「エリアマネジメントが上手くいったかどうか」という評価手法と、持続性のある収益の確立ですね。スタッフの人件費は安田不動産がバックアップしている状態です。

松本:いかに活動資金を確保していくのかというのは大きな課題です。

助川:収入面では、管理組合が管理する広場など等においてテレビや映画などの撮影があった場合、その使用料収入は全部エリアマネジメント組織の収入となります。そうした積み重ねで少しずつ稼げるようになると良いですね。そのために場所のブランド力、付加価値を上げる必要があります。

寺井:高く借りてもらうにはブランド化が必要ですからね。

永塚:「あのエリアマネジメントも5~6年で終わっちゃったよね」と言われるのは嫌ですね。

:まちづくりのための収益化という意味では、当社が事業を請け負っている団地再生事業で、新規事業づくりも請け負っているんです。やはり活動を通して資金面ではプラスマイナスゼロにしたいですよね。

今の事例の場合は、そのためには今の収入にプラス500万円ぐらい必要なんです。そのうち300万円ぐらいはコミュニティスペースの運営やカーシェアリングなどで確保できるので、あと200万円必要という状態にまで持ってこられました。

永塚:まずは少なくとも活動資金はサスティナブルな状態にしておきたいですよね。ワテラスに近いエリアでの事例だと、秋葉原のTMOでは駐輪場の管理等の委託を受けているようです。淡路エリアマネジメントでも貪欲に収益の機会を探っていきたいと思っています。

――ありがとうございました。

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左から、まちづクリエイティブ寺井さん、安田不動産助川さん、松本さん、永塚さん、HITOTOWA INC.荒さん。

(終了)

(2016年1月28日の「マチノコト」より一部修正して転載)