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医療者による朝のケアで、患者さんの何が良くなるのか?

2014年09月24日 15時08分 JST | 更新 2014年11月23日 19時12分 JST

朝起きてやることは、一日を始める上でとても重要なこと

朝

朝起きてやらなくてはならないこと、それは、起きて、排泄、洗面、歯磨き、洗髪、朝食の準備...

顔を洗わないとすっきりしない、朝は時間がないからご飯は食べない、なんて人もいると思いますが、人それぞれその人らしい朝を迎えている事でしょう。

朝は一日の始まりであり、とても重要な時間。理由なんてないけど、誰もが感じていることではないでしょうか。

自分のことが出来ない患者さんの朝は、医療者しかつくれない!

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病院にいる患者さんで自分のことが出来ない方であれば、できないところは医療者、特に看護師に援助を求めるしかありません。

朝のケアは、患者さんにとって排泄や清潔が満たされ安楽をもたらすだけではなく、一日の生活行動や療養行動に取りかかりやすくして、日中の生活やリハビリを促進して回復や自立に影響を与える可能性もあるのではないかと思われるくらい、重要な看護師のケアなのです。

しかし、病棟では医療者の忙しさのあまり、朝のケアが簡単に済まされてしまうのが現状です。

患者さんがその人らしい朝を過ごせるようになるには?

そこで、ある看護師が「患者さんの一日の始まりが大切にされるようになってほしい!」と考えたことがきっかけで、朝のケアの重要性とその効果について実証するための研究を行っています。

まず、文献検討から、実際に患者さんが早朝にどのように過ごしているのか、どのような思いで過ごしているのかといった、入院患者さんの朝の生活を明らかにする必要があるということが分かりました。

そこで、実際に朝のケアを受ける整形外科疾患でベッドの上で安静にする必要がある患者さんを対象に、ある5か月間の早朝5~8時まで病室の一角に座らせてもらい、朝起きる前から朝食を食べるまでの患者さんの生活行動と医療者の援助内容を観察し、その後に患者さんと看護師に対して、自分の行為やその理由に関する面接を行いました。

その結果、患者さんは健康に過ごしていた状態と、同じようなことを求めているということが明らかになりました。

患者さんはベッドの中でも、夜の環境からの解放を求め、カーテンを開けたり、電気をつけたりして明るくし、片づけをして一日の活動を始めたい、というニーズを抱いています。また、今まで家で行ってきたように、そろそろ洗面や身支度を行おうとしているのですが、今までのように自由にできないともどかしさを感じています。

そして、まだ寝静まっている朝の環境の中で、自分はこれからどうなっていくのだろうか、どうやって生活していこうか、とこれからの生活に思いを馳せます。朝のうちに、一日の予定を把握したいとも考えています。自分の身体の状態を確認し、自分の置かれている環境を思い知る中で、今日もまた医療者にケア差の自分のことを確認したいと思っています。

さらに、患者さんは睡眠がとれたからと言って朝がさわやかという訳ではなく、病気からくる状況から気分が沈みがちです。日中にある、検査や処置、リハビリなどに向けて、気分を切り替えて前向きに取り組みたいと考えています。

これらのことから、看護師は、朝を過ごす患者さんの背景に目を向けながら、患者さんの言葉や行動の意味を理解し、援助のニーズをくみ取りながら、自らできない人に対して朝のケアを行うことが求められるということが分かりました。

そのためには、朝のケアが看護ケアとして確立させられる必要があります。看護ケアとして構築していくために、朝のケアの効果の検証が行われました。

朝のケアの内容を見直し、その内容を患者さんに実際に実施して、実施しながら患者さんの表情や言葉を観察し、実施後にインタビューを行って内容があっているかを確認しました。

それによって開発されたケアを「快適起床ケア」と名付けました。今までのケアと大きく異なるのは、「洗面器にお湯を準備して設置し、希望があれば家で行うように洗顔や手洗いができるようにする。また、看護師が朝のケアとして、予定表を用いて生活の見通しを立てる。」の2つの点です。歩行介助を必要とする術後慢性期の整形外科患者に対する「快適起床ケア」の有効性を検証しました。

その結果、以下の3つのことが明らかになりました。

1つ目は、快適起床ケアを行うことで、抑制感情が解放されるということです。それは、快適起床ケアを行った方が、行っていない方と比べて「快適感」と「今日への活力」の各因子得点が高く、(注1)POMSの「緊張」―不安得点の低下と活気低下の向上にも有意差が認められたことから分かります。

2つ目は、快適起床ケアを行った方が、朝の活動性が向上するということです。快適起床ケアを行った方が、「活動準備」「自発的活動」「簡易洗面」の各因子得点が有意に高く、手術の後の3日間の「朝食行動」も、朝食摂取率と術後3日間の食事中の姿勢を除いて有意に高かったからです。

そして3つ目として、朝の支度の充実が快適感と起床を促進して「今日への活力」を高め、その活力が主体的に食事の準備を促し、朝食を良く食べるようになることが分かりました。

このように、朝が患者さんにとって、とても重要な役割を果たしているということが分かりました。

朝のケア1つによって、患者さんの食欲が向上したり、一日の活動に変化が見られたり、回復にも大きな影響があるのです。

いつか朝のケアは一つのケアとしてモデル化され、どの病院でも自分らしい朝を迎えられるような日が来ると素敵ですね。

どんな人も、ずっとその人らしい朝を迎えられますように。

(注1)POMS:「緊張」「抑うつ」「怒り」「活気」「疲労」「混乱」の6つの尺度から気分や感情の状態をより確実に測定する心理検査。

文責:聖路加国際大学看護学部4年 松井晴菜

引用・参考文献:

・菱沼典子・川島みどり編集(2013) , 看護技術の科学と検証 第2版―研究から実践へ、実践から研究へ―,株式会社 日本看護協会出版, p129-p136

・大橋久美子(2010):術後急性期患者の生活リズムの自然回復を促進させるモーニングケアの開発―歩行介助を要する整形外科患者に対する効果, 2009年度聖路加看護大学大学院博士論文