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兼業営業マンが語る、「二枚目の名刺」というソーシャルな働き方

2014年10月22日 22時08分 JST | 更新 2014年12月21日 19時12分 JST

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■"二枚目の名刺"を持つことの意義

「新しいソーシャルな働き方」をしている人をインタビューしていく本企画。今回お話をお聞きしたのは、富士ゼロックスの杉谷昌彦さんです。

杉谷さんは、富士ゼロックスでプリンターの卸販売業務をしながらも、社会人(ビジネスパーソン)がSPO支援※を行なう団体「NPO法人 二枚目の名刺」の共同代表理事もしていらっしゃる、文字通りの"二枚目の名刺"を持つ、パラレルキャリア実践者です。

なぜ、企業に勤めながらNPOの代表をしているのか、自身のリソースの振り分けはどうしているのか、同僚の理解は得られているのか。

会社員でありながら"二枚目の名刺"を持つことの意義などについて、お聞きしてきました。

※SPO=Social Purpose Organizationの略。NPOや任意団体等、社会問題の解決をめざす団体の総称

■実は、私が初めての例ではなかった

安藤:まずはご経歴についてお伺いします。

杉谷昌彦さん(以下、杉谷):2006年に新卒で、当時、富士ゼロックス株式会社の事業子会社だった、富士ゼロックスプリンティングシステムズ株式会社に入社したのがキャリアのスタートです。翌年合併し、富士ゼロックス株式会社に入社、そして現在に至ります。

プリンターの卸販売にずっと携わっていて、その後、事業計画部という部門で新規事業の立ち上げに関わるようになりました。今年からは、また前部門に戻り、プリンターの卸販売などの業務をしております。

新卒入社した時からから社会貢献に興味があったわけではなく、2009年(社会人3年目)ころから、社外の勉強会などに興味を持つようになり、NPOの勉強会にも何度か参加していました。

その中で色々なNPOを見てきたのですが、正直やりたいこととはちょっと違うかなと感じていました。そんな時2009年12月に、現在のNPO法人二枚目の名刺の共同代表理事をしている廣優樹が、当時プロジェクトを立ち上げるとその勉強会で発表したのをみかけたのです。

そして、このプロジェクトが面白そう、と参加を希望し創業時から参画することになりました。以降、2011年のNPO法人化の時に理事に就任し、2014年7月に共同代表理事となりました。

安藤:NPOといっても法人の代表になったわけで、会社の許可申請など大変ではなかったですか?

杉谷:実は弊社には、NPOの代表をしている方が何人もいるんですよ。私が初めての例ではないんです。だからか、許可に関しても大きな問題にはなりませんでした。

弊社は、CSR(企業の社会的責任)という考え方が普及する前からCSR的な活動をしており、従業員の社会活動はむしろ推奨するような社風があります。ボランティア休暇などもあり、制度として従業員の支援もしています。あとは「端数倶楽部」という仕組みもあります。

端数倶楽部とは、給与の100円未満の端数をプールしていき、従業員の推薦があった団体などに寄付するという社会貢献プログラムです。面白いのが、端数クラブから寄付される同額を富士ゼロックスが上乗せする、いわゆる「マッチングギフト」形式の寄付で行なっている点です。

安藤:すごく先進的な社風なんですね。

杉谷:そうですね、極めてソーシャル(社会的)な会社だと認識しています。ですので、社外での社会貢献活動には理解があるし、NPO活動を業務時間外で行なえば副業規定にもひっかかりません。

そもそも、私の場合はNPOの代表ですが、定期的な給与はもらっていませんし、イベント参加などの時の交通費等も実費なので副業にはならないです。首都圏での活動が中心なので、私としてはそこまで活動コストがかかっている意識もありませんし、当面はこのままのやり方でいくつもりです。

■なぜNPOの代表なのに、専従にならないのか

安藤:今は企業にお勤めですが、NPOの代表だし、いつかフルコミットメントをしてNPOに専従しよう、というキャリアプランはないのですか?

杉谷:今のところ専従の予定はありません。所属するNPOの「二枚目の名刺」という団体がそもそも、本業を持つ社会人が、本業以外の時間で社会貢献活動をする、というのがコンセプトですし、代表も例外ではないと思っています。

NPOでは、そういう社会人を増やしたい、そういう社会人が社外で学んで、本業にスキルとして還元できる活動をする。そういったインパクトが目的ですので、本業があってこその社会貢献活動とも言えるでしょう。

よく言われる通り、企業は「社会の公器」でもあり、営利活動のすべてが社会悪にはならないと思うんです。企業活動で誰かの「困った」を解決していく。その上で対価としてお金をもらっているだけです。ですので、本業でしっかり結果を出すことも、社会に貢献するという意味では重要だと考えています。

安藤:どちらが大事というより、両方の活動が大事であると。では、今出たNPOの話を詳しくお聞きしますが、今現在、専任スタッフは何人いますか?

