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蚊と生きる。世界蚊の日に考えてみた。

8月20日は世界蚊の日

2017年08月23日 17時16分 JST | 更新 2017年08月23日 17時16分 JST

私は良く蚊に刺される。

自宅の庭がうっそうとしているせいか、自転車を引っ張り出すわずか30秒足らずで気づくと蚊が足に群がっていることも稀ではない。

家族の中でも父と私はやたら刺される。そのせいか、最近は若干アレルギー気味で、蚊の気配を感じると皮膚一面に湿疹ができるときもある。私にとって、蚊は紛れもなく「天敵」だ。

にもかかわらず、インドネシアの地方の町で、夜の蚊の捕獲に付き合ったことがある。自ら「囮」になり、蚊に刺される直前に蚊を捕獲する、えらくシンプル、そしてえらくハイリスクな作業だ。

Miki Nagashima

私は蚊の捕獲が全く得意ではなかった。得意どころではなく、素質がゼロと言ってよい。インドネシア人とおしゃべりしている間、ふっと気づくとすでに私の血を吸って満腹になった蚊が飛び去るすがたを何度お見送りしたことか。ほかのメンバーより若いせいか?一人だけやたら刺されつつ、1匹しか捕獲できなかったという、作業の邪魔をしただけのような経験であった。

8月20日は世界蚊の日(World Mosquito Day)

そんな天敵以外何物でもない蚊だが、蚊を祝う?日があるのをご存じだろうか。

毎年8月20日は世界蚊の日だ。と言っても祝うわけではない。

私が理事を務めている認定NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンのサイトから引用してみよう。

毎年8月20日は世界蚊の日。この日はインド医務官を務めていたイギリスの医学者・内科医 ロナルド・ロス(Ronald Ross)がハマダラカの胃からマラリアの原虫を発見した日を記念した日です。1897年(明治30年)にマラリアの原虫を発見したロス博士は、その翌年に鳥を使った吸血実験によって蚊がマラリアを媒介することを証明しました。ロス博士はこの功績によって、1902年に第 2回ノーベル賞(生理学・医学)を受賞しています。

蚊そのものを祝うわけではない。蚊が媒介する病気の発見を記念する日な訳だ。

マラリア・ノーモア・ジャパンでは毎年この時期にモスキートウィークとしてイベントや広告キャンペーンを開催するのだが、今回は落語の上演イベントとなった。

「かつては『笑い話』だったんでしょうが、今では『笑い』にならないんですよね」

世界蚊の日の翌日、今回イベント会場となるNagatacho Gridの下見に向かいながら、落語で「蚊」にまつわる話がいつ頃成立したのか、私が聞いた時の桂歌助師匠のコメントだ。落語の演目に「蚊いくさ」という話があるのだが、既に上演されることはないという師匠の話に、どうしてですか?という私の質問への回答だ。

「蚊いくさっていうのは長屋に侵入する蚊を追い払うのをいくさに見立てた話なんだけど、結局人間が負けちゃう。昔はこの話を笑う状況があったんだろうけど、今は何が面白いのかがわからない。それも上演しなくなった理由ですよね」

かつて日本で当たり前だった蚊との共存があったからこその「笑い」。しかし今は違う。明治期北は北海道から南は沖縄まで、開発の阻害要因となったマラリアは、1962年の沖縄・八重山諸島での根絶宣言を最後に日本では輸入マラリア以外発生していない。かつて平安・鎌倉時代に「当り前」だったマラリアが明治から第二次世界大戦まで、わずか1世紀で制圧されたその歴史は、日本が世界に威張ってもよい「偉業」かもしれない。

繰り返しで恐縮だが、私にとって蚊は天敵だ。世界からいなくなってもよいと思っている(と書いたところで父に「庭のカエル(別に飼っているわけではない。居着いてしまったヒキガエルが庭に山のようにいる。しかも進化?したのか、なぜか逃げずに人間に向かって飛んでくる)のエサとして大変貴重である」と力説された。彼も毎日えらく刺されているのに、蚊への愛情は私より強い)。

が、同時に落語愛好家として生活環境の変化によって落語の演目も変わるのだという師匠の指摘にはずんと来た。

エンターテインメントの世界も時代の変化がある。古典芸能である落語も当然その変化に無関係ではいられない。

そしてそのことは、同時に「蚊との生活」の時代の変化を私たちに示している。先日私は誕生日プレゼントとしておしゃれな蚊取り線香をもらったが、カワイすぎて部屋に飾っている。本来の蚊取り線香の役割を考えると本末転倒なのだが、逆の言い方をすれば、飾りにしても生活に困らないくらい、蚊は今の私たちの生活にとって「脅威」ではなくなっているのだともいえるだろう。

「蚊いくさ」は過去の話になったが、しかし蚊は今も日本の夏に不可欠?な存在だ。

改めて、「笑い」の歴史を振り返りながら、日本の蚊と暮らす夏の意味を、「蚊の日」をきっかけに考えるのはどうだろう?

Miki Nagashima

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