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東日本大震災から5年、見過ごされてきた「除染作業員の健康問題」解決に取り組む若者

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東日本大震災から5年4ヶ月が経過した。福島県浜通りの住民は復興への努力を続けている。しかしながら、課題は山積だ。その一つが除染である。

政府は除染に力を入れているが、順調とは言いがたい。南相馬市の生活圏の除染が終了したのは、今年3月だ。原発5キロ圏内の除染の目途はたっていない。

浜通りを復興させるためには、一日もはやい除染が必要だ。では、そのために、医療関係者は何が出来るだろうか。

それは、除染作業員の健康管理だ。今年6月、南相馬市立総合病院の澤野豊明医師(26才、外科)が、"Journal of Occupational Health"に興味深い症例報告を発表した。

2014年4月、55才の男性が救急外来に心肺停止で運び込まれた。懸命に救命措置を行ったが、亡くなった。死因はクレブシエラ・ニューモニエ菌による肺炎、敗血症であった。

クレブシエラ・ニューモニエ菌の感染症は免疫能が低下した人に多い。なぜ、55才の男性が、罹ってしまうのだろう。澤野医師が驚いたのは、この患者のHbA1Cが13.8%もあったことだ。生活習慣病が全くケアされていなかったことになる。

澤野医師は、この経験をきっかけに、除染作業員の健康問題に関心を持った。

除染作業員は一般的に社会階層の低い人が多い。また、複数の下請けを介して、業務が発注されるため、健康状態を含め、除染作業員の実態について、正確な情報はない。

この状況はチェルノブイリ原発事故でも変わらない。低線量被曝やメンタルヘルスに関する報告はあるものの、健康状態についての論文はない。

福島の除染作業には、長期間にわたり、大量の作業員が投入される。昨年は、4万377人が、福島県内で除染作業に従事した。南相馬市の除染関係者によれば「南相馬市内だけでも7500人以上が従事した」という。

除染の作業効率をあげるには、作業員の健康状態の管理が欠かせない。ところが、誰も、この問題に真剣に取り組もうとしてこなかった。

澤野医師は「彼らの健康問題に対して企業や行政に健康啓発を呼び掛けても、放射線対策を除けば無関心でした。」という。

そこで、澤野医師は自ら行動した。南相馬市立総合病院の先輩医師を通じ、除染を行う企業と接点をもった。そして、今年2月から、除染作業員を対象に、継続的に健康相談会を開催している。次は7月26日だ。

澤野医師は、「実際に除染作業員と話をして、改めて事態の深刻さを実感した」と言う。これまで、59人の相談を受けたが、このうち35人(63%)が生活習慣病を抱えていた。彼らの年齢中央値は49才。2010年国民健康・栄養調査によれば、この年代の高血圧の罹患率は34%、糖尿病は8%だ。比較にならない。

問題なのは、健康意識が希薄なことだ。喫煙率は九割を超える。

澤野医師は、除染作業員と接する度に、食生活の改善、運動の励行、そして病院の受診を勧めている。幸い、雇用者も、健康管理の重要性を認識し、このような活動を継続したいと希望している。

医者は実践を通じて成長する。澤野医師は、その典型だ。外科医として修練を積む一方、除染作業員の健康管理を通じ、社会の現実と接し、社会人として成長しつつある。現場は若者を成長させる。彼の将来が楽しみだ。


* 本稿は『医療タイムス』の連載に加筆修正したものです。

(写真)5月26日に、南相馬市内の除染作業員の宿舎で開催された健康相談会の光景。白衣を着ているのが澤野医師。

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