杉谷:NPOに専任スタッフはいませんが、有給スタッフは1人います。事務局まわりのサポートなどをしてもらっています。有給スタッフも"二枚目の名刺"を持ち活動しています。

コアメンバーは20人前後。プロジェクトの期間は4ヶ月前後のものが多い印象です。年間でだいたい5〜10件くらい平行して進めています。支援プロジェクト数が多ければよい、というわけではなく、そういう活動をしたいと思っている社会人をどれだけ集められるか、も重要だと思っています。

支援して欲しいという団体を集める、それに加えて、プログラムに参加する社会人には、社会貢献活動に一歩踏み出し、新しい視点・視座を得てもらうという体験を提供しています。そうやって双方がまとまりマッチング出来た結果、プログラムが始まるという感じです。

■同じ活動でも、価値の軸が異なる

安藤:ちなみに活動の中で「NPOを支援したい社会人」と「支援をしてもらいたい団体」はどちらの方が応募が多いですか?

杉谷:今はおかげさまでどちらも多いですね。支援対象分野の制限は一切しておりませんので、色々な方からお声がけいただける、というのはあるかもしれません。

過去のプロジェクトでいえば、ファンドレイジング(資金調達・寄付獲得)などの基本的な支援から、企業提案(営業)、中期経営計画策定、プライシングなど、いわゆる戦略コンサルタントが行なうような活動のものもありました。ユニークな所でいえば、フラッシュモブ(公共の場に集まり前触れなく突如としてパフォーマンスを行い、周囲の関心を引きその目的を達成するとすぐに解散するサプライズ行為)の企画支援なんかもありました。

私たちがしていることは、いわゆるプロボノ(スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動)ではありますが、活動イメージとしてはスキルベースではなく、支援プロジェクトに参加してくれる社会人の"興味ベース"であると言えます。

プロボノは「持っているスキルをアウトプットする」ことが主軸となりますが、私たちの場合はスキルありきではなく、興味があるプログラムであれば、社会人に参加してもらうような仕組みにしています。

社会人が、本業の中ではできないけど興味がある活動をしたり、新しいスキル習得ができる活動だったり、社会人の社会貢献活動による経験(インプット)を主軸にしています。社会人はプログラムに参加することで、アウトプットをしつつも、多くのインプットができます。

安藤:プロボノ活動が主軸ではなく、社会人の体験が主軸であると。

杉谷:そうです。私たちの場合、"団体を支援する社会人"が主役と考えています。団体支援をするプロボノ活動は、社会人はサポーターであり、支援対象団体が主役という考え方かと思います。私たちの視点をコンセプトとする中間支援団体は多分いないと思います。

ただ、社会人が主役なのは間違いありませんが、だからといってNPOへのサービスがおろそかでいいということではありません。社会人が社会貢献活動を通じ、学び体験するプロセスを重要視しつつも、支援した団体の課題を解決していく。社会人が二枚目の名刺を持って活動をする。そこにフォーカスしている団体であるということです。

■経済的価値を担保しつつ、社会的価値も作っていけるビジネスパーソンになる

安藤:そうなると今後の活動のKPI(重要指標)は参加人数になるのでしょうか。

杉谷:私たちのミッションは「二枚目の名刺を持って社外活動をすることが、当たり前になっている社会」を作ることです。ですので、プログラムへの参加人数だけでなく、他にもミッションを達成するために指標があります。

今はまだ、会社終わりにNPO活動に行ってきますとか、土日何しているの? と聞かれNPO活動してますとか、特に社内では言いにくい雰囲気ってあると思うんですよ。何かミスすると「勤務時間外で勉強せずに、NPOなんかやっているからミスするんだ」みたいなこともありえるわけです。

社外活動がネガティブに映る社会って決して良い社会であるとは思えないんです。オープンになるというか、多様性を認めるというか、自分以外の価値観を認められる包容力のある社会にしたい。「二枚目の名刺を持っている人って二枚目だよね!」なんて言われる社会を作るのが目標です。

「二枚目の名刺」という考え方を広げることが私たちのミッションであって、「NPO法人二枚目の名刺」の組織を大きくすることが最終目的ではありません。

ですので、今は首都圏でメインで動いていますが、例えば、東北でこの活動をしたいという人がいれば、ぜひやっていただきたいと思っています。スケールアウトというか。必ずしも私たちが活動のリーダーである必要はないのです。

現実的な所でいえば、それこそ、会社の管理職・マーネージャーや経営層の方々こそが、こういう考え方があるんだと理解してもらうのが重要ですね。

マネージャーがNPOに理解がないと、活動しにくいというのはありますからね。若い柔軟な人たちだけが動けばいいというわけではありません。政府や自治体、NPO、企業など、様々な人たちがお互いを尊重しあえる社会がいいですよね。

安藤:杉谷さん自身は、今の同僚の理解は得られていると?

杉谷:私の場合はマネージャーに理解があり、NPO活動をどうしても平日行なう必要が会った場合は、有給などを取らせてもらったことはあります。

有給は権利なので許可がどうこうではないのですが、理解してくれている人がいるというのは心強いです。制度上の問題より、理解者いることは大変ありがたいです。状況によっては制度があっても使えないということもありますからね。

まだまだ足りないスキルはあると思っています。頭でっかちの人間にはなりたくないというのはありまして、社会的な価値を生み出していくのはもちろんのこと、経済的な価値を作っていくことが重要だと思っています。行動がすべてですね。

自分自身が、企業や社会への経済的価値を担保しつつ、社会的価値も作っていけるビジネスパーソンになりたいです。いつまでに、というのはありませんが、将来的に自社に新しい価値提供をできる人間を目指しています。

【企画:CSRビズ