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「足を運び、歩み寄ろう」 オバマ大統領訪問を通じて思うこと

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オバマ大統領が広島にやってきた。私の勤務する国連ユニタール(国連訓練調査研究所)広島事務所は広島市の中心地にあり、そこから原爆ドームと平和公園を一望することができる。そのオフィスの窓からオバマ大統領がいる平和公園を見つめつつ、テレビから流れるオバマ氏によるスピーチに耳を澄ませた。彼が伝えたメッセージの一つ 、「我々は同じ人間として、お互いのつながりというのを再認識しなければならない (We must reimagine our connection to one another as members of one human race)」が私の心に響いた。

オバマ氏の広島訪問の前に、広島に生まれ育ち、原爆と常に向き合ったきた友人達の意見を聞いた。私、主人、そして娘にとってかけがえのない大切な人々だ。彼らにとって原爆とは何なのか、またオバマ大統領訪問についてどう思うかを聞いた。そして幾つかの共通点を発見した。私が話をした全員が、原爆で犠牲になった子供を含む一般市民のことを悼んだ。そして、このような経験をこれからの子供達にあわせては決してならないと述べた。オバマ大統領も演説の中で紛争を未然に防ぐ重要性を伝えた。

オバマ氏の今回の広島訪問により、停滞している核軍縮不拡散交渉にすぐ道筋がつくとは考えにくい。北朝鮮問題、南シナ海問題、ウクライナ情勢など世界情勢は複雑化し、核交渉を難航化している。しかしながら、オバマ氏の広島訪問は間違いなく歴史的瞬間であった。オバマ氏にとっては、実際に広島に来て、自分の目と耳を通じて様々な物を感じ、今までよりも遥かに強く第2次世界大戦や原爆の恐ろしさを痛感したであろう。

同様にオバマ大統領を迎えた広島の人々も、アメリカ国内で存在する広島訪問を反対する声にかかわらず広島訪問の実現に導いたオバマ氏に対し敬意を表した。そして被爆者とオバマ氏が談話する姿を見て感動し、感謝をした。足を運び対話をした事で双方が歩み寄り、次の大きな一歩を踏み出したのである。

オバマ大統領の広島訪問を通して強く感じる事がある。それは、私達自身も色々なところへ足を運び、人々と話し、違う立場を知り、歩み寄る事が重要であるという点である。日本の外に飛び出すと実に様々なものが見えてくる。私自身、学業や仕事を通じて色々な土地を訪問し、様々な視点に触れる機会に恵まれてきた。

最初は、第一回目の 留学先だった米国ウェストバージニア。そのウェストバージニアでの留学時代に様々な事を人生で初めて経験するのだが、その一つが「真珠湾攻撃に関しての質問を受ける」であった。日本人として真珠湾攻撃という奇襲攻撃をどう思うかと聞かれ、何とも言えない重たい気持ちになった。うまく返答が出来ず、肩身が狭く感じた。

第2回目の留学先はニューヨーク。修士過程を取得するためにコロンビア大学に籍を置いた。そのニューヨーク留学中に一度友人と大げんかになった。その友人は韓国出身だった。何らかのきっかけで第2次世界大戦の話になり、そこから戦時中の韓国と日本の話となった。友人は私に戦時中に日本が韓国に行った事に関してどう思うかと聞いてきた。うまく答えられなかった。重い気持ちになった。その友人は、日本人は第2次世界大戦中の日本の行為に対しての認識が薄すぎると激怒した。

コロンビア大学を卒業した後、私は国際連合でのキャリアをスタートした。最初の赴任地はベトナムだった。そこでは、ベトナム戦争中に米軍が撒いた枯れ葉剤を含む有機汚染物質の除去の為の活動を支援した。ベトナム戦争は 一般市民の負傷者や死亡者を多く生み出し、自然界へも多大な影響を出した。戦争が終わっても、残された地雷や有機汚染物質は人々をそして自然を苦しめた。

私が現在勤務する国連ユニタール広島事務所は研修を通じて南スーダンを支援している。長年に渡る紛争を経て2011年に独立。しかし2013年に首都ジュバで衝突が発生し、そこから民族間への争いに火がつき内戦状態へと陥った。2015年にようやく最終平和合意が結ばれたものの、綱渡り感は否めない。首都ジュバで出会った多くの南スーダン人が家族や友人を失っている。

そして先週訪問したばかりのアフガニスタンの首都カブール。あらゆるところに咲き誇る薔薇の美しさとは対照的に、点在する厳戒な警備体制の生々しさが印象的だった。警護上、街中では防弾ガラスの車から降りることは許されなかったのだが、車窓から見た子供達の姿を微笑ましく思う一方、彼らの安全を思った。早く平和が訪れて欲しいと心から願った。

オバマ大統領がしたように、私達も様々な所へ足を運び、人々と話し、違う立場を知ることが重要である。オバマ氏は広島の演説で、「この土地で世界は永遠に変わった。しかし今、この街に住む子供達は平和な日々を過ごしている。なんと素晴らしいことだろう。この平和は守っていかなければならない。そして、すべての子供達にこの平和を差し伸べなければならない(The world was forever changed here, but today the children of this city will go through their day in peace. What a precious thing that is. It is worth protecting, and then extending to every child.)」と述べた。

訪問し、対話する。そうする事であらゆる立ち位置を知り、そして歩み寄る。歴史から学ぶ。それこそが平和への第一歩なのだ。

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