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最悪のドラッグラグ「医療大麻問題」-若園和朗

2013年08月02日 18時49分 JST | 更新 2013年10月02日 18時12分 JST

全国脊髄損傷後疼痛患者の会

事務局 若園 和朗(わかぞの かずろう)

2013年8月2日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

皆さんは、「医療大麻問題」にお気づきでしょうか?もしかすると、それは最悪のドラッグラグなのかもしれません。

わが国で、大麻を医療用に使うことは一切できません。と言っても、「そんな馬鹿な、痲薬だって医者の処方があれば使えるじゃない。」と、大麻とオピオイド などを混同してしまい、信じてくれない人が多いのです。しかしそれは、残念ながら本当です。わが国の「大麻取締法」は、大麻から製造された医薬品を使用す れば、医者も患者も懲役刑などでもって罰すると定めています。(大麻取締法「第四条第1項第二号、第三号」)。

諸外国では、大麻の薬効成分である「カンナビノイド」が病気の治療に役立つことが認識され、医療のために使用できるようになってきています。しかし、わが 国は、法によって、大麻を医療用に使うことを禁じ、使えば懲役など重い罰を科すとしており、それを見直す動きは、ありません。あまりに乱暴な法律だと思い ませんか?このことを合理的に説明できる人がいるのでしょうか?これが、医療大麻問題です。

私の妻は平成14年の夏、交通事故により脊髄を損傷しました。その後、神経が傷ついた事によると思われる痛みが現れ、それはしだいに激しさを増し、今もその苦しみは続いています

この痛みは、「神経障害性疼痛」とか「中枢痛」などと呼ばれる難治性の痛みです。通常の痛み止めはもちろん、モルヒネなどオピオイドもほとんど効かないことが確かめられています

治療法を捜し求めるうち、大麻の薬効成分カンナビノイドは、この痛みの緩和に効果があるとされ、海外では治療に使われていることを知りました

更にカンナビノイドは、ヒトの神経や免疫系に存在し、その働きを調整する役割を担っていること、世界中が大麻の医療利用に関心を持っていることもわかりました

アメリカの連邦法は、現在も医療大麻を認めていません。しかし、オバマ大統領は、選挙運動の際に、「医療用にモルヒネが認められているのに大麻が認められ ていないのは筋が通らない」と語っていたそうです。この考え方は、アメリカ政府の方針となり、2009年2月エリック・ホルダー米司法長官は、「連邦政府 は医療用の大麻の取り締まりをやめる」と発表しています

カナダでは2001年に医療目的での大麻の所持と栽培を認める法律ができ、「脊髄損傷による激痛や継続的な痙攣」をもつ患者が医療大麻を使うことを認めています

大塚製薬は、大麻から抽出した成分で作られる「サティベックス」の開発などに関わっており、この薬品は、既にカナダなどでは認可され使用されています。しかし、日本では「大麻取締法」のため治験を行うこともできません。

「大麻取締法」以上に問題なのは、一般の国民が持っている大麻に対しての激しい嫌悪感と、法に対する無邪気な信頼感です。これは多くの誤解や無知、偏狭な 正義感からくるものと私は考えていますが、それに気づく機会もありません。そのため、大麻取締法の不備や、大麻の有効性に気付いた人がいても、そのことを 実名を出して堂々と述べるには大変な勇気がいる状況です。

また、こうした国民感情に配慮してか、マスコミの報道も偏っています。違法栽培した芸能人や学生を半ば興味本位で叩くような報道は多いですが、大麻の害や 有効性について、理知的に言及する姿勢は見られません。まれに、経済ニュースで、アメリカなどの医療大麻産業について触れることがあるだけです

私どもの患者会メンバーは、決め手となる治療法がなく、さまざまな治療を試しながら日々激しい痛みをしのいで生活しています。海外では、医療大麻や大麻製剤も、その選択肢の一つとして認める動きが広がっているのです。

大麻には害や副作用も当然あると思います。ですが、医師の管理の下、病気の治療に使えるようにするべきではないでしょうか。

 

この問題が広く国民に認知され、そして議論され、わが国の医療がよりよい方向に進むことを望みます。

-----以下、厚生労働省の見解(2009年)-------

大麻の医療での使用については国際的に様々な科学的議論があるところです。

現時点では「神経因性疼痛」や「求心路遮断通」に対して、「医療用大麻」を患者に施用することによる効果は明確ではなく国際麻薬統制委員会(薬物条約の事務局)は各国政府に対して大麻を「医療用大麻」として使うことを容認していないところです。

我が国においては、大麻取締法上、大麻の有害性に鑑み、大麻から製造された医薬品の施用は認めていないところです。

なお、海外では、現在、大麻に含まれる有効成分を化学的に合成して医薬品とするものがあります。我が国においては、この範疇の物質は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬としての取扱いとなりますが、医薬品として市場へ提供する企業はない状況です。

厚労省では、このような状況を踏まえつつ、対処することとしています。

厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課

Date: Thu, 20 Aug 2009 20:04:07 +0900

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なお最後に、医療問題を離れますが「大麻取締法」のため、わが国の伝統的な麻文化や産業が存続の危機に陥っていること、筆者はそちらの方面でも当事者であることを付け加え、この稿を終えたいと思います。

※この原稿は、筆者Webサイト内「みんなで考えよう医療大麻問題」を加筆・修正したものです。

(※この記事は2013年8月2日発行のMRIC Vol.191 最悪のドラッグラグ「医療大麻問題」より転載しました)