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次世代リーダーに向けたシリコンバレーのコーチング

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COACHING CONFERENCE
altrendo images via Getty Images
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欧米でTEDに追いつく人気のWisdom2.0会議が、Coaching & Business Cultureというテーマ―で分科会を行うと聞き、シリコンバレーの中心地マウンテンビューへ出向いた。

【Wisdom2.0とは?】

マインドフルネスや思いやりといった叡智(Wisdom)をビジネスと社会に活かすための場として、2009年からSoren Gordhamerが起こした会議。I
T、ビジネス、政治、哲学などの分野からスピーカーと参加者が集い、2014年2月にはジョン・カバット・ジン博士、SIY・Googleのチャディ・メン・タン、ハフィントンポストのアリアナ・ハフィントン、エッカート・トーレ、フォード自動車会社会長ビル・フォードなどが登壇し、2000人以上のチケットは早々に売り切れとなった。詳細はこちら

【シリコンバレーでコーチングはどうなっているのか?】

人事担当者の声: Facebook、LinkedIn、Googleなどの人材開発担当者の発表で驚いたのが、いずれもディレクター以上は1対1のエグゼキュティブコーチングを会社持ちで受けられるようになっているということだ。
また、マネジャークラスに対してはコーチングのスキル研修を義務付けているところも数社あった。

FacebookとGoogleの担当者自体が、もともと経験豊かなエグゼキュティブコーチだったというのも興味深い。どのコーチを雇うかについては相当厳しい審査で狭き門のようだ。

ここまで聞いて、日本人の私は「大手企業の重役が四柱推命の占い師にアドバイスをもらう」的な図が思い浮かんできてしまったのだが、重要な差がここにはあった。
これらのエグゼキュティブコーチングや、コーチング研修の結果に対しても、各社360度査定や既存の定期人事査定などをきちんと行っているのである。

コーチングを受けているエンジニアの声:コーチングの受け手であるFacebookやGoogleのエンジニア(人事担当でなく、ガチで現場にいる管理職)もパネリストとして登壇した。
もちろん彼らはもともと猜疑心でいっぱいだったのが、コーチとのやりとりを通じて、情熱を取り戻したり、ストレスを軽減できるなどのブレークスルーを得て、逆に驚いたそうだ。
自らの人との接し方を振り返ることにもなり、仕事以外でも奥さんや子供との接し方もより丁寧になったとのこと。これらの恩恵はコーチという中立のプロがなくてはならなかったと言っている。

エグゼキュティブコーチの声: 最後にシリコンバレーで活躍しているエグゼキュティブコーチのパネルディスカッション。
パネリストとなったJonathan Rosenfield、James Flaherty、Pat Christen、Mike Robbinsなどに対し、参加者として来ている多くのコーチたちから尊敬のまなざしが寄せられるのを感じる。Mike Robbinsはビジネスリーダーだけでなく、先ほどワールドシリーズ優勝したサンフランシスコGiantsのメンタルコーチでもあり、Pat Christenは25年前からエイズ関連のNPOのリーダーも務めた人道支援のリーダー、James Flahertyはコーチングのバイブル的な本を出版している。

ディスカッションの内容よりも、私が心を動かされたのは、リラックスしつつも、短時間で参加者とのつながりを創っていく彼らの存在感だ。
そして、「コーチング」というノウハウが役に立つだけではなく、彼ら一人一人の経験、あり方、スキル、人となりすべてが、ビジネスリーダーを納得させるやりとりを生んでいることに価値があるのだと、改めて知る。

「エグゼキュティブコーチとは、とても難しい仕事だ」とJames Flahertyは穏やかに言う。ステージ上のパネリストが、多くのビジネスリーダーの重大な決定に影響を及ぼし、ひいては社会に影響を与えているのだと思うと、不思議な感覚である。

【なぜコーチングはシリコンバレーで浸透しているのか?】

知らない間に思ったよりもずっとシリコンバレーで浸透していたコーチングであるが、全てのパネリストの発言を聞いて、理由となる2つの要素が浮かび上がる。

1つ目は、Authenticity(その人独自の真正な在り方)、Purpose(目的意識・大義)、Honesty(正直さ)、Safety(オープンになれる安心感) といった価値の重要性が高まっている事。前述のコーチ、Pat Christenは"Purpose is a leader's superpower."(大義は、リーダーのスーパーパワーだ)とさえ言った。

問題が複雑に、変化が速く、競争が激しくなればなるほど、仕事への全人的なコミットメントと個人の価値観が仕事のそれと合致していることが求められる。毎年20%の成長を遂げ、1600億円の売り上げを誇る建築機器会社のCEO Bill ChapmanもTEDトークでリーダー、従業員ともに全人的に仕事に取り組むことの重要性を述べている。
しかし管理職にとって、ホンネを表現し価値観を見つめなおせる場は、職場ではそうそうない。そこで、リーダーの想いを引き出し、仕事と個人の価値観を統合させ、情熱を取り戻すといったブレークスルーを生むのに、プロの中立なコーチが貢献できるのである。

2つ目は、ミレニアル=ジェネレーションYとも呼ばれる世代をリーダーとして育成するためである。
ミレニアル世代とは主に1980年以降に生まれ、デジタル機器を自分の体の一部のように使いこなし、SNSで人と繋がるのが当たり前の世代だ。
その分、アナログなやりとりを苦手としがちである。シリコンバレーでは、この世代が活躍し、リーダーとして台頭してきている。彼らがチームワークをとりリーダーとなる際に、特にチャレンジとなっているのがEI(Emotional Intelligence)とコミュニケーションである。EIはビジネスにおける成功の大部分を占める能力として認知されているだけに、各社注力している。

Googleで始まったEIとマインドフルネスのプログラム、SIY(Search Inside Yourself)が高く評価されているのも、ミレニアル世代の台頭が背景としてあるだろう。
このような研修プログラムのフォローアップとして、1対1のコーチングを行ったり、コーチをコミュニケーションのお手本として、自分の人との接し方に気づきをもたらす、という狙いもあるようだ。

単に「話してスッキリする」ことが理由ではなく、上記のいずれの理由も近い将来の各社の生き残りに関わる問題であり、その対処法の一つとして、質の高いエグゼキュティブコーチングの需要がある、といえるだろう。

【日本ではどうなっていくのか??】

Wisdom2.0のコーチングの成功例や浸透は、シリコンバレーに限られた現象ということもできる。
しかし、コーチングが必要とされる背景と、同じ問題を日本の企業も抱えている。コーチングが日本のリーダーや社会に本当に貢献できるようになるには、下のような課題をクリアする必要があるだろう。

1. コーチングの効果を見る評価査定
2. より短期間で効果の出せる、能力の高いコーチが必要
3. 企業が個人の価値観をどれほど重視しているか

元来天皇には斎宮というガイドがおり、世界の多くのリーダーは占いやスピリチュアルなガイドがいた。
Wisdom2.0で出会ったシリコンバレーのエグゼキュティブコーチに匹敵するような、日本のコーチ、ブレークスルーを引き出す中立なガイド役が、いつの時代でも求められている事には変わりないだろう。