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内野ムネハル Headshot

全てのクリエイターはPerfumeを目指すべきである

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確信犯的な悪ノリタイトルはさて置き。

12月25日、東京ドームに行ってきました。Perfume初のドームツアー「Perfume 4th Tour in DOME『LEVEL3』supported by チョコラBB」の最終日です。

詳細はナタリーさんのレポートを読んでいただくとして。もう素晴らしいライブでした!実は2ヶ月前くらいに突如Perfumeにハマった僕にとって今回がデビュー戦だったのですが、ファン歴の浅さに引け目を感じることもなくたっぷり楽しませてもらいました。

僕は音楽評論家ではないのであまり気の利いたことは言えませんが、ファン歴2ヶ月の自分でもどっぷり楽しめた理由のひとつが、「最新アルバム『LEVEL3』の世界観を(ファンと)共有する」というコンセプトが強く打ち出されたライブであったこと。前半のセットリストはほぼアルバム通りの曲順で、純粋に良い作品(アルバム)の世界観をそのままライブで表現した、という感じでした。彼女等の歩んできた道とかに感情移入しないと楽しめないような、そういうコンテクストがあまりなかったので、僕のようなルーキーでも純粋に目の前のパフォーマンスを堪能できました。

この日最大の目玉だった中盤の『Party Maker』は、もうただただ圧巻。バッキバキのサウンド、上下左右に動くリフト上で3人が繰り広げる激しいダンス、ドーム全体を覆い尽くす七色のレーザー、凝りに凝った映像演出... これぞ日本が世界に誇るエンターテイメント!今後、外国人に日本の自慢をするときは、この日の『Party Maker』の映像を見せることにします。

さて、最高のパフォーマンスを見せてくれた3人が素晴らしいプロフェッショナルであることは言うまでもないのですが、コンサートの枠に全く収まらないスーパーエンターテイメントを作り出した各分野のクリエイターの方々も素晴らしい。あの振付けや映像演出は、Perfumeの世界観を堪能する上でなくてはならないものです。

Perfumeの世界観を支える様々なクリエイターたちの中でもその中核を担うのが何といっても、サウンドプロデュースを手掛ける中田ヤスタカ氏です。

映画のサントラから自身のユニットまで、作曲家として実に幅広く活動しているヤスタカ氏ですが、中でもPerfumeは「プロのクリエイター・中田ヤスタカ」にとっての最高傑作なのではないかと個人的に思います。

先日、『Huffington Post Japan』に記事を転載いただいたところ脅威の8000いいね!を叩き出した「全てのクリエイターには『中田ヤスタカにとってのCAPSULE』が必要である」にも書きましたが、ヤスタカ氏にとっては自身のユニット、CAPSULEの活動こそが、作曲家として最も自由な創作活動を行っている場所です。ヤスタカ氏はCAPSULEを「人から依頼されてつくるのではなく、自分のアイデアを提案し、実行する場」「アマチュア的な砦」と表現しています。

一方でPerfumeのサウンドプロデュースは、ヤスタカ氏にとって「純粋に自分が作りたいものを作る」活動ではありません。あくまでPerfumeという枠の中で、商業的な成功を前提に、曲を作っているはずです。本当に作りたい音楽を作っているCAPSULEとは違います。

それでも、プロのクリエイターとしてヤスタカ氏が最も誇るべき作品、誇っている作品はPerfumeではないかと思います。それは、ただ売れているからというのではなく、彼が「かっこいい」と考えている、しかし世の中ではあまりポピュラーでなかったものを、世の中に広く「なじませた」からです。

「全てのクリエイターには〜」でも紹介した日経ビジネスのインタビュー記事でヤスタカ氏は、以下のように語っています。

僕は新しい楽器を、テクノロジーを、音を、そんな風に「なじませる側」にまわりたいんです。最初にピアノをなじませた誰かのように。 ただし、「別のこと」を「増やす」ためには、キャッチーでなければダメですよね。つまりより多くのひとの心をつかむような説得力がなければ増えていかない。


「今まで興味なかったような世界のものだけど、これは面白い」

そんな風に、聴き手に積極的に選んでもらってはじめて認知される、つまりなじんでいく。だからキャッチーな音楽を創ろう、と思いました。

「なじませる」「キャッチーな音楽を創る」。この2つのキーワードに、ヤスタカ氏の美学というか、何を目指しているかが垣間見えます。

今でこそ東京ドームを単独で2日間埋めてしまうPerfumeですが、彼女等はもともと"ポップ"な存在ではありませんでした。アイドルとしても特別魅力的とは思えない(失礼)女の子3人組が、決して売れ線ではないピコピコの電子音が鳴る楽曲をバックにエフェクトかかりまくったボーカルで歌うという様は、J-POPのメインストリームから見たら実に奇抜だったと思います。

ただ、Perfumeの曲はすごく「キャッチー」でした。「変な曲だな」とただ聴き流されるのではなく「何だコレ?」と興味を持たせる音だったと思います。これは今だから言えるのかもしれませんが、何かキッカケさえあれば爆発的に広まり得るパワーを秘めていました。

ヤスタカ氏は「女の子3人組のアイドルグループを売り出す」という枠の中で、自身が考える「かっこいい」「面白い」音楽も可能な限り追求し、しかしマスターベーションには走らず「キャッチー」な音楽を作り、結果的に世の中に「なじませた」。これぞヤスタカ氏が天才たる所以だと思います。

あ、でもね。キャッチーであろう、というのと、ポップであるというのは違うと思っています。ポップというのはそれまで大衆が受け入れていなかったものを、誰かが広めてポップにした、ということですから。


キャッチーというのは、どんな少数派の種類のものでもそのきっかけを作り出すパワーということです。

ヤスタカ氏は曲を作るときに「リスナーのことは考えない」そうですが、自分の作品が世の中に出たときにどういう現象が起きるかということを、すごく意識していると思います。そのことは、インタビューを読んでもよくわかります。自分が作りたい音楽を作りつつも、それが自分の世界で完結するわけではなく、あくまで世の中の反応と相まって完成されるのです。

よくあるインディーズバンドみたいに「俺は別に売れなくてもいい。俺が好きな音楽をやる。わかるやつだけわかればいい」というスタンスもアリです。それは完全に個人の自由です。

でもそれって、世の中との繋がりが少ないという点で、あまり面白みがないなあと個人的には思います。インパクトの大小ではなくて、小さくても良いから何か面白い変化をもたらすかどうか、ということです。

僕も記事を書いたりしていて思うのですが、やっぱり世の中から反響があった方がクリエイターとしては断然面白い。反響というか、どんなに小さくても誰かの心を動かしたな、という実感というか。一度この味を占めると、どんなに自分で良いと思うものを作っても世の中にスルーされっては退屈に感じてしまうんですよね。

かっこいい、とたくさんのひとに聴いてもらえる、は、両立する。


僕はそう信じています。

ヤスタカ氏にとってPerfumeのプロデュースは、まさに「かっこいい、とたくさんのひとに聴いてもらえる」の両立を高いレベルで実現させた仕事であり、そこにはCAPSULEで行っている自由度の高いアマチュア的創作活動では得られない興奮というかゾクゾク感というか、そういうものがあるのではないかと思います。

マスターベーション的に「かっこいい」を追求するのではなく、かといって「かっこいい」を犠牲にして大衆受けに走るのでもなく、その両方を追い求める。メチャメチャ難しいけど、これができたらメチャメチャ刺激的だろうなと思います。

(この記事は、2013年12月28日の「Splash Hits」より転載しました)