【スペイン・サンティアゴ巡礼】巡礼路で見つけた、「あってはならないもの」

ワイン畑のなかを延々と歩いたこの日。妻はアレに悩まされ、夫は衝撃的なものを発見してしまい.....?

世界でもっとも有名な巡礼地のひとつである、スペイン北西部のキリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ。

日本人女性と結婚し、ハネムーン代わりにそのサンティアゴを目指して巡礼路を歩くことにした、ドイツ人のマンフレッド・シュテルツ氏の手記をお届けしています。

ワイン畑のなかを延々と歩いたこの日。妻はアレに悩まされ、夫は衝撃的なものを発見してしまい.....?

7th day 〈Villamayor de Monjardin → Viana, 31.0km〉

昨夜は相変わらず何人かがいびきをかいていたが、それでもよく眠れた。風邪はずいぶんよくなったようだ。ふたりの男性が真っ暗なうちからごそごそと準備をして5時半に出発していき、続いてほかの旅人たちも起き出してきた。僕らも6時過ぎに起きてパッキングを済ませ、アルベルゲ*に準備されていた薄いコーヒーを飲み、乾いたパンを食べる。ちらほらと知った顔の旅人たちがいて、軽く挨拶を交わす。

*サンティアゴ巡礼者専用の宿

さあ、今日は約30kmを歩く予定だ。歩き始めてすぐにさえぎるもののない大地が広がり、そしてそこから12kmもの間、町や村はおろか、商店やちょっと休憩ができそうなカフェもバルも、なーんにもない。いや、一度だけ、道端に「BAR BOCATERIA」というバラックが建っていたが、まだ準備中だったようで、ひと休みすることはできなかった。

しょうがないから先へ進む。周囲にはワイン畑がずっと広がっていて、遠くに半分朽ちかけた納屋が見える。太陽は雲に隠れていて、あたりは薄暗い。

黙々と歩き続けたところで、ようやく一軒の家が現れた。続いてカフェにバル。Yeah! いつものカフェ・コン・レチェとボカディーロだけど、とても美味しく感じた。

そして再び、ワイン畑のなかを行く。昨日も書いたけれど、ほかの旅人たちの足がとても痛そうだ。マメに捻挫、ヒザの痛み......見ていられない。僕たちの問題は、僕の風邪と(でももうほとんど治りかかっている!)、妻のアレルギー症状だ。なにかの植物に反応しているのだろう、目と鼻がかゆくてしかたがないと言う。妻はこの麦畑を疑っているようだ。

幸いなことにサンソルという小さな村で薬局を見つけて、とりあえず目薬を買うことができた。

次に現れたトレス・デル・リオという村ではフルーツや野菜を買って、さらに先を急ぐ。道は軽いアップダウンが続き、そろそろくたびれてきた僕らは、道端のベンチに座り、先ほど買ったトマトとバナナとオレンジで休憩をとった。

とそこへ、疲れた様子のブラジル人女性が通りかかって(大きなブラジルの国旗を肩にかけていたのですぐにそれとわかった)、近くに腰かけた。彼女は今日、ログローニョの町までバックパックを送り、手ぶらで歩いているらしい。

それはいいが、ちょっと待て、ログローニョといえば、僕たちの目標の町より10km以上先だ。彼女はずいぶんくたびれているようだし、この時間にこんなところを歩いていて大丈夫なのだろうか。どうしてそんな強行軍を組んだのだろう。ブラジル人らしい..... とは言わないけれど、あまりに無計画に過ぎないか。

かわいそうな彼女を見送ったあと、ふとあたりを見渡すと、そこらじゅうにゴミが捨ててあるのに気が付いた。ふと僕たちが座っていたベンチのうしろも見てみると、フルーツの皮、紙くず、ビニール袋、それに、使用済みの女性用ナプキンまで!!! オエッ。どうして休憩場所のすぐ後ろにそんなものを捨てられるんだろう。とてもショックだ。

ああ、世の中、理解できないことだらけだ。

さあ、再び巡礼路に戻って、また歩く、歩く、歩く。しばらくすると今日の目的地ビアナの町が見えてきて、ゆっくりと実にゆっくりと近づいてきた。そしてようやく到着!

はじめに見つけたアルベルゲも悪くなさそうだったけど、僕たちは初の公営のアルベルゲに挑戦するつもりでいた。旧市街をしばらく探し回って見つけたそこはさすがに安く、1泊6€だった。

ベッドを確保し(古くて半分壊れているような代物だったけど、まあよしとしよう)、シャワーを浴びた。トイレはずいぶん汚れていたけど、まあ、(いまのところは)それほど悪くない。ほかの旅人たちもどんどん到着してきた。

30km以上歩いたのに加えて、まともな昼食をとっていないせいもあって僕たちはとてもお腹が空いていた。が、まずは少し町を見てまわって、目についたカフェでレモネードを飲んで休憩した。小さな町だが、目に入る人々のほとんどが旅人たちに見えた。もしいままで見てきたような村や町が巡礼路沿いになかったら、地元の人々はまったく違った暮らしになっていただろうな、と感じる。

いつものように昼寝をして、夜7時になって起きて、さあ、ようやく食事の時間だ! 僕たちは小さなホテルのレストランに入って、12.5€のピルグリムメニュー*を頼んだ。前菜に僕はタコを、妻はサラダを注文。メインはそれぞれ豚と魚のグリル。デザートはチーズケーキとプリン。ああ、美味しい! 少なくとも昨日のディナーよりは100倍マシだった。

*巡礼者用のセットメニュー

さあ、もう休もう。まだまだ先は長い。

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※この手記は、妻で編集者の溝口シュテルツ真帆が翻訳したものです。妻の手記はnoteで公開しています。