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街をプラットフォーム化する"エリアマネジメント"構想と虎ノ門の未来図 [マチノコトオープンゼミ]

2014年08月24日 23時16分 JST | 更新 2014年10月24日 18時12分 JST

毎月開催しているまちづくりやコミュニティに関する行政職員向けの勉強会「マチノコトオープンゼミ」も、8月で3回目を迎えました。今回、ゲストにお越しくださったのは、森ビルで虎ノ門ヒルズのプロジェクトに携わる黒田哲二さん。

マチノコトオープンゼミの会場となっているリトルトーキョーも、黒田さんが携わって誕生したスペースです。アーバンネイバーフッド、アートプロジェクトに続き、今回は「エリアマネジメント」というキーワードについて、参加者のみなさんと考えました。

作る側と使う側のギャップ

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黒田さんは元々大学では建築を専攻し、建築家・隈研吾の事務所に新卒で入社。建築の仕事に携わるものの、"作る人"と"使う人"のギャップを感じていたと語ります。

黒田さん「両者とも、最初は良いものを作りたいという想いでプロジェクトはスタートします。ただ、良いものにもズレがあって、それがプロジェクトが進むほどだんだんとずれていき、最終的に大きなズレになってしまう。作る人と使う人はイメージも、使う言葉も違うので、コミュニケーションが難しい。ここをなんとかつないでいくことはできないか、そんなことを考えていました」。

その後、黒田さんは都市デザインシステム(現・UDS)という会社に転職します。同社は、自分たちが暮らす住まいを、土地の取得から建物の設計、工事発注、管理など全ての過程を自分たちで共同して行う住まいづくりの手法「コーポラティブハウス」などを手がけていました。

黒田さん「土地があったら、まず住む人を集める。そして、作る人と使う人とで協働しながら住まいづくりを進めていくやり方を経験しました」。

UDSを経て、森ビルに転職。4年前から虎ノ門ヒルズのプロジェクトに携わります。「環状2号線」の再開発計画として始まったこのプロジェクトにおいて、黒田さんは虎ノ門ヒルズカフェの立ち上げ、周辺のエリアの開発を担当。オープン後は運営の立場として虎ノ門ヒルズのプロジェクトに携わっています。

"共同"を重視してプロジェクトを進めてきた森ビル

戦後は個人がビルを立てて、下をオフィスビルとして貸し出すということをしていたそうです。霞ヶ関が近かったため、弁護士事務所や第三者機関が入っていたんだとか。森ビルが建てた最初のビルは虎ノ門エリアにあるそうです。

60年ほど前に、焼けてしまったコメ屋の跡地にビルを建てる際、隣のビルと一緒に作れたほうが面積も広くなるし、価値も高くなるのではと考え、隣の人と一緒にビルを建てました。以後、森ビルはこうした共同化で徐々に建物を増やしていったそうです。

街のメディア化を図った「タウンマネジメント」

ヒルズといえば、六本木の六本木ヒルズを思い浮かべるかたが多いかと思います。10年前に完成した六本木ヒルズが成功した理由はいくつかありますが、そのうちのひとつが「タウンマネジメント」だ、と黒田さんは語ります。

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黒田さん「普通の施設は、最初に一番価値があって、時間経過とともに価値が下がっていきます。どうしたら時間が経過しても価値が下がらないようにできるのか。価値を下げないためには、街を運営して、街をさらに魅力的にしていくことが必要なのではと考え、森ビルはここに力をいれました」

街を魅力的にするために一番必要なことはお金。お金を使えばイベントなどいろいろ人が集まる仕掛けがでできるようになります。では、どうやって街をつかってお金を稼げばいいのか?当時、森ビルがとったアプローチは「街をメディア化する」というものだったそうです。

黒田さん「日比谷線の駅から出た場所に、メトロハットがありますよね。あそこは全面広告が可能な空間になっています。色々な企業にあの場所に広告を出してもらってお金をもらい、そのお金を使って街を綺麗にしています」。

こうした「街をメディア化する」という考えのもとお金を稼ぎ、そのお金を活用して街を盛り上げる仕掛けをうっていきました。

「エリアマネジメント」はメディアからプラットフォームへ

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今回、虎ノ門ヒルズを運営するにあたって、街をさらに大きな単位でとらえようと、新しく「エリアマネジメント」という概念が作られました。エリアマネジメントはどうするのがいいのか、という問いに対する答えはまだなく、黒田さんもまだ模索しているところだといいます。

黒田さん「街の要素を単純化して考えると、人、モノ、お金、情報などが挙げられます。こうした色々なものをどうやって集めるかを考えなくてはいけません。いきなり映画館が街にできたとして、人が来てくれるのか、と考えると必ずしもそういうわけではありません。

六本木には昔も文化的な要素があったのですが、虎ノ門は昔からビジネス街で文化的な要素がほとんどない。そこで、街に必要な要素の中でもまずは人に焦点を当て、虎ノ門に人を集めることにしました。そうしてムーブメントのコアになるような人たちを集めるため、当時付き合いのあったシゴトヒトの中村健太くんやグリーンズのYOSHに声をかけ、元々寿司屋だったこの場所をリトルトーキョーというスペースにしてもらいました」。

リトルトーキョーの他にも、虎ノ門エリアではグリーンバードが活動をスタートしていたり、キュレーターズキューブというスペースが存在しています。黒田さんはこうしたスペースを生み出していくことで、虎ノ門という街に文化の種を植えるような活動をしています。

黒田さん「これはIDEEの黒崎さんの受け売りなんですが、カルチャーという言葉は由来が「カルティベイト」、耕すという意味から来ていて、カルチャーを育てるためにはまず畑を耕す必要があります。文化を育てるにはまず耕していく、そして人の種まきをしていって、少しずつ虎ノ門の文化を育てていこうとしています」。

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黒田さんから虎ノ門ヒルズの話を伺った後は、参加者のみなさんと会場全体で話をしたり、各テーブルごとに感想のシェアなどを行いました。質疑応答の中で登場した、ハイヤーを呼ぶモバイル・アプリケーションのUber的な「エリアサービスのプラットフォーム」といった考え方や、「モバイルと空間とまちづくり」という3つの視点、「コモンスペースの活用」といったいくつもの視点が登場していました。

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黒田さんはイベントの締めに、「街という規模ではアクセルをふむ人がいないと物事は進まない。ビジョンをもってアクセルを踏み込んでいく人が必要だと思います。」とコメントしていました。この考え方はまちづくりに取り組む上でとても大切なものだと思います。

虎ノ門というエリアが今後どのように変化していくのか。気になりますね。マチノコトオープンゼミは月イチペースで開催しています。これまでの様子はこちらからご覧ください。

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(2014年8月21日の「マチノコト」より転載)