パリ南部の13区に今年2月、新しい学生寮「カンピュゼア・モンスリ(Campuséa Montsouris)」が完成しました。パリには学生寮がいろいろありますが、こちらの寮の特徴は、1970年代に建てられたオフィスを集合住宅に改造したこと、フランス文化庁が推進する《1 immeuble, 1 oeuvre »(1住宅、1作品)に準じたフランス初の住宅であることです。
右側の建物が「カンピュゼラ・モンスリ」。パリ南部にある住宅地に立地しています。
施工主は、パリとパリ近郊の集合住宅やオフィス、寮、病院などを運営・管理するGecina社。
16カ月かけて、オフィスから寮に改装したそうです。総戸数は90で、ワンルームから3LDKまでの広さ。全戸がニューヨーク大学パリ校に貸し出されます。
中庭から見たところ。 ©DR
寮の部屋。ソファベッドとテーブルがあり、ベランダがある部屋もあります。©DR
《1 immeuble, 1 oeuvre » は、現代アートの普及のためにフランス文化庁が発表したプログラムで、2015年12月、文化庁と不動産プロモーター13社との間で誓約書を締結。
集合住居の建築または改装の際、アーティストに作品を発注、あるいは作品を購入することが推進されることになりました。毎年グランプリなどを選び、発表される予定だそうです。
「カンピュゼア・モンスリ」の入り口に飾られたのは、フランスの造形芸術家ファビアン・ヴェルサール(Fabien Verschaere)さんのフレスコ画。『A Novel for Life(人生のための小説)』と名づけられたストリートアート風な作品です。
ヴェルサールさんいわく「最初に描いたのは目を持った木々。そこからさまざまな形のマグマと、飽和状態で細かいものがひしめく空間が生まれた」のだそう。真っ赤な背景と、そこに浮かび上がる黒と白の物体は、ユーモラスでもあります。
ファビアン・ヴェルサールさんのフレスコ画 ©Thierry Lewenberg Sturm
完成式にはヴェルサールさんのほか、Gecina社のベルナール・ミシェル社長、パリ13区のジェローム・クメ区長らも訪れました。©Thierry Lewenberg Sturm
制作中のヴェルサールさん ©Dereumaux, ©Mustapha Boutadjine
住宅不足を抱えるパリでは、2014年からパリ市が推進し、使われなくなったオフィスをアパルトマンに改造する例が増えています。現代アートと結びつけた集合住宅が増えていくのも興味深い試みで、どんなアーティストが参加するのかも楽しみのひとつになりそうです。
【ライター】三富千秋
パリ在住のフリーライター。パンや菓子、料理など食の話題を中心に雑誌や食専門誌に発信しているほか、フランス人のライフスタイルについてのコラムも執筆。フランス人の日常生活をさらに知るべく、フランス各地で取材中。
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