皆が一致していないのは当たり前の社会 - ライフネット生命創業者 出口治明氏インタビュー

「分断されている人が集まって社会が成り立っている」

04 皆が一致していないのは当たり前の社会

05 少数者しか世界を変えない

06 格差は悪くない。大事なのははしごがかかっているかどうか

07 がまんできない大人たち

08 手紙を書いても人間関係は続かない

04 皆が一致していないのは当たり前の社会

田中:分断の話が出たので、いつも私が疑問に思っていることを伺います。

沖縄に関するニュースでは、「沖縄」と「本土」という言い方をされていますよね。

沖縄の問題について聞きたいというわけではなく、

沖縄の問題は日本や世界の縮図のような気がしていて、

この分断は、沖縄と本土だけの話ではないと思っています。

つまり社会構造は共通しているところがあるのではないでしょうか。

出口:沖縄問題の本質はなんだと思いますか?

田中:僕は日米関係をこれからどうしていくかの議論が

されていないことかなと思っていますが。

出口:めちゃ簡単に言えば、安全保障って大事ですよね。

夜はどうして安心して眠れるのですか?

おまわりさんもいるし法律もあるからですよね。

ドアを破ってどろぼうが来ないと思っているから安心して眠れるんですよね。

田中:安心って大事ですよね。

出口:日本はアメリカと同盟を結ぶことによって

日本の国を守ってもらっています。そのために基地を提供しているんですよね。

そうであれば基地はどこにあるべきでしょうか。

日本全体、均等にあるべきですよね。

あるいは、人口比で考えて、首都圏にもっとあってもいいかもしれない。

アメリカに守ってもらっているんだったら、

みんなが平等に基地を分担するべきじゃないですか? それだけの話です。

歴史的経緯でそれが沖縄に集中しているんだから、

沖縄の人の立場になって考えたら変だと思うでしょう。

田中:そうですよね、

それが社会で言われている「差別意識」ですよね。シンプルです。

出口:日本人全員が利益を得ているのなら

みんなでコストを分担すべきです。

この当たり前の話を、議論しないから沖縄の人が怒るんじゃないですか。

田中:今は米軍基地の7割が沖縄にありますもんね。

出口:どう考えたっておかしいですよね。

すぐには少なくはならないとしても、

沖縄から本土にちょっとずつ移してよというのは当たり前だと思いませんか?

それを政治がきちんと受け止めて、実行するかしないかの話です。

田中:今も沖縄で抗議行動をし続けている人たちがいます。

私も沖縄県知事選挙に行ってから、わけもなく沖縄に通い続けているんですが、

「デモをする人」では言葉の主語が大きくて、辺野古を守りたい人、

基地に反対する人、安倍政権を批判する人、もちろん全てを抱えている人もいます。

一方では行き過ぎた行動をとっていると批判される人もいます。

それと同じではない点もあると思っているのですが、

2017年の都議会選挙で、安倍総理の「こんな人たち」発言が拡散された秋葉原の演説がありました。

公的な人間として、拡散されることも予想しての演説ができていないところに隙を感じましたが、

それよりも明らかに周りの聴衆たちに迷惑をかける横暴な行動をしている人たちを見て、

なんだかなあと思ってしまいました。

その様子を見ずして、自分たちの都合の良い情報を垂れ流す影響力のある人たちにも

違和感を感じたものですが、ちょっとこれは長くなるので、割愛します。

出口:総理大臣って誰のための総理大臣ですか?

田中:日本のためですね。

出口:そうですよね。日本にはいろんな意見があって、

首相に賛成する人も反対する人も同じ日本の市民。

普通に考えれば、「私は総理大臣として民主的な手続きで選ばれたので、

賛成する人の意見も反対する人の意見もよく聞いて、

みんなのために良い政治を行うためにがんばります」というしかないわけです。

カッとされたんだろうけれど、リーダーはそれではいけないんです。

すぐカッと頭に血がのぼる人は、人の上に立ってはいけません。

それって中学高校の運動部と一緒ですよね。(笑)

キャプテンなのに、カッとして、勝手にメンバーチェンジしたり、

相手蹴飛ばしたりしたらだめですね(笑)

田中:本当にそうですね。

そんな人がチームのキャプテンなら嫌ですもん(笑)

安倍さんのリーダーの資質の話はまた別の機会のお楽しみということで、

デモ行為をどう見ていますか?

私は役割分担ではありますが、

他にもっと良い手段を探すべきではないかなと思うのですが。

出口:世の中、どこにでも変な人はいますからね(笑)

2-6-2の法則ですね。

いつも一所懸命な人が2割、まあまあの人が6割、横向いている人が2割、

これは全世界共通ですからね。

ただ、リーダーはその変な人のレベルに落ちてはいけないわけです。

同じレベルに立って、ヤジをとばすのはリーダーの役割ではありません。

田中:変な人がいるっていうことを社会の原則として認識しているだけで、

少し寛容な気持ちになれそうな気もします。

出口:まあ認識というより、ファクトですね(笑)

中学高校で部活はやっていましたか?

田中:はい、野球一筋でした。

出口:部活でも横向いているやつがいたでしょう(笑)

熱心なやつもいればサボるやつもいるのは、中学、高校の部活と一緒です。

中学、高校でなにやってきたんやって話ですよね(笑)

リーダーの命令で、全員が「はい、頑張ります」という世界のほうがおかしい。

それはヒトラーやスターリンの世界になってしまう。

やりたい人が集まっている部活ですらそうなんだから、

人間の社会なんて2-6-2が当たり前ですよね(笑)

田中:今そう指摘されると当たり前な話ですね。(笑)

私も含めて、言われると分かるけれど、認識していないというか、言語化されていないというか。

出口:言語化されていないのはまさにリテラシーの問題です。

知識や経験は誰もがあるんです。

それを結びつけて、つなげて考える力が乏しいのが問題です。

部活と政治もつながっているんですよね。

田中:すいません(笑)

出口:言われればわかるでしょう?

それが発信の重要性とか教育の話なんですよ。

田中 教えていただいたこと、誰かに話したくなりますね。

出口:そうそう。何も難しい話ではないんです。

みんな必要な知識は持っているんです。

つまり、分断とかではなく、皆が一致していないのは当たり前の社会、

人間は全員違うんだから。むしろ一人一人分断されている。

分断されている人が集まって社会が成り立っている。

だからそこにルールを作ろうとか、いい政治をしてまとめようとか、

そういった発想が生じるわけです。

わくわくする社会を作ろうと思えば、

みんながイニシアチブをもって社会に参画するしか今のところ方法はありません。

05 少数者しか世界を変えないにつづきます。

(写真:小野瑞希)

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