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一緒にまちを作っていける「攻めの移住者」歓迎 ーー "ベンチャー気質な町"鹿児島県長島町が描くキャリアとは?

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鹿児島県に長島町という県内最北端の町があります。長島本島ほか大小の島々からなり、人口は約11,000人。日本の他の市町村と同様、この町でも人口減少が進んでおり、町内には高校がないため人が外へと出て行ってしまっています。

鹿児島県長島町の場所がイメージできない方のために地図を表示すると、このあたり。

鹿児島県長島町では、収益減とはなっているものの、ブリ養殖の売上で世界一を誇っており、基幹産業は農業・漁業。

農協・漁協がそれぞれ年間100億円超の売上高となっており。特に東町漁協は日本で初めてEUのHACCPを取得し、27カ国に輸出しているそうです。

この町が外部人材の積極的登用を目指して、24種類の職種の募集をインターネットで開始しました。

求人の先を見据えた、4つの指針


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使われているのは、日本企業が運営する、「純国産」を売りにした求人検索エンジン。

このサイト上で、地域おこし協力隊の制度を活用して、地方創生に取り組む鹿児島県長島町の地方創生人材の公募が行われています。

長島町に史上最年少副町長として、総務省から出向している井上貴至さんは、今回の公募に対して、

  • 「地方における安定した雇用を創出する」
  • 「地方への新しいひとの流れをつくる」
  • 「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」
  • 「時代に合った地域をつくり、安全なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」

という4つの基本目標を掲げています。この目標のもと、24種類もの職種を募集するようになった背景には、副町長の井上貴至さんと地域おこし協力隊の第一号としてこの町にやってきた土井 隆さんの活躍がありました。

地域の中と外をつなぐ発想

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鹿児島県長島町 副町長 井上 貴至氏

総務省で働いていた時から、各地に足を運び、地域の状況を知るようにしていた井上さん。「自分には地域の中と外をつなぐ役割がある」、そう考えて日々活動していたそうです。地域を巡る中で、長島町にコミットしたいと考えた井上さんは、政府が全国の市町村に国家公務員を派遣する「地方創生人材支援制度」で2015年4月に長島町に赴任。様々な活動を始めました。
井上さん「長島町には、高校がないため子どもたちは高校から島外に出ていきます。ただ、島外に出るとそれだけお金がかかる。そこで「ぶり奨学金」という制度を開始しました。これは、島全体で奨学金の費用を補填し、生徒たちは卒業後、長島町に戻ったら、戻っている期間は奨学金の返済が不要というものです。これは、地元の金融機関と組むことで実現しました」
回遊魚であるぶりにちなんで生まれたこの奨学金制度。メディアに取り上げられるほど注目の取り組みとなっています。井上さんは、外部人間ならではの発想をもって、地域の外と中をつないで、様々なコラボを実現させてきています。
井上さん「地域のことは地域の人だけで語ると失敗します。地域では、階層が固定化しがち。これをゆるやかにかき混ぜてみようと思いました。外から新しい人がきて、これまでは島にはなかった仕事をする。そうすると、島の若い人たちには多様な働き方があることが伝わります。今回の募集職種を多めにしているのは、こうした理由もあります」


志ある企業と連携する


「志ある企業とどう連携するか。これが大切です。」自治体に欠けているのは、いろいろな企業と共に仕掛けていくこと、そう井上さんは語ります。長島町では、ここ最近、様々な企業と連携しています。その立役者となっているのが、土井さんです。

土井さんは、慶応義塾大学環境情報学部卒業後、大手IT企業に入社。ECコンサルタントとして男性用化粧品ブランドなどのマーケティングを担当。4万店が出店するインターネットショッピングモールの中で売上高トップの店舗をつくり出すなどの実績があります。

個人向けにネットマーケティングを強化していきたいと考えている長島町において、B2Cマーケティングや今回のネットによる人材公募などを担当しています。過去に、ネットベンチャーに在籍していたこともある土井さん。そんな土井さんからすると、長島町は「まるでベンチャーのような空気」なんだそうです。
土井さん「もっとこうしたらいいんじゃないか、そう考えて提案したことが、ものすごい速度で決まっていてって、実施まで至る。これは大企業ではなかなか出せないスピード感で、ベンチャー企業のような空気を感じています。井上さんもパッションのある方で、彼をはじめ町の人たちの熱気もベンチャー企業のような雰囲気を感じさせてくれます」


そう語る土井さんは、いつか地域や行政といった領域に関わる仕事がしたいとは考えていたそうですが、自らが移住することは全く考えていなかったそうです。

土井さん「井上さんに出会って町に呼んでもらって、ECに関しての講演をしました。そのときにいろんな提案をしたんです。そうしたら、「それやろう!いつからやろうか?」という話になって。これだけ話が早く決まることや、自分のスキルが活かせるフィールドがあることが嬉しくて、移住を決めました」


自らのスキルを活かせる場所がある。それが移住を決めた要因だったという土井さん。移住後は、これまでに培ってきたスキルだけではなく、ネットワークも活かして様々な企画を実現しています。

スキルとネットワークを活かして地域で仕事をする


たとえば、長島町で漁師の奥さんをしている人たちが、レシピサイトを通じて島のレシピを公開しています。これは土井さんがサイト運営会社で働く知人に相談したことから実現したんだとか。

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町の人たちが集まる飲み会に呼ばれ、そこで顔を合わせて町の人たちと話をしている中で見つけた、漁師の主婦の方々が持つ料理スキルという魅力。

それをインターネット上のレシピサイトというプラットフォームを通じて発信するというアイデアを思いつき。主婦の方々向けに投稿の仕方などを伝える説明会を開催したそうです。

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この取り組みに加えて、今実施している求人検索エンジンでの募集も、土井さんの紹介がきっかけでスタートしたもの。他にも、現在いくつかの企業と連携の話が出ているそうです。これが移住してからわずか1ヶ月半の間に起きたこと。地域おこし協力隊の人が、長島町で形にできることはまだまだありそう。

「誰でもいいから来てよ」は失敗する

土井さん「地域の人材を募集する際に、「誰でもいいから来てよ」になると誰も来ません。ですが、全国の募集を見ていると、そんなところはいっぱいある。大事なことは、町としてのビジョンを伝えること。 そして、そのビジョンに関われるような人を呼ぶ。私は、町を訪れてこの町で働いているイメージがわいたことが移住を決めたきっかけとなりました。今回募集している移住者の方がたも、町を実際に見て、自分にできることを提案してもらいたいと思っています。そうすると、ここで暮らす雰囲気や働くイメージがわきますから」
「こうした人たちが集まれば、町のドリームチームができる。そこで仕事ができていき、仕事があれば人口も増える。私たちはその仕組みを作りこみ始めたところです」そう土井さんは語ります。
井上さん「地域は、東京の価値に振り回されていてはダメです。自分たちの価値を作っていかなければなりません。そのためには、自分たちで考えて、自分たちでルールを作っていきます。私たちと一緒に町を作っていける、好奇心旺盛な人、新しいことにチャレンジしたい人は、能力が活かせる場所、地域だからこそのキャリアアップだと捉えて検討してみてもらいたいと思います。」

(2015年11月25日の「マチノコト」より一部修正して転載)

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