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倍率4000倍!スポーツ業界に新卒採用は必要?

2013年12月23日 00時52分 JST | 更新 2014年02月21日 19時12分 JST

12月も半ば、師のマラソンも後半戦に突入した今日この頃。風邪気味の体に鞭打ち飲んだくれていた私は今年初のDL(Disabled List=故障者リスト)入りし、今日からスタメン復帰です。ダメな大人です。

ダメな大人はさて置き、12月といえば学生の就職活動が忙しくなってくるシーズンかと思いますが、どうやらNPB(日本プロ野球機構)が新卒採用を行っているようです。はじめて見たのですが、今までもやっていたのでしょうか?

また、横浜DeNAベイスターズも新卒採用を行っています。「これまで、ある種閉鎖的と感じられたスポーツ業界の人材開発において、継続的に若い人材を確保し、育成することは、我々プロ野球球団の大きな社会的義務であると感じてきました」とのこと。こちらは昨年からはじめたそうです。

スポーツ業界では、あまり新卒採用が行われていません。マーケットサイズが小さく専門性が比較的高いニッチな業界であり、また大企業と違って悠長に新卒を育てている余裕がある組織が少ないからでしょう。ちなみに昨年はじめて新卒採用を実施したベイスターズは、応募者約4000名に対し採用1名!脅威の倍率4000倍です。

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最近は日本でもスポーツマネジメントを学べる(カリキュラムを設けている)大学が増えてきて、スポーツ業界で働くことを志す学生も増えてきているように感じます。学生、というか就業経験のない人への門戸が非常に狭いこの業界において、NPBやベイスターズのように新卒採用や学生インターンシップを積極的に導入することは、少なくても求職者サイドにとっては良いことだと思います。

ただ、スポーツ業界の発展という観点で考えると、新卒よりもまずは中途で他業界から優秀な人をたくさん獲れるようにならないといけないのだろうなと思います。

音楽業界には音楽が好きな人が、建築業界には建築が好きな人が集まるように、日本のスポーツ業界にはスポーツ好き、というか"元スポーツマン"が非常に多いです。「体育会でバリバリやってました」「選手は無理だったので、違う形で大好きなスポーツに関わりたい」みたいな人がとても多いです。まあ、当然といえば当然です。

で、スポーツの仕事をする以上はスポーツが好きに越したことがないとは思うのですが、そういう人ばっかりなのもどうかなと、個人的に思います。

スポーツをいつも身近に感じて生きてきた人ばかりが集まってビジネスをしても、スポーツが身近でない人の気持ちがわからないのではないか、そして無意識のうちに排他的になってしまうのではないか、という気がします。実際、日本のスポーツ業界が狭く閉鎖的である一因は、このように"人種"が偏っていて多様性がないことであるように思います。

もっと"スポーツ一筋"ではなかった人たちが外からこの世界に入ってきて、色々変えちゃって欲しいなと。

具体的には、たとえば外資系金融を渡り歩いてきたようなビジネスエリート(楽天の立花陽三球団社長がそうですね)がマネジメント層にバンバン入るとか、あるいはスポーツとはかけ離れた異分野で活躍してきたクリエイターを球団の広報・PR担当として引き抜くとか、そういう人材の流動性(流入性?)がもっとあると良いのになと思います。アメリカだと、それこそ『マネー・ボール』でビリー・ビーンに引き抜かれた統計オタクのように、一見畑違いの人たちがスポーツ界に結構入ってくる印象があります。スポーツ業界に限らず、単にアメリカの方が労働力の流動性が高いというのもあるでしょうが。

スポーツファンの気持ちがわかる人たちだけでなくて、「スポーツファンじゃない人」の気持ちがわかる人も必要だと思います。特に、マーケットの裾野を広げるためには。

日本のスポーツ業界では異業種からの人材流入がまだまだ少ないと思うのですが、ボトルネックになっているのはズバリ、お金だと思います。

日本のスポーツ業界、特に現場の組織は一般的に(他業界と比べ)あまり待遇が良くないのが現状です。「お金にはならなくても好きだから働く」という人が多すぎることもあるでしょう。

「儲からないけどやりがいのある魅力的な仕事だよ」は学生相手なら通用するかもしれませんが、他業界から優秀な人材を引っ張ってこようと思ったら通用しません。彼等は労働力市場における自分のマーケットバリューを理解しているからです。

読売ジャイアンツやニューヨーク・ヤンキースを見ての通り、優秀な人材を穫るための最重要項目は給料です。「スポーツビジネスには夢がある」とかいう子供騙しのような情緒的な話だけでは、優秀な人材は集まりません。評価と誠意は、言葉と態度だけでなく待遇で示さなければなりません。

優秀な人材が増えれば増えるほど、長期的にはスポーツ業界がより魅力的になる可能性は高まるはずです。そうしたら「スポーツビジネスには夢がある」と、より自信を持って言えるようになるはずです。そうなって欲しいなと個人的に思います。

これはまあ業界に携わる人間のポジショントークかもしれませんが、スポーツ業界は往々にしてもっと人材に投資すべきだと思います。そうしたくてもできない現場の事情もあるとは思いますので、あまり無責任なことは言えませんが...

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新卒採用も良いのですが、学生のうちから「スポーツ業界で働きたい」と思うような人を集めても、なかなか新しい風は吹かない気がします。もちろん、スポーツが大好きで情熱が持った人たちが沢山いることは大切なんですけど、だからこそ同時にちょっと冷めた人、冷めた視点が必要というか。

スポーツ業界でもっと"畑違い採用"が増えて欲しいなと思います。

(この記事は、2013年12月18日の「Splash Hits」より転載しました)

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