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予防接種の恩恵は(高畑紀一)

2014年10月24日 01時05分 JST
時事通信社

こんにちは、木曜日担当のPlus Action for Children 高畑です。

インフルエンザシーズンを控え、インフルエンザワクチンの接種に係るニュースや情報が増えてきました。

インフルエンザワクチンは、ヒブワクチンやMRワクチン(麻しん・風しん)等と異なり、接種したから概ねインフルエンザに罹らなくてすむ、というものではありません。

接種してもインフルエンザに罹患する可能性はそれなりにあります。

「ワクチン打ったけど、インフルエンザに罹ったよ」という話も毎年毎年耳目にします。

個人の実感では効いているのか効いていないのか、わかりにくいのがインフルエンザワクチンです。

そんなインフルエンザワクチンが話題の入り口になっているからでしょうか、「ワクチンなんて、打ったって意味無いじゃん!」的な意見も少なくありません。

先述のように、ワクチンにも様々な種類がありそれぞれに有効性も安全性も異なるわけですから、十把ひとからげに「ワクチンなんて」と言い切れるものではないですよね。

まあ、単純な二分法で「ワクチン」は「効かない」とか、「無駄」とか「危険」と言い切っている情報は、それだけで無視しちゃえば良いと私は思っています(もちろん、絶対に安全とか100%効くといった言い切りも、無視して良いですよね)。

先日、webを眺めていたところ、ちょっと気になった意見がありました。

「健康な体にワクチンを打って、副作用で体調を崩すんだから、ワクチンにはリスクしかない」

といった趣旨のものでした。

もう、このブログの読者の皆様ならお気づきですよね。

この意見には、ワクチン接種のリスクと比較すべきもうひとつのリスクが抜け落ちているのです。

予防接種は何を目的に行うのか、といえば、

「ワクチンで防ぐことのできる疾病(VPD:Vaccine Preventable Diseases)に罹患するリスクを軽減する」

ことにあります。

予防接種についてリスクを論じるのであれば、接種するリスクと接種せずにVPDに罹患するリスクの双方を勘案しなければいけません。

これらは互いに不可分なリスクなので、一方のリスクだけを避けてもリスクをゼロするというはできないことなんですよね。

先の意見には、この「接種しないリスク=VPD罹患のリスク」が抜け落ちているのです。

確かに、予防接種は体調が良いときに行うもので、その時点で生じるのは「接種するリスク」だけですし、どうしてもそちらのみ目が向きがちです。

一方、「接種しないリスク」はそれ以降の生活に常に付きまとうリスクなのですが、接種の時点ではなかなか想像し難い面があります。

ましてや、「VPDに罹患しない」という予防接種の恩恵は、健康な状態で接種してその後も変化を来たさない、という形でもたらされますので、とても実感しにくいものです。

わかりやすい「接種するリスク」と想像することが容易ではない「接種しないリスク」、そして実感しにくい「接種する恩恵」。

個人の実感ではなかなか効果を実感しがたいインフルエンザワクチンを念頭に予防接種について考え始めると、余計、接種しないリスクと接種する恩恵は見えにくくなるのかも知れませんね。

繰り返しになりますが、「予防接種」、「ワクチン」といっても、防ぐことが期待される疾病も違えば、ワクチンの種類も有効性も安全性も異なります。

同じ疾病を防ぐためのワクチンであっても、異なる製品というのも珍しくありません。

これらを一括りに論じることは、個々のワクチン、予防接種を受けるか否かという判断に、何も寄与しない議論です。

個々のワクチンについて考えるためには、それぞれが防ぐ事を期待されるVPDについての知識が必須です。

インフルエンザシーズンを控えたこの時期だからこそ、今一度、VPDについて情報を得ていただき、一つ一つのVPD、ワクチンについて理解を深めていただければと思います。

【市民公開講座のお知らせ】

■11月9日(日)

市民公開講座「ママ&パパが知っておきたい『防げる子どもの感染症』-すぐに役立つ、知って安心の最新ワクチン事情」

木曜日担当・高畑紀一@一般社団法人 Plus Action for Children
2004年、当時3歳だった長男がインフルエンザ菌b型(Hib/ヒブ)による細菌性髄膜炎に罹患、「今晩一晩が山」という状況に陥る。
幸い、奇跡的に回復することができ、「運悪く稀な病気に罹り、運良く回復できた」と考え、それ以降は病気のことを考えない、思い出さないようにして日々を過ごす。
その後、ヒブによる細菌性髄膜炎がワクチン(ヒブワクチン)で防ぐことができる疾病であること、2004年当時、既に多くの国々でヒブワクチンが導入され子 どもたちが細菌性髄膜炎から守られていたことを知り、「運悪く稀な病気に罹った」のではなく、ワクチンで防ぐことのできる疾病から守ってあげることができ なかった、自分自身を含む大人たちの不作為で生死の淵を彷徨わせたのだと後悔する。
この経験をこれ以上、繰り返さないため、ワクチン後進国と揶揄されるわが国の状況を改善し、子どもたちがワクチンで防ぐことのできる疾病から守られる環境を整えるため、活動に参加。
その後、ワクチン・予防接種だけにとどまらず、子どもたちを取り巻く環境を改善するため、そしてそのために行動する大人を支援するため、「一般社団法人 Plus Action for Children」を設立、現在に至る。

(2014年10月23日「ムコネットTwinkle Days 命耀ける毎日」より転載)