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中国版ADIZ(防空識別圏)にどう対処すべきか

2013年11月29日 00時10分 JST | 更新 2014年01月28日 19時12分 JST

11月23日、中国の国防省(国防部)がADIZ(防空識別圏)を設定したと発表した。中国版ADIZは沖縄県の尖閣諸島の上空を含む、東シナ海の広い範囲にわたる。圏内を飛行する航空機に対して、中国の外務省や航空当局に飛行計画を通報することや、国防省の指示(指令)に従うことを一方的に義務付けている。指示に従わない場合は、武力による緊急措置(武装力による防御性緊急処置)をとるとも公表(公告)した。

国連憲章で禁じられた「武力による威嚇又は武力の行使」につながる危険な暴挙に他ならない。日本に、尖閣諸島を巡る「領土問題」の存在を認めさせる圧力であり、自衛隊機を念頭に、中国軍がスクランブル発進などで対応する方針であろう。今後、東シナ海で一触即発の場面が懸念される。

同日、中国は情報収集機TU154と電子情報収集機Y8を、中国版ADIZに沿うルートで飛行させ、尖閣諸島領空の北方40kmまで接近させた。数分以内で領空侵犯に至る近い距離である。実は1週間前の11月16日と翌17日にも、TU154がほぼ同様の航路を飛行していた。計画的な軍事行動と言えよう。以上の背景には、直前の12日に閉幕した「3中全会」の承認ないし党中央軍事委員会の「指導」があるのではないだろうか。

以上の動きは、いわゆるA2/AD(アクセス阻止/エリア拒否)戦略の一環と評価できる。中国版ADIZは、作戦領域における敵軍の行動を制限するエリア拒否の具現化とも評し得よう。

中国は従来、いわゆる第1列島線から第2列島線に向け、勢力圏を太平洋上に拡大させてきた。それが今回、海面から上空に向けて垂直的に勢力範囲を拡大させた。今後、中国は言わば、立体的に勢力圏の拡大を図っていくであろう。

このA2/AD能力を有する敵対者を打破する構想が、2010年の米QDR(四年毎の国防計画見直し)で示された「統合エアシーバトル」である。先日、米軍は中国版ADIZ内で、事前通告なく2機の戦略爆撃機B52を飛行させた。無人偵察機グローバル・ホークの展開も強化している。ADIZという名のエリア拒否を認めないオバマ政権の意思表示でもあろう(さらに言えば、日本へ自制を求めるメッセージとも見える)。

そもそもADIZは、領域を定める性質の空域ではない。中国はいざ知らず、日本は「我が国周辺を飛行する航空機の識別を容易にし、もって領空侵犯に対する措置を有効に実施するため、防空識別圏を定めている」(政府答弁書)。ゆえに例えば「尖閣上空は日本の領空である。そこに中国が識別圏を設定する権利はいささかもない」といった「主張」は不正確である(11月24日付産経朝刊)。日本政府高官による同趣旨の反発も例外でない。

問題は、中国版ADIZが日本の防空識別圏や領空と重なっていることではなく、執行管轄権ないし領域主権が及ぶかのごとく設定されたことにある。国際法上、公海は上空の飛行を含め、自由であり「いかなる国も、公海のいずれかの部分をその主権の下に置くことを有効に主張することができない」(国連海洋法条約89条)。

中国政府が主張するとおり、中国にも防空識別圏を設定する権利はある。だが、中国を含め、どの国にも国際法を一方的に書き換える権限はない。

もとより日本政府が中国版ADIZに従う必要など、法的にも政治的にも存在しない。今後とも粛々と尖閣上空での対領空侵犯措置を続けていけばよい。東シナ海での演習をためらう必要もない。毅然とした姿勢を目に見える形で示すことが重要である。

その際、中国軍が「緊急措置」と称して対抗してくれば、どうなるのか。日本政府はどう対処すべきか。判断を間違えれば、取り返しのつかない事態となりかねない。12月4日に発足する日本版NSC(国家安全保障会議)の真価が、そこで問われる。

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