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不正続きの大学病院、再生のカギとなるのは「評価基準」だ

2014年07月15日 15時57分 JST | 更新 2014年09月13日 18時12分 JST
時事通信社

 大学病院を舞台とした研究不正が止まらない。京都府立医大、慈恵医大、滋賀医大、千葉大のバルサルタン研究、京都大学のCASE―J、さらに東大病院のSIGN試験。一連の不祥事により、その信頼は地に落ちた。どうすれば大学病院は再生できるのだろうか。

 東大病院は倫理教育を重視するという。厚労省は臨床研究を規制するための法律を作るそうだ。米国の研究公正局(ORI)などの研究不正監視機関を念頭に置いているのだろう。

 ただ、私は、このような「組織図を変える」ことには、あまり期待できないと思う。ORIがある米国でも研究不正は後を絶たないからだ。マスコミを賑やかせたSTAP細胞研究不正の端緒はハーバード大学だし、最近、心臓幹細胞研究の不正も発覚したばかりだ。

 では、どうすればいいのだろう。そもそも「組織を変える」とはどういうことだろう。

 横山禎徳氏という人がいる。元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長を務めたマネージメントの専門家だ。近年は社会システムデザインを研究している。

 横山氏の主張が面白い。彼は「組織を変えるとは、人の行動を変えること。即ち価値観を変えることだ」という。そして、そのために必要なのは、「評価基準」を変えることだという。確かに、その通りだと思う。

 では、具体的にはどうすればいいのだろうか。大学病院再生の参考になるだろうか。

  私は、臨床研究不正が発覚したのは、大きな医局ばかりであることに注目する。

このような医局では何を重視してきたのだろうか。言うまでもなく、「論文」だ。教授選考は論文のインパクトファクターでほぼ決まったと言っても過言ではない。確かに、このようなやり方には批判も多く、近年は臨床能力や学生指導も加味されるようになっているが、主流とは言えない。

 おそらく、この価値観は、そんなに簡単には変わらないだろう。世界中どこでも、研究者は論文で評価されるからだ。日本の医学部だけが、独自の基準を導入しても、取り残されるだけだ。

 最近、東大血液内科の大学院時代に指導を受けた小川誠司・京都大学教授から示唆に富む指摘を頂いた。小川教授は「教授に必要なのは特段に優れた臨床能力でも研究能力でもない。若い人材にチャンスを与えて、その能力を育み、もって我が国の将来を展望する「特別な能力」だ」と言う。目から鱗が落ちた。

 大きな医局には若者が集う。彼らを育てれば、臨床だろうが研究だろうが、自然と業績は増える。問題は教授が若手を「育てる」ことが出来るかだ。何もせずとも、医局員が集まるため、「使い捨て」にする教授も珍しくない。

 若者を育てるには様々な経験を積ませなければならない。そのためには、教授のスキルとネットワークが重要だ。教授にとって楽なのは、自分のところに置いておいて、自らの仕事を手伝わせることだ。

 こういう所は閉鎖的になりがちだ。若い頃に優秀だった人も、自ら意見を言わず、「長いものには巻かれる」ことを覚えていく。そして、いつの間にか正常な判断力を失い、使えない管理職が誕生する。かつての国鉄がその典型だったそうだ。一連の事件を起こした大学医局の雰囲気も、こんなところではなかろうか。

 組織改革の要諦は人事だ。医局の場合は教授だ。一連の不祥事から大学医学部が再生するには、どういう基準で教授を選ぶのか、今こそ真摯な議論が必要だ。

* 「医療タイムス」の連載に加筆修正したものです。