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格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか - ライフネット生命創業者 出口治明氏インタビュー

格差ってそもそも悪い話じゃないよね。 という話をもう少し突っ込んで聞きたいです。

2017年09月09日 16時10分 JST | 更新 2017年09月09日 16時10分 JST

01 教養とは自分が得をするということ
02 出来レースの選挙がまかり通る理由
03 だから政治は嫌われる
04 皆が一致していないのは当たり前の社会
05 少数者しか世界を変えない
06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか

07 がまんできない大人たち
08 手紙を書いても人間関係は続かない


小野瑞希

06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか

田中 これまでの話を踏まえて、格差ってそもそも悪い話じゃないよね。 という話をもう少し突っ込んで聞きたいです。


出口 格差って現実の世界ではどこにでもあるじゃないですか。


田中 分断と同じで格差に対してもみんな悪いイメージがありますよね。


出口 僕は、昔陸上をやっていましたが、 100メートル競争では格差は絶対生まれる。
努力しても記録はそれほど伸びません。生まれつきの要素の方が大きい。

人間の持っている能力はみんな違うわけですが、それはよくできていて、
例えば足が速くても、勉強ができるとは限らない。

みんなそれぞれとがっていて、個性があるだけなのです。


田中 格差って個性が輝いていると言い換えられますね。


出口 その通り、そうなんですよ。顔が違うのと一緒です。 格差がある社会は当たり前。
ただ問題は、社会的地位の中での格差です。あるいは収入の格差と言ってもいいです。 普通の格差は、むしろがんばろうという励みになります。


田中 いいライバルがいることはいいことですよね。


出口 加えてはしごがかかっていればインセンティブになるんです。


田中 はしごがかかっていれば?


出口 アッパー(上)とローワー(下)の間に、はしごがかかっていれば、 下の人は登れば上の人に届くと思うから頑張れるのです。


田中 希望は何よりも力になりますからね。

出口 そう。これがアメリカンドリームの原点です。 しかし、はしごがなくなれば絶望的になる。やけになります。


田中 その結果、テロなどが起きるわけですね。


出口 その通り。格差が悪いのではなく、 格差の間にはしごがかかっていて流動的であれば人は頑張れるのです。


田中 風通しの良い会社が成果を出すという話にもつながってくるわけですね。 流動性。


出口 その通り。格差を上手に使えば発展のエネルギーになるのです。


田中 いやー、いい言葉ですね。


出口 「こんなに格差があってひどい」という本を書いている人は、 だいたいが変な人かもしれません(笑)


田中 (笑)


出口 大事なことは、流動性があって ハシゴがかかっている社会の仕組みを上手につくれるかどうか。


なんで僕が陸上をやっていたかというと、 小学校ではリレーで抜けば女生徒にモテるから。(笑)
これは、格差がエネルギーになっているんです。だから一所懸命練習した。 健全なエネルギーですね。


田中 ただそこが不健全なエネルギーになると、人への憎悪につながる。


出口 そうです。分断はどこの社会にもある。 分断のない社会は歴史上どこにもありません。
けれど、うまくいった社会や長く続いた王朝には、はしごがかかっていました。

一つ具体例を出すと、「義務教育は無償」という原則がある。
無償というのは教育費だけではなく、給食費も含んでいるはずです。
みんなで食べることも教育の一環だから。


ところが、例えばシングルマザーの子どもで給食費が払えないケースがあるわけです。

その子どもは、給食の時間になると、 ご飯を食べないで1人で校庭で遊んでいるわけですよ。
そんな生活をしていて健全に育つわけがない。


義務教育が無償というなら、給食費も修学旅行費も全部含めて 無償にしなければ社会の分断になる。
これははしごを拒否していますね。


田中 はしごにしているつもりが、 はしごにならず分断になっていますね。


出口 そこを重点的に考えないといけないんです。 全体を整合的に考える能力が大事で、一部分しか見ていないことは危険です。


田中 これまで話してきて、 テーマとしてはバラバラですけど全てがつながった感覚に陥っています(笑)


出口 でしょう(笑)つながらない考え方は、 思いつきにそれぞれついていっているだけで、意味がないんですよ。

全体としての整合性が大切だと教えてもらったのは、 英国大使館に勤めていた英国人です。


昔の話ですがその人に、日本のコマーシャルはクレイジーだと言われた。
最初は何がクレイジーなのか、わけがわからなかった。


そのCMは日本財団を創設した笹川良一さんがつくったもので、 「戸締まり用心火の用心」いうCMと、
「人類一家皆兄弟」というCMだったのです。


僕はそのコマーシャルを両方みたことがあって、何も感じなかった。
けれど僕の友人は、このコマーシャルはクレイジーだというんです。


田中 なんでですか。


出口 彼はこう説明してくれました。 「世界は一家人類皆兄弟」であれば、戸締まりなんていらない、と。


田中 確かに(笑)


出口 どちらかが本音でどちらかが建前であるCMで、 その矛盾に気づかない日本人はクレイジーだと。
このCMを平気で流しているテレビ局もおかしいと。
その時、初めて僕も気がつきました。 僕は何も考えないで見ていたから気づかなかったんだ、と。



07 がまんできない大人たちにつづきます。

(田中將介インタビューサイトより転載)

(写真:小野瑞希)