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手紙を書いても人間関係は続かない「即効性なんてないんです」 - ライフネット生命創業者 出口治明氏インタビュー【最終回】

コツコツやることが大切

2017年09月26日 10時36分 JST | 更新 2017年09月26日 10時36分 JST
小野瑞希

01 教養とは自分が得をするということ

02 出来レースの選挙がまかり通る理由

03 だから政治は嫌われる

04 皆が一致していないのは当たり前の社会

05 少数者しか世界を変えない

06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか

07 がまんできない大人たち

08 手紙を書いても人間関係は続かない


小野瑞希

08 手紙を書いても人間関係は続かない

田中 最後の質問なんですが、ご著書である「直球勝負」を読みました。

出口さんは60歳からライフネットを創業され、これまでいろんな人と信頼関係を築かれてきたと思います。

出口さんがどのように信頼を積み重ねてきたのかを教えてください。

出口 そんなの運だと思いませんか?(笑)

田中 運ですか(笑)話が終わってしまいましたね(笑)

例えば、手紙を書くとかあるわけじゃないですか。

出口 しょうもないことをいえば、会ったあとに墨筆で手紙が来たら、 「おっ」と思うじゃないですか。

けれど、そんな一瞬の出来事で、 その人とまた会おうかと思うのは別の話。

この間、初めて会った人がいたのですが、話しがはずまなかった。

その人から達筆で「とても勉強になりました。これからもよろしく付き合って下さい」と手紙がきたんです。

でも、正直なところまた会いたいとは思いませんでした。

合コンと一緒です。(笑)

手が汚れた時に相手がハンカチを出してくれたら、 一瞬「気が利くな」と思うかもしれません。

でも、2時間、3時間と話してみて、タイプじゃなければ、意味がない(笑)

テクニックはいろいろあると思いますが、本人に魅力がなければまた会おうとかは思わないし、人間関係は続きません。

何もしなくても、本人がやろうとしていること、実現したいと思っている夢に共感する人がいれば人間関係はできます。

田中 つい即効性のあるものを探したがりますよね。 そういうビジネス本も増えています。

出口 そんなのあるはずがないと思います。 結局はリテラシーの低さです。

野球も上手くなる即効性なんてないですよね?世の中も同じです。

こういうことをやったらあっというまに人間関係が良くなることなんてあるはずがない。

けれどそういうアホな本が売れるのです。

田中 アホな本が売れることはしょうがないんですかね・・・。

出口 英語のコーナーに行くと、 こうやったら英語が上手くなるって本ばかりありますよね。

英語はどうやったらうまくなるか。

例えば、NHKのラジオ講座を毎日聞いてコツコツ勉強するしかないですよね。

本屋に行って、「毎日コツコツ勉強しなければ英語は上手くならないよ」

などという本を買いたいですか?(笑)

そんなことわかっているでしょう?(笑)

それが人間のクセなので、とんでも本しか売れないのです。


田中 仕方ないのですね。

出口 けれど、コツコツやることが大切だと分かっていれば、 トンデモ本なんて誰も買わない。

田中 売れるから出版社は本を出しますよね。

出口 でもそれは長続きしません。 ベストセラーで10年後に残っている本はほとんどありません。

田中 それでいうと、英治出版が思いつきました。

「絶版しない」、つまり長く残り続ける本をつくるという理念が本当に好きです。

出口 僕も社長の原田さんをよく知っていますが、本当に立派な人ですね。

田中 そういった出版社が大多数になるには、応援するしかないですね。

出口 そうですね、行動するしか世界は変わらないのです。

田中 物事がシンプルにつながりました。発信がんばります(笑)ありがとうございました。

ロングインタビューを終えて

出口さんの優しく、シンプルに紡がれた言葉たちが、私の社会に対する疑問をいつのまにか消してくれたからでしょうか。

インタビューを終えて、ライフネット生命の会社を出ると、広がる青空も相まって非常にいい気持ちがしました。

言葉が背中をそっと押してくれたような。

こんなつたない例えでいささか伝わるか不安ですが、この文章を読んでくださった皆さんなら、なんとなくわかってくれるのではないかと、出口さんの言葉に頼り切っている私です。

「物事をいかにかっこよく見せようとしているか」

自分の言動がそうだったのではないだろうかとふと思いました。

困難な課題について、様々な手段で、そしてあらゆる角度から物事を考えることも大切です。

しかし、時に思い切ってシンプルに考えること、それは、やはり積み上げてきた知識と考えてきた経験が導く。

シンプルなそのたった一言が、相手を「なるほど」とうならせる。

相手を傷つけるためでもなく、説得するためでもなく、相手を心地よく理解できるようなボールを的確に投げ込まれた私は、その心地よさに時間が過ぎても質問を重ねてしまいました。

正直、何時間でも、そのボールをキャッチしていたい、そんな時間でした。

教養というものが、この現代の社会の息苦しさ、いわゆる私の中の閉塞感を打破するカギになるのではないか、その仮説は確信になった。

などと言えるにはまだ早いような気がします。

けれど、複雑に思える教養を学ぶことによって、より物事をシンプルに理解し、シンプルに伝えることができる、これこそ、学び続ける意味であると、教えてもらいました。

この「知識」を昇華させるには、実践することに他なりません。

出口さんの願いの一端を担えているか不安ですが、少しでもこのインタビューが誰かの背中を押せたなら嬉しいです。

小野瑞希

(田中將介インタビューサイトより転載)

(写真:小野瑞希)