自分の根っこは? ヒューマンドキュメンタリー映画監督・高橋夏子さん

現在公開中ヒューマン・ドキュメンタリー映画『Given~いま、ここ、にあるしあわせ~』の監督を務められた高橋夏子さんにお話を伺います。

4月も終わり、いよいよGWですね。楽しい計画を立てていらしゃるでしょうか?私は新年度から新しいことがいくつも始まり久しぶりにバタバタしておりましたが、ようやくペースがつかめてきたところです。

さて!今年はいろいろな方々と対談しています。今回は現在公開中ヒューマン・ドキュメンタリー映画『Given~いま、ここ、にあるしあわせ~』の監督を務められた高橋夏子さんにお話を伺います。

思いもよらない理不尽な困難は、きっと誰にでも降ってくるもの。でも、そのあとも人生は続きます。生きるってどういうことだろう?家族ってなんだろう?『ふつうの毎日』を通じて、そのような、自分の根っこの部分を考えるきっかけになれれば、と言う高橋夏子さんのコメントが心に残っています。

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大塚(以下、大):今日はありがとうございます。宜しくお願いします。

高橋(以下、高):こちらこそありがとうございます。

:さっそくですが、これまでテレビ番組でディレクターをされていて何故映画の監督を引き受けられようと思われたのでしょうか?

:一言でいうと『ご縁』の結果です。

元々、『公益社団法人 難病の子どもとその家族へ夢を』の大住力さん(本作品のエグゼクティブプロデューサー)が、映画を作りたいという考えを持っており、監督を探していたところ、共通の知人を介して、私にご縁がつながりました。

映画の仕事は未経験でしたし、いわゆる『病気のかわいそうな子どもを撮った、泣かせる系』は、個人的に好きでないので、最初はお断りしようと思っていました。

でも、大住さんから「闘病ものではなく、いのち、生きることがテーマ。彼等から学べることを映画にしたい」という意向を聞き、自分にできることを精一杯やろうと、腰を据えて取り組むことにしました。

もちろん、テレビ番組も映画も、一人では何もできません。プロデューサーの近藤正典さん(ほぼ唯一の映画経験者)、アシスタントプロデューサー水戸川真由美さん(ダウン症協会理事でもあるパワフルママ)、撮影の橋本和典さん(家族写真家、4男子の父)など、これまたご縁で結集した個性的すぎる製作メンバーで、ひとつひとつ相談しながら、進めてきました。

:どれくらいの期間をかけて撮られたのでしょう?

:足掛け3年です。撮影当時は4歳だったお子さんが今や6歳・・・。私自身はさほど成長していませんが(笑)、この間にもお子さんたちはどんどん成長しています。

映画でもテレビ番組でも、撮影と同じくらい、編集作業には、時間と労力がかかりますが、編集作業は私の自宅のリビングで行いました。予算的なこともありますが、今はパソコンさえあれば、自宅で映画の編集が出来るので、子育て中の身には、ありがたいです。

:実際撮られて、テレビと映画の違いは感じられましたか?感じた場合、具体的にどんな点でしょうか?

:大きな違いは2つあります。

今回、映画の仕事は初めてということもあって、最初、知人を介して、ある映画監督の方にお話を伺ったのですが、「テレビは作って終わり、だけど映画は作ってからが勝負だよ」とアドバイスを頂きました。これが大きな違いの一点目。

テレビの場合、完成して放送すればゴール、といった面が強いですが、映画は製作したものを、より多くの方にご覧いただくための『宣伝・配給』に『製作』と同じくらい、手間暇かかるということなのです。『生まれるまで大変だけど、生まれてからはもっと大変』・・・まるで子育てのようです。(笑)

