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組体操の必要性と安全性・危険性、対応策を誰が評価・策定するのか

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こんにちは、木曜日担当のPlus Action for Children 高畑です。

節分の2月3日、衆議院第一議員会館第会議室で開かれた、「組体操事故問題について考える勉強会」に参加してきました。
初鹿明博衆議院議員が中心となって開催したものです。

昨年11月には「学校管理下における重大事故について考える勉強会」と題する勉強会に参加しましたが、今回はこの中から運動会や体育祭で行われる「組体操」に焦点をあてたものとなっていました。

講師は名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授の内田良氏と、松戸市立病院救命救急センターの庄古知久氏です。
内田氏は日本スポーツ振興センター(JSC)の統計をはじめとする各種データや実例を基に、組体操における事故の実態がどのようなものなのかを解説されました。

庄古医師は、松戸市の救命救急センターを受診した患者さんの中から組体操によるものを抽出し、受傷機転や受傷部位、予後などを実例を交えながら説明され、また松戸市における組体操の状況を示しながら、現状の組体操の問題点を解決策を提示されました。
また、参加した地方議会の議員や国会議員、組体操でお子さんが事故に遭われた保護者の方などから発言があり、組体操の現状を学ぶ貴重な機会となりました。

今回の学習会における組体操に係る議論のポイントとして、
(1)組体操そのものの実施に係る事柄
(2)組体操事故に係る学校や教育委員会、行政の対応
の2つの柱がありました。

(2)については、事故の実際を正確に把握すること、そしてそれらの教訓に再発防止につなげること、組体操が孕む危険性等を多くの方に知らしめ共有化すること、等を阻む好ましからぬ現状(隠蔽体質等との指摘がなされていました)があるとのことで、これは組体操だけに留まらず、学校・教育の現場における様々な課題についても影響する課題だなと感じた次第です。

(1)については、そもそも組体操は学習指導要領に記載が無い種目なんだそうです。

ということは、サッカーや跳び箱など学習指導要領に定められている種目とは異なり、改めて「実施する必要性」と「実施することで生じるリスク」、「講じうるリスク軽減策」を評価、策定したうえで実施の是非を判断すべき種目だといえます。

「○○という教育効果が期待される」ことに対し、実施することで生じるリスクが適切に評価され、そのリスクの軽減策が実現可能性も含めて検討されたうえで、これらが比較考量されて「実施すべき」、「実施するならこのような対策を」、「実施しない」と判断されるものですよね。
ところが、この「実施する必要性」や「実施することで生じるリスク」、「講じうるリスク軽減策」は、十分に論じられているとはいえないのが現状ではないでしょうか。

東京新聞に、「<組み体操 事故なくせ> 義家文科副大臣に聞く」との記事が掲載されていましたが、安全配慮に欠いていたという認識は示されているものの、「危ないのは組み体操だけではない」、「仲のいい子、体力がある子同士で組み、余った生徒たちがペアを組まされることがあり得る。最上段にはバランス感覚がいい人間が上がらないといけない」、「事故が起きているのは組み体操だけでない。柔道、剣道などあらゆるところに規制を出さなければいけなくなり不健全だ」等と、「実施することで生じるリスク」、「講じうるリスク軽減策」を殆ど検証されていないままの現状を理解されていない様子が伺えます。

にも関わらず、「実施する必要性」については「全校生徒が羨望(せんぼう)のまなざし」、「私自身がうるうるきた」と何の指標にも基づかない主観だけの評価で「組み体操はかけがえのない教育活動で、悪いことではない」としています。

庄古氏が講演の中で「競技種目としてやっていけるのでしょうか」と表現されていましたが、組体操を学校教育の場で生徒が取り組む「競技種目」として捉えると、他の物と比して、著しくプリミティブな状況にあるという点に私自身は課題を感じます。

内田氏によると、組体操の危険性を指摘すると、「他の競技でも怪我はする」、「運動に怪我はつきもの」、といった反論があるそうです。
また、庄古氏は知人の整形外科医から「徒競走だって怪我をする。組体操を禁止するなら徒競走も禁止するのか」といった趣旨のことを言われたそうです。

いずれの反論も、程度問題や成熟度などを度外視した反論ですよね。

様々な競技が、リスクを軽減する、事故を防止するためのルールや道具の工夫、導入等を繰りかえしながら安全性を高める努力を重ねて現状に至っているのに対し、組体操はまだまだ程遠いといわざるを得ません。

また、例えばサッカーであれば日本サッカー協会が高温時の試合中の給水を徹底するよう各地のサッカー協会を通じて現場の指導者や保護者に伝達しているように、競技単位としてオーガナイズする主体が組体操には存在しないようです。

この点は内田氏にどこが主体となるべきかを尋ねましたが、やはり「文部科学省」である、と考えられているようでした。

残念ながら、文部科学副大臣が、「実施する必要性」や「実施することで生じるリスク」、「講じうるリスク軽減策」を十分に検討しないまま、自らの主観をよりどころに組体操問題についてインタビューに応えてしまっている現状では、現段階では「文科省」がオーガナイズを担う状況には無いと言えるでしょう。

文科省が担うのか、より現場に近い集団がその役割を担うのか、議論の余地はあるかと思いますが、このような体制やシステムを構築しないまま、組体操の禁止や規制だけで問題解決を図ろうとすれば、第二、第三の組体操が登場するのも時間の問題だと危惧します。

20人21脚、30人31脚といった競技、クラス全員で組む巨大ムカデ競争、競技が置き換わるだけで、「実施する必要性」や「実施することで生じるリスク」、「講じうるリスク軽減策」の検討が不十分なまま、危険な競技種目にが子どもたちが挑まされる状況自体は変わらないからです。

組体操問題は、学習指導要領に記載されていない競技種目が、その必要性や危険性等の検討を十分になされないまま教育の場に持ち込まれている一つの事例です。

その根底にある、「必要性と安全性・危険性、対応策を誰が評価・策定するのか」という課題を解決することが、子どもたちが晒されるリスクを軽減し、事故を防止することに繋がる一歩なのではないかと考えるものです。

木曜日担当・高畑紀一@一般社団法人 Plus Action for Children
2004年、当時3歳だった長男がインフルエンザ菌b型(Hib/ヒブ)による細菌性髄膜炎に罹患、「今晩一晩が山」という状況に陥る。
幸い、奇跡的に回復することができ、「運悪く稀な病気に罹り、運良く回復できた」と考え、それ以降は病気のことを考えない、思い出さないようにして日々を過ごす。
そ の後、ヒブによる細菌性髄膜炎がワクチン(ヒブワクチン)で防ぐことができる疾病であること、2004年当時、既に多くの国々でヒブワクチンが導入され子 どもたちが細菌性髄膜炎から守られていたことを知り、「運悪く稀な病気に罹った」のではなく、ワクチンで防ぐことのできる疾病から守ってあげることができ なかった、自分自身を含む大人たちの不作為で生死の淵を彷徨わせたのだと後悔する。
この経験をこれ以上、繰り返さないため、ワクチン後進国と揶揄されるわが国の状況を改善し、子どもたちがワクチンで防ぐことのできる疾病から守られる環境を整えるため、活動に参加。
その後、ワクチン・予防接種だけにとどまらず、子どもたちを取り巻く環境を改善するため、そしてそのために行動する大人を支援するため、「一般社団法人 Plus Action for Children」を設立、現在に至る

(2016年2月4日「ムコネットTwinkle Days 命耀ける毎日」より転載)