「イクメン推進で会社は成長する」働き方が変わる"3つのキーワード"

2016年03月30日 00時49分 JST | 更新 2016年03月31日 01時47分 JST

厚生労働省「イクメンプロジェクト」が開催する「イクメン企業アワード」。2014年度のグランプリに選ばれたのは、岐阜県岐阜市にある区画線工事や駐車場工事を行うアース・クリエイト有限会社

社員の多くが男性のなか、男性の子育てを推奨する「イクメン宣言」をもとに、通常の育児休業とは別に、妻の出産前から取得できる2週間の特別休暇制度、子どもの義務教育終了まで利用できる家庭参加目的の有給休暇制度や短時間勤務制度など、独自の制度により社員の労働環境を整備。

育児参加の推進により、労働作業を効率化したことで、時間外労働は大幅に減少し、年次有給休暇取得率も平成25年度には85%にまで上昇。同社の売上も成長を続けています。

岐阜県にも受賞の影響は波及しています。平成18年から、「岐阜県子育て支援企業登録制度」を設立し、県内企業の仕事と育児の両立支援に力を入れてきました。平成23年からは優良な取組や他社の模範となる独自の取組を実施する企業を「岐阜県子育て支援エクセレント企業」として認定。アース・クリエイトも子育て支援エクセレント企業の認定を受けています。

認定を受けた企業はハローワークなどの求人サイトで認定企業の表示がされ、入札審査の項目としても利用されているなど、県自ら子育て支援に力を入れる企業を応援しています。受賞をきっかけにこうした県の取組が他県の自治体関係者からも評価され、子育てや育児参加を推進するためのさらなる取組が生まれているようです。

受賞から1年以上が経った現在、その後の取組みや現在の活動について代表取締役の中石俊哉さん、取締役営業本部長企画・制作・広報室長の岩田良さんに話を伺いました。

受賞をきっかけに広がる、企業内外の反響

「イクメン企業アワード2014」の受賞から約1年。受賞をきっかけにさまざまな変化が起きました。

一番大きいのは、社員のモチベーションの変化です。

これまで企業として実践してきたことが評価されたことは大きく、アワード受賞企業という口コミが広まったことで社員の家族同士の仲が良くなったり、地域の方々からも声をかけられたりすることが増えました。「自分たちの振る舞いが見られているんだという意識が社員に生まれ、襟を正し、仕事へさらに積極的に取組むようになりました」と中石さんは話します。

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次に大きな変化として挙げられるのは、新卒社員の入社です。

「建設業は大変な仕事の印象も強く、これまで新卒が入社することはほとんどありませんでした。しかし、受賞のニュースをきっかけに高校2年生から入社の問合せがあり、現在入社1年目として働いています。今年も春から一人新卒を受けました」と中石さんは話します。受賞をきっかけに企業としての健全さがアピールされ、入社企業の候補に挙げる人が増えたとのこと。

社員の自主性をもとに積極的に現場に任せる自由な働き方を生み出すために実践しているのが、定期的な「個人面談」です。

「個人面談」では、一年の目標を各個人が設定し、それぞれがやりたいことや家庭の状況などを幹部が詳細に把握。進捗や状況の変化を把握する場として、年初だけでなく数ヶ月毎に面談を行っています。もちろん、普段から社員同士、幹部と社員同士の密なコミュニケーションを取れるよう、スマホのメッセージアプリを使うなど、いつでも気軽に相談できる文化をつくりだしています。こうした普段の密なコミュニケーションによって「出産前から、いつくらいから休もうと思っている、などの相談もしやすく、また復帰のタイミングでも職場の状況を共有でき、スムーズに仕事のバトンの受け渡しができる」と岩田さんは話します。

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また、時間外労働の削減をするために、移動中にも使用できる社内向けポータルサイトを開設。毎日の日報や現場の状況の共有、進捗、日々の出来高、請求管理を物件ごとに整理した項目を作り、すべての社員に状況を共有する仕組みを導入しています。

社内では固定席をなくしフリーアドレススペースに。各自がノートパソコンを片手に好きな場所で仕事をすることができます。書類などは紙の共有ファイルに保管。すべての資料が誰でもアクセスできる場所にあることで、担当者が抜けても誰かがすぐにサポートできるようになっています。

会社の見える化と社員の自分ごと化を図ることの重要性

最も意識していることとして、会社のあらゆる様子の「見える化」が挙げられます。

男性の育児参加を促し、企業として有給休暇や育児休暇の取得を進めるためには、家族への理解が必要です。父親参観日や社員旅行の家族参加など、積極的に社員の家族を巻き込むことで、会社の様子を「見える化」し、企業としての姿勢を理解してもらうことが大切だ、と中石さんは話します。