二点目は、『説明しすぎない、感じてもらう』ということです。テレビの場合、『誰にでもわかる』ようにナレーションやテロップなどで説明を尽くすことが多いと思います。

でも、映画の場合、そのやり方では観る人が自由に感じることを邪魔してしまうのです。

これは、プロデューサーの近藤さんに何度も言われていたのですが、私自身がそのことを本当の意味で理解したのは、作ったものを実際に試写室で観てからです。

暗がりで画面に集中できる映画館では、テレビと同じようなナレーションやテロップは、余分なものに感じます。私は、これまで作ってきた番組のクセもあって、詰め込み過ぎたり、ナレーションで一定の方向に誘導してしまう傾向があったのですが、そのやり方は映画では通用しませんでした。

:素人の考えですが...テレビと違って映画の方がいろいろとスケールと言うのか大きくて大変そうなイメージです。苦労されたのは、どんな点でしょうか?

:この作品の場合、コアメンバーが10人足らずと大変小規模なので、スケールという点では、テレビの方が大きいかもしれません(笑)。そういう点では、一人何役もこなさなければならず、確かに大変でした。

でも、メンバーと一緒に暗中模索をしながら、手探りでひとつのものを作り上げていく、ということは苦しくもあり楽しい過程だったと思います。

また、この作品は一眼レフで撮られた映像がメインになっていますが、撮影を引き受けてくださったのは、普段はスチール写真を撮っている写真家の橋本和典さん(カズさん)です。

カズさん、動画は初めてで、最初のうちは、取扱説明書を読みながら撮っていた位(苦笑)・・・なかなか冒険的なことをしたと思いますが、カズさんの目線で切り取られた映像は、特別な力を持っていて、それを編集する過程は、彫刻を彫り上げていくようなワクワク感がありました。

:そうなんですね!では反対に、映画だからこそ!というような楽しかった点・良い点があればおしえてください。

:観てくださる方と、とても近い距離にいられることです。わざわざお金を払って劇場に足を運んでくださる方々と実際に劇場で会って、感想を聞ける。このことの有り難さは、TVでは得られなかった感動です。

また、この作品は、宣伝費などもあまりかけられませんが、製作に関わって下さった方や、登場するご家族、観てくださった方などが、口コミで広めてくださっています。じわじわと広がってくことが、不思議でもあり、メンバーの喜びでもあります。

:この映画で1番伝えたい事はどんなことでしょうか?

:この映画には、難病や障がいを持つお子さんとそのご家族が登場しますが、『闘病モノ』ではありません。

思いもよらない理不尽な困難は、きっと誰にでも降ってくるものだと思います。でも、そのあとも人生は続きます。生きるってどういうことだろう?家族ってなんだろう?登場する3つのご家族の『ふつうの毎日』を通じて、そのような、自分の根っこの部分を考えるきっかけになれればと思っています。

製作チームのメンバー、そして何より、映画に出て下さったご家族がそれぞれの想いを持って、この作品に関わって下さっています。

私は監督という肩書きではありますが、ご縁でつながった想いの数々を、まとめて、ひとつの作品にする、という役目を果たしたに過ぎません。この作品は、私の内面の世界を表現したのではなく、私自身はあくまで記録者であり、伝え手だと思っています。

この映画のコピーは『これはあなたの映画です』。家族だったり、子育てだったり、仕事だったり・・・観る方によって感じるポイントは違うと思いますが、観たあとで何か温かいものが残れば嬉しいです。

:ありがとうございます。これからもご活躍を応援しています。

:お話できる機会を頂いて、本当に嬉しいです。映画はこれから、ゆっくりとですが、全国展開を予定しています。現在は横浜で上映中です。また今後全国各地での上映情報はHPでもご確認いただけますので、是非、ご覧になってください。ありがとうございます。

ヒューマン・ドキュメンタリー映画「Given いま、ここにある、しあわせ」ナレーションをつとめられた熊谷麻衣子さんの記事はこちら

今後も様々な方と対談していきたいと思います。ご質問・ご要望などありましたら気軽にメールでご連絡を頂けると嬉しいです。 info@andmom.net

皆さま、楽しいGWをお過ごしください。お読みいただき有難うございます。

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