4000人調査から見えてきた日本におけるフリーランス活躍の課題

3月14日に、昨秋から4回にわたって開催されてきた経済産業省「雇用関係によらない働き方に関する研究会」の報告書が発表された。

3月14日に、昨秋から4回にわたって開催されてきた経済産業省「雇用関係によらない働き方に関する研究会」の報告書が発表された。

約4000名のフリーランスおよびパラレルワーカーを対象に実施したアンケート調査結果と、研究会での議論を受けて、

「教育訓練」「円滑に働くための環境整備」「雇⽤関係によらない働き⽅をめぐる企業の取組」

という3つの視点から、フリーランスの抱える課題と解決の方向性が示されている。

▼雇用関係によらない働き方に関する研究会 報告書(概要)※サマリー

▼雇用関係によらない働き方に関する研究会 報告書(案) ※全文

私自身、4回の研究会にゲスト参加し、会社としてもヒアリング対象のご紹介や調査項目のご提案など協力をさせていただいた。

研究会を通じて、フリーランスが日本で活躍するうえでのポイントをあえて3つに絞ると以下だと感じた。

1.雇用関係によらない税と社会保障の一体改革を!

研究会で実施した4000人アンケート調査によれば、約半数が現在の働き方の満足度について「満足している」「やや満足している」と回答。

今後については「現在の働き方を続け、事業を拡大したい」(39.3%)が、「現在の働き方をやめて企業等に雇用されたい」(4.8%)を大きく上回りフリーランスがおおむね現在の働き方に満足している現状が伝わってきた。

一方で自身の「働き方のデメリット」「今後の課題」については、約60%が「収入が不安定であること」「収入が安定しないこと」と回答。「お金」に関して悩みを抱える現状が浮き彫りとなった。

これは、フリーランスに関しては病気やけが、出産・育児に伴う「休業時の補償」が不足していることも背景として大きい。(下図、上記報告書より引用、以下同様)

フリーランスが自身で民間保険に加入して備えることはもちろんだが、国としても公的補償の拡充の可能性をぜひ検討していただきたいと感じる。

また、税制についても個人事業主(事業取得)と労働者(給与取得)では控除の計算方法が異なっており、この点に違和感を持つフリーランスも多い。

この点については、すでに政府税制調査会でも税制見直しの提言がなされているとのことなので、さらに議論が進むことを期待したい。

2.フリーランス自身がスキルアップし、「変身」を!ともに成長する「つながる力」の醸成を!

私自身が普段、接しているフリーランスからも

「フリーランスはキャリアの幅を広げるのが難しい」

「フリーランスとしてのキャリアアップ、スキルアップをどうしたらいいかわからない」

などの悩みをよく聞く。

フリーランスになると、基本的には自身の「得意領域」に対して発注を受ける形になるので

ともすると、同様の領域ばかりを請け負う形となり、新たな領域へのチャレンジがしにくくなると感じる人も多い。

今回のアンケート調査でも、「これまで有用であった能力・スキルの修学機会」については、「前職での職務経験」が6割を占め、最も多かった。(下図)

逆に「現在活用しているスキルアップ関連のサービス」についてはおよそ6割のフリーランサーが「ない」と回答するなど、(下図)あくまで「前職での職務経験をベースに」業務受注している現状が見える。

しかしながら、本研究会でも座長の高橋俊介慶応大学教授が「スキルは数年で陳腐化する」と発言されていたが、この変化の激しい世の中で、「ライフ・シフト」でいうところの「100年ライフ」を生き抜くため75歳程度まで働きつづけることを考えると、働き手自身が、自身のスキルアップの機会を自ら獲得し、「変身」「バージョンアップ」し続ける努力が必要だろう。

もちろん、「フリーランス」「個人事業主」が本当に「役立つ」「ためになる」と感じる学びの場が少ないのは事実。

それは、私たち事業者も含めて、プロから実際に教えを受けたり、フリーランスとしての実地体験を積める場を設計していく必要がある。

また、研究会では、フリーランス同士の「ネットワーク」の重要性も指摘されていた。一人では受注できない仕事もチームであれば受注でき、自身の業務経験が広がる可能性がある。

(実際に自身で「チーム」を編成して業務受注しているケースもある→「フリーランスならではのモヤモヤを"チーム体制"で解消」

フリーランスというと、ともすると自由気ままに一人で活動するイメージを持たれるかもしれないが、

これからの時代のフリーランスに必要なのは、ともに成長できる仲間を発見し、ともに働く「つながる力」だと感じる。

3.企業のイノベーション創出にフリーランスの活用を!

今回の報告書の中でなかなかショックだったのが、外部人材活用に対する企業の認知度だ。

「働き方改革に関する企業の実態調査」によれば、フリーランス人材を「活用している」企業は18.9%にとどまり、「現在活用しておらず、今後の活用も検討していない」と回答した企業は半数近くに上った。(下図)

私自身は2013年から女性プロ人材と企業とのマッチング事業に従事してきて、外部プロ人材(フリーランス人材)の活用が企業のイノベーション創出に大きく寄与すると感じている。

こまぎれの業務を委託するのみならず、より企業の経営幹部や事業部長クラスの右腕となって戦略立案から実行まで担えるフリーランス人材がおり、その活用ジャンルもIT・クリエイティブ領域にとどまらず、新規事業立ち上げやマーケティング・PR、人事・組織開発などの領域にまで広がりつつある。

こうした人材活用のあり方について、私たち事業者自身も一層、発信していく必要性を感じた。

いずれにしても、今回の一連の研究会および調査活動は国が「フリーランス」という新たな働き方にフォーカスをあてた、画期的な取り組みだったと思う。

個人的にも、会社としても、この新たな働き方を根付かせていくうえでの自分たちの役割・価値について再認識する貴重な機会だった。

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皆さんは、上記報告書を読んで、どう感じましたか?

報告書を読んだ感想やアイディア、ご意見があれば、ぜひ教えてください。

私が理事をさせていただいているフリーランス協会では以下のようなアンケートを実施中です。私たちの今後の活動の参考とさせていただきます。

▼アンケート「雇用関係によらない働き方に関する研究会 報告書(案)」によせて

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