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3年目を迎える川内村の特別養護老人ホーム

2017年11月30日 16時56分 JST | 更新 2017年11月30日 16時56分 JST

2011年3月の福島第一原子力発電所事故により全村避難を余儀なくされた川内村は、2012年1月「戻れる人から戻ろう」という遠藤村長の呼びかけのもと、避難を行った自治体の中で最も早く帰村宣言をしました。村民が川内村で生活できるためには医療・福祉の充実が必須です。当院から川内村の診療所への医師派遣はしていたものの、介護や福祉がネックとなり戻りたくても戻れない高齢者やその家族の方は多くおられました。

遠藤村長から村に介護施設を作りたいと相談されたのは平成25年2月ごろのこと。人材確保など多くの問題はありましたが、帰村する村民が増え、村で安心して生活できることに役に立つのであればと当グループでは理事長の即断で介護施設を開設する準備を始めました。(参考:2015年7月23日MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp/mt/?p=6002

多くの皆様のご支援のおかげで2015年11月、東京ドームの2倍ほどある敷地に特別養護老人ホームかわうち(80床)を開所することができました。施設は平屋で畳1,650枚ほどの広さです。45名のスタッフは当初、施設の広さに慣れるのが大変でした。

入所希望者は多く、開所してすぐに満床になりました。2017年11月までの入所者は115名で、そのうち川内村村民は49名入所されました。その中の19名は今回の特養開所が帰村のキッカケになりました。福島県内の仮設住宅・介護施設、東京の避難先からの入所です。特養かわうちの入所を待ちきれず、当法人の別の介護施設に入所して特養かわうちの開所を待つ方もおられました。

ある家族は、避難先の介護施設に親が入所していたため、「村に特養ができたらみんなで村に戻ろうと決めていた。」特養が開所し入所した時には、「みんなで村に戻ることができてとてもうれしい」といっていました。特養で働くスタッフの中にも村民は16名います。スタッフの中にもこの特養の開所が帰村のキッカケとなったのは5名います。ある20歳のスタッフは、すでに祖母が帰村しており、自分も早く川内村に戻り祖母と一緒に生活したいという希望を持っていました。

川内村以外の双葉郡からは双葉町や富岡町など、10名程が入所されています。同じく福島原発事故により、県内・県外に避難し、避難先の病院や介護施設におられた方です。当初は双葉郡からの入所希望が多いと想定していましたが、蓋を開けると実際にはそれほど多くはありませんでした。しかし、その10名の入所者と家族は、住み慣れた自宅に戻りたいと常に思っておられ、自宅に少しでも近い川内村の特養に入所希望されていました。「住んでいた町村にはまだ戻れないが双葉郡には戻れる喜びを感じる。」とおっしゃいます。家族も避難前の自宅に一時立ち入りする際に特養かわうちに寄ることもでき、避難生活が続く中で利便性があったことも特養かわうちに入所された理由の一つです。

他の市町村からは、いわき市・田村市からの入所者が30名程おられます。近くの施設にはすぐに入所できず、自宅で家族での介護は難しい方が入所しているケース、田村市の一部など、周辺に介護施設がなく、特養かわうちが一番目近いために入所された方など様々です。また、首都圏から入所された方も2名おられます。ずっと東京で生活していたが、出身がいわき市で福島県に戻りたいこと・東京ではすぐに入所できないこと・入所費用が東京より安くすむことなどがその理由です。

3年目を迎えた特養の今後の課題としては、今年の職員の離職率が33%と高いことです。誠励会グループ全体での離職率は10.7%、全国での介護事業所では16.5%(介護労働実態調査)です。全産業の平均離職率は15%なので、特養かわうちの離職率が高いことがわかります。原因としては、復興・川内村のシンボルとして開所した特養に、人員基準をクリアするためにいろんな方に声をかけて介護の業務をしていただいている経緯があります。

介護の経験が少なく入職された方が毎日忙しい業務に追われ、介護の経験があるスタッフとの技術の差に自分は介護に向いていないと思い退職された方もいます。また、キャリアプランが明確になっていなかったことも原因の一つです。今後は、全スタッフが将来的にどのようになりたいのか、特養かわうちで働くことの意味を見いだし、長期的に将来を見据えることができる職場作りが必要と考えています。

開所して1,2年目は職員一人ひとりの話を聞く時間も十分になく、毎日を事故なく特養で入所者の皆さんが生活していただけることだけを思って奔走するうちに終わってしまいました。今後はスタッフが特養かわうちで働き、楽しく生活することも考えながら双葉町郡に数少ない特養としての役割を果たしていきたいと思っています。今後とも皆様のご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(2017年11月29日「MRIC by 医療ガバナンス」より転載)