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アメリカに広がる専業主婦志向:本当に満足できる人生って?

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このところ、米国人の友人から、SAHMsという言葉をたまに聞くようになった。なぜ? と問うと、まさに今、米国人女性の中で、古いライフスタイルへの回帰とも思える現象が起きており、話題になっているのだという。SAHMsとはStay-at-Home Moms、つまり専業主婦のことだ。

専業主婦? アメリカで? と不思議に思い、よく話を聞いてみた。

はじまりは、プリンストン大学のアン・マリー・スローター教授が昨年6月、米国の月刊誌『アトランティック』に書いた「Why Women Still Can't Have It All」という記事だったそうだ。

スローター教授は、米国国務省の重要ポストを2年間務めたのち「アメリカで仕事と家庭の両立は不可能」と断定し、勤務時間の融通のきくプリンストン大学に戻った。彼女は2児の母。専業主婦になったわけではないけれど、この出来事は大きな驚きをもって受け止められ、議論を巻き起こした。

また、今年の3月、米国の週刊誌『ニューヨーク・マガジン』に掲載された「The Retro Wife」と題する記事がある(※『クーリエ・ジャポン』2013年7月号にこの記事の日本語訳が掲載されている)。登場するのは、33歳の女性。社会福祉の修士号を持ち、やり甲斐ある仕事に就いていたにもかかわらず、夫と2人の子どものために専業主婦になることを決意。今では心穏やかに楽しく暮らしている、とある。

同記事では、2010年から2011年にかけてアメリカで専業主婦が微増しており、なかでも25歳から35歳の、世帯年収7万5000ドルから10万ドルの層で最も増えているとの調査結果も紹介していた。これまで専業主婦層がもっとも多いのは、世帯年収10万ドル以上の家庭だったのだ。

ちょっと驚いた。もっと女性の社会進出の機会を増やそう、女性管理職の割合を増やそう、という日本とは、まったく逆のことが起きているのではないか? それがもっとも進んでいる国のうちの1つであるアメリカで?

ワシントンD.C.で働く友人は、「アメリカでは、過去数十年にわたって、女性の権利について大きな進歩があった。特に賃金の平等、出産などに関する面でね。でもまだまだそれは途上だと思うの。だから、古い、性差別的な役割への回帰の風潮には、少し当惑しているのよ」という。

実際、1978年にThe Pregnancy Discrimination Act of 1978という法律が制定される前のアメリカでは、女性が妊娠したら職場を去らせることができたという。それから、まだそんなに時間は経っていないのだ。

参考:10 Things That American Women Could Not Do Before the 1970s(Ms.MAGAZINE blog)

では、日本の現状はどうか。国立社会保障・人口問題研究所による、第14回出生動向基本調査の「結婚と出産に関する全国調査 夫婦調査」によると、ここ30年で、働く妻の割合は少しずつ増えている、との結果がある。

調べているうちに、同調査で目を引いた数字がある。それまで減っていた「結婚したなら男は仕事、女は家庭」とする数字が、2002年以降、女性で28%から32%へと、微増に反転しているのだ。

日本にもSAHMs志向の女性が増えつつある、ということだろうか。

今は、かつてないほど様々なライフスタイルの女性がいて、また、皆でそれを認め合っている、稀有な時代だと思う。そんな中、選択肢の中でSAHMsを選ぶ人が増えてきているというのは、いったいどういうことなんだろうか、と、先日から考えている。