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「東大の学生と全く違う」グローバルに活躍する若者の姿勢

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医学教育は、急速にグローバル化しつつある。その変化は、我々の想像を超えている。この変化を象徴する女性がいる。吉田いづみさん(22)だ。千葉県の幕張総合高校から、ハンガリーのセンメルヴェイス大学に進学した。

今年、大量を崩し、休学した。治療が功を奏し、体調は快復した。9月から復学まで、私どもの研究所でインターンをしている。
彼女がハンガリーの医学部を選んだ理由が面白い。「将来、世界を舞台に活躍したい。そのためには海外で経験を積むべきだ。」と考えたそうだ。

センメルヴェイス大学には、世界各地から学生がくる。同級生には、アメリカは勿論、イスラエル、ノルウェイ、カナダ、インド出身者がいる。センメルヴェイス大学は「英語が出来れば、日本の医学部より入学するのは容易(吉田さん)」らしい。学費は年間170万円程度だ。日本の医師国家試験に合格すれば、日本で診療することも可能だ。医師になることを目指すなら、合理的な選択だ。

彼女がセンメルヴェイス大学を知ったのは、「ハンガリー医科大学事務局(HMU)」という団体を介してだ。新宿に事務所があり、受験指導、VISA取得から、住居探し、日本の医師国家試験受験までサポートしてくれる。

このシステムは06年に始まり、既に49名が卒業した。26人が、日本の医師国家試験に合格している。現在、ハンガリーで医学を学ぶ日本人は200人を超える。スロバキア、チェコ、ブルガリアなどへの医学部進学を斡旋している組織もある。

読者の多くは、海外の医学部進学と言えば、アメリカしか思い浮かばないだろう。吉田さんと会うまで、私もそうだった。世界は多様化している。
異文化で揉まれると、若者は成長する。進級はとても厳しいそうだ。ストレートで卒業するのは三分の一、留年が三分の一、残りは退学する。吉田さんは「帰国子女でない私にとって、英語で授業を受けるのは、とてもストレスでした」という。

私どもの研究室には、多くの若者がやってくる。その中で彼女の存在は際立っている。どんなことを頼んでも、「是非、やらせてください」という。先日、一般人向けの脳卒中の解説を頼んだら、すぐに医学書を購入し、翌々日には初稿を送ってきた。南相馬市立総合病院の若手医師の研究を手伝うこともある。膨大なデータを、即座に整理してくれる。

今春、東大理Ⅲに合格した武田悠人君は、「東大の学生とは全く違う」と言う。東大の学生は多少頭がいいかもしれないが、自ら動かなければ経験を積めない。CPUはいいが、アプリケーションが入っていないパソコンみたいになってしまう。やがて、型落ちとなって破棄される。

これから、武田君たちが競争するのは、世界中にいる吉田さんのような若者たちだ。彼らはハングリーだ。覚悟を決めて、一人で世界に飛び出している。エリート意識をもって、ぬるま湯に浸かっていたら、世界から相手にされなくなるだけだ。実は、このことは、私たちの世代にも言える。生き残りたければ、努力し、変わり続けなければならない。

*本稿は「医療タイムス」の連載に加筆修正したものです。

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(写真)研究室で仕事をする吉田いづみさん