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嫌な会話をしたら、その6倍は楽しい会話をしよう

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WORKPLACE
Bartłomiej Szewczyk via Getty Images
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■問題追究の会話が組織の活力を落とす

 あなたの職場は、比較的元気で明るくすごせる時と、怒ったりイラついたり、問題を追求したりと厳しいモードの時が、どのくらいの比率になるだろう。まずは自分と周囲の様子を思い浮かべつつ、感覚的に数字を挙げてほしい。
 そして、<ポジティブだと思える時間帯は、明らかにネガティブだと思われる時間帯の3倍以上はある>と、自信をもって言える人だけ、心の中で手を挙げていただきたい。
 
 組織の業績を上げ、それを維持するには、ポジティブに過ごす時間をネガティブにすごす時間の3倍以上に保つ必要がある。これは精神論ではなく科学的な調査にもとづく定説だ。
 心理学者のマーシャル・ロサダ博士は、10年間にわたって業績の良い組織と悪い組織のコミュニケーション、ふるまいを調査した。その結果、業績が良い範疇に入る組織では、前向きで明るい会話や建設的な態度が基調になっているときが、ネガティブ基調のときより"最低でも"2.9013倍多いことがわかった。

 逆に言えば、ポジティブモードがネガティブモードの2.9013倍を下回ると、組織パフォーマンスに悪影響が及び始めるのだ。では3:1にしておけばよいかというと、これは最低ラインだということに留意しなければならない。
 活力のある組織の理想的なポジネガ比率は、6(ポジティブ):1(ネガティブ)とされている。つまり組織の問題点を議論しあったら、その6倍は職場の可能性について語り合う。そんなことをふつうにできる組織が望ましい、ということになる。

■人は辛いことを、より強く記憶している

 この話を某所でしたところ、「こんな厳しい環境下で、そんなにポジティブにいられるなんて馬鹿じゃないの?」と言った人がいる。しかし6:1だからと言って、めちゃくちゃ脳天気で"この職場ダイジョウブ?"とは、ならない。
 なぜか。それは基本的にネガティブな感情のほうが、ポジティブな感情よりも生理的に強く記憶されるからだ。
 たとえば、誰かに褒められて嬉しかった記憶と、誰かに侮辱されて怒りがこみ上げてきた記憶を、それぞれ一つずつ思い出していただきたい。多くの場合、忘れてしまいたい後者のほうが、胸のざわつきや動悸などの反応を再現しやすいのではないだろうか。

 記憶のされ方が穏やかなポジティブ体験は、数で勝負しないとネガティブ体験に勝てないのだ。ポジティブ体験を積み重ねることで、ようやく適度にピリッと緊張感を保ちつつ、いい気分で仕事に臨めるのである。
 数が重要だが現実そうはなっていないのであれば、意図的にポジティブモードを強化していく仕掛けが必要になる。

■評価や判断を手放して話を聴く

 では、今すぐにでも実行できることは何か。組織における立場にかかわらず、誰もがポジティブ比率を上げるためにできること。それは、身近な席に座っている誰かの話を聴いてあげることだ。楽しい会話6倍・・・の入り口は、互いの話を聴き合う風土作りだ。
 私は10数年、リーダーシップやフォロワーシップ、コーチングのトレーニングなどで傾聴の演習をたくさん行ってきたが、しっかり話を聴いてもらった後で表情の晴れない人を見たことがない。
 聴いてもらうことは、一人ひとりが自らの多様なニーズを満たすための共通ニーズ。寄り添って聴いてもらうことで心の奥からの語りが生まれ、語りの中から本人の気づきが、勇気が、行動が生まれてくる。

 ただし辛い話を聴いてあげることで一緒に落ち込んだり、その程度のことでクヨクヨする相手に失望していたら、ネガティブな共振が起きてしまう。だから聴くときのポイントは、一切の評価や判断をさしはさまずに「ただ、聴く」ことだ。もし自分が相手の話を論評しはじめたと思ったら、それに気づいて「ただ、聴く」ことに戻る。

■結果を出す管理職ほど部下を思いやる

 世界125カ国でリーダーシップ開発を行っている米国Profiles International社の調査でも、卓越したリーダーか否かを決める要素の40%はコミュニケーションに関するもので、特に傾聴が重要であるとされている。(推薦書籍:Deiric Mccann著 LEADERSHIP CHARISMA)※未邦訳

 また、こちらもグローバルなリーダーシップトレーニング組織であるCCL(Center for
Creative Leadership)も、マネジャー(管理職)が職場において示す他者へのempathy(共感)が、仕事のパフォーマンスと相関するとの詳細な報告を出している。
(参考:Empathy in the Workplace

このCCLの調査では、ハイパフォーマンスのマネジャーは、以下4項目すべてが高い値を示している。
・他者の"オーバーワーク"の兆候に敏感か
・他者のニーズや希望、夢に興味を示しているか
・個人的な問題をもったスタッフを助けたいと思うか
・他者が個人的な失敗を自己開示した際、思いやりを持って接するか

 また別のCCLによる調査では、トップ25%のマネジャーはボトム25%のマネジャーに比べて「愛情への欲求」と「実際の状態(愛情への充足)」が共に高いという報告がある。
 愛情によって満たされている人が、その安定した在り様を基盤として、心から人に寄り添う。そこから上質なコミュニケーションが生まれてくる。
 
 両社のデータは、異なる軸から1つの本質を語っている。ポジティブなコミュニケーションという、すぐに結果の出ないことを大切にしていくこと。それによって人々に新たな共振が生まれ、少しずつ組織のポジティビティが育まれるということだ。そして無論、それは私たち一人ひとりのポジティビティと対をなしている。
 
(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事 吉田 典生)

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