また、「見える化」の大きな取組みとして、社員に事業計画を発表し、売上や利益、経費など、会社のあらゆる情報を共有しています。

「はじめは10ページくらいの資料で企業情報や大まかな数字を見せていき、そこから事業計画の見方や数字の作り方についてのレクチャーを行いました。年を追うごとに資料のページが厚くなっていき、いまでは30ページ以上の事業計画の資料を社員全員が目を通し、発表の会議の場で社員からも意見をもらうようにしています。最近では、資料に各自の個人面談の内容も挟み込み、それぞれがどういった意識で働いているのかを社員にも知ってもらうことで、互いに支えあう意識が芽生え始めています」(岩田さん)

これにより、社員の中に経営視点をもった働き方や企業の自分ごと化による当事者意識が生まれてきています。会社の理念だけでなく、あらゆる数字や状況を共有し、企業としての姿勢を社員に対しても徹底することが、企業と社員との信頼関係の構築につながっていく、と話します。

地域を巻き込みながら、すべての人が活躍できる包括的な支援の場を

こうした中、結婚を機に離職した女性の雇用をいかに生み出すか、という課題も見えてきました。岐阜県の調査によると、結婚などを機に離職や転職する女性は約6割、特に離職した女性の8割は営業職で、労働時間の調整や会社制度の不十分さによって優秀な人材が埋もれてしまう現状があるとのこと。そこで、アース・クリエイトでは女性営業部を発足させ、2015年9月に1名を雇用。「女性の就業境の充実にもつながるはず。同時に、離職した優秀な人材を活かす一つのビジネスチャンスになる」と話します。

さらに、新たな取組みとして、障がい児童放課後等デイサービスの運営が挙げられます。

この施設には、アース・クリエイトを定年退職した人を積極的に再雇用しています。また、「お子さんのいるママが1時間でも働けるよう、地域ぐるみで互いに支え合うためのネットワークをつくっている」など、育児中の人でも働ける場を作っています。こうした活動を通じて、地域全体があらゆる人を包括的に支える持続可能な社会づくりを目指しています。

「あらゆる人が、少しの時間でも働きたいという悩みを持っています。そこに企業として貢献できれば。家庭の悩みは社会の悩みであり、それを解決するのがビジネスです。今後は学校ではできない教育的な取組みにも力をいれていければ」(中石さん)

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まずはできることから始めることが、イクメンへの第一歩

個人面談や事業計画の見える化、積極的な休暇制度、それを促し誰もが互いに支えあいながらサポートする企業文化をつくること。イクメン支援を含めた社員の仕事と家庭との両立を図るための正攻法は存在せず、それぞれの企業がやれることからやりながら、日々改善を続け変化していくことが大切だと話します。

「8年の時間をかけて徐々に生まれてきました。ただ制度を導入すればうまくいく、というわけでなく、いまに至るまでにもさまざまな失敗があり、結果としてこういう形になっただけだと考えています。情報の共有や会社の見える化、その他の小さな取組みもすべて、経営者一人で決めるのではなく、すべてを社内の会議で共有し、その会議で出たアイデアをすぐさま実践していきながらフィードバックをもとに改善していくことです。

社長がなんでも決定し、社員がやられさる意識をもつより、自分たちが決めたことを自分たちなりに試行錯誤し、みんなで良くしていこうとすることが当たり前になるようにしていくことではないでしょうか」(中石さん)

必要なことは、社員の仕事と家庭の両立を図ろうとしている企業の姿勢を表明し、長期的な視野と軸を保ちつづけることであり、「日々の生産性を考えるのではなく、育児休暇や育児支援に力を入れ続けることで、回りまわって社員のパフォーマンスの向上や社内システムを変革するアイデアがでてきたりする」と岩田さんは話します。

そのためには、「まずできることから始めるべき」と岩田さんはコメント。「ワークライフバランスや社風それ自体は目に見えなく形のないもの。社員構成や年齢が変われば制度や仕組みも変わっていく。同じ制度のままではなく、常に変わっていかないといけません。これをやれば大丈夫と安心することなく、そのときできることをやりながら、社員が求めているものを把握し、それに応えながら安心して働ける環境づくりのために何を優先していくかを、経営者や幹部が常に考えていくことが大切だと考えています」。

現在では、社長の中石さんから営業本部長の岩田さんに多くの決定権がバトンタッチされ、より現場に近い立場で意思決定できるようになっているとのこと。中石さんは「企業をいかに持続可能にしていくか。そのためには若返りや次の世代へのバトンタッチを意識していくことも重要」と話します。

男性の育児参加だけでなく、女性の働く場の提供や社員が安心して働けるための社風、経営者としてのマインドセット。さまざまなやるべきことを前に、まずは小さな一歩でもいいから実践していき、改善を繰り返していくことが結果として大きな変化につながっていく。すべての人が活躍できる場をつくりたいと考えるアース・クリエイトは、地域も巻き込みながら、徹底した透明性と日々のコミュニケーションの重要さが企業にとって必要なことだと話してくれました。

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