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「良い情報があれば良い記事が書ける」は甘え

2013年12月18日 00時07分 JST | 更新 2014年02月16日 19時12分 JST

ついつい挑発的なタイトルをつけてしまうのは、古巣livedoorニュースの血が僕の体内に流れているからであって、決して僕の性格が悪いわけではありません。

先日、横浜DeNAベイスターズの球団公式ドキュメンタリー映画『ダグアウトの向こう 2013』のプレミア上映会に行ってきました。正直に告白すると今年ベイスターズ戦1試合も見ていないんですけど、泣きました。すごく良い作品でした。

実は今回、先日『日刊SPA!』に寄稿した「「メジャー流」映画製作に横浜DeNAが挑戦」という記事を球団関係者の方にお読みいただいたことがキッカケで、上映会にご招待いただきました。記事は球団公式facebookページでもご紹介いただきました。ありがとうございます。

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さて、上映会の前後にチームスタッフや選手の方々と色々お話させていただいたのですが、何人かの方から「(作品を)まだ観ていないのに(記事を)よく書けましたね」と言われました。

お褒めの言葉だとしたら素直に嬉しいのですが、正直「えっ?」という感じでした。「そりゃ(別に作品を観なくても)書けますよ!」というのが僕の正直な思いだからです。

たとえば作品のレビューを書くんだったら当然、観ないと書けません。でも、僕が書いた記事は「DeNAがこんな映画を作った。メジャーリーグでは既に似たような事例がたくさんある。このトレンドはどんどん加速していくだろう」という話です。「DeNAがこんな映画を作っている」という情報と「メジャーリーグではこんな映像作品が作られている」という情報は、ネットを見るだけでも充分過ぎるほどあります。

僕はそれらの情報を取捨選択し、ひとつのストーリーとして自分の言葉でまとめただけです。この記事を書くために、別に作品を観る必要なんて全然なかったのです。

特に組織の広報担当など「情報を提供する」立場にいる方々は、「良い情報がないと良いコンテンツは作れない」という思考になりがちなのではないかと思います。が、実際は全然そんなことありません。逆に、情報が豊富だからといって魅力的なコンテンツが作れるとも全く限りません。

良いコンテンツを作るために重要なのは、情報量よりも"切り口"です。

「良い情報がないと良い記事が書けない」というのは「高級食材がないと美味しい料理が作れない」というのと同じです。食材も大事ですが、もっと重要なのは調味料のバランス、味付けであり、安い具材でも美味しい料理は作れます。使える食材が限られていても「これにこのスパイス使う?!」みたいな切り口で勝負できるわけです。

もちろん、良い食材がないと作れない料理もあります。が、「食材がない」と嘆いたところで何もはじまりません。限られた食材でも良い調理ができる人に、やがて自然と良い食材が集まってくるはずです。冷蔵庫にあるものを駆使して美味しいご飯を作れる主婦は模範的です。

メディアの世界でいえば、限られた情報でも良い記事を書く人、良いコンテンツを作る人に、情報が集まるはずです。「せっかく良い食材(情報)を仕入れたので、この人に料理(活用)してもらいたい」となるはずです。少なくとも僕はそう信じて、ひたすらアウトプットを生み出すことに集中しています。まだキャリアが浅く人脈も実績もない僕は、アウトプットで認めてもらうしかないからです。

情報がないと書けない。取材しないと書けない。 経験しないと書けない。そんなことはないです。もしコンテンツを作る側の人間がそう考えていたら、それは"甘え"だと思います。

色々知っているとか、人脈があるとか、そんなことはユーザー(情報の受け手)にとってはどうでもいいことです。メディアの人間しか知り得ないようなネタがあると、それをついつい(自慢気に)書きたくなってしまうものですが、それが良いコンテンツ(ユーザーにとって魅力的なコンテンツ)かというとそうとは限りません。たとえ特ダネがあってもそれが記事のパーツとして上手く機能しないのであれば、使わない勇気を持つべきです。大事なのは最終的なアウトプットが面白いかどうか、それだけです。

情報を仕入れただけで、取材をしただけで満足して良い仕事をした気分になってしまう書き手は、正直少なくないと思います。でも、情報があるから、ちゃんと取材をしたからといって良いコンテンツを作れるとは限りません。逆に、知り過ぎると書けないこともあります。

ちなみに、冒頭で紹介した記事は「作品を観ずに書いた記事」ですが、作品を観た上で書いたのがコチラの記事「横浜DeNAは「映画化」で強くなる」です。これは、作品を観たからこそ書けることを書いたつもりです。といっても、具体的な映画の内容とか選手のコメントとか自体は大して重要ではなく、作品を観て球団関係者や選手の話を聞いたことで「新たに感じることが増えた」「新たな視点に気付いた」ことが大きいと思っています。

情報そのものには価値はありません。色々知ることで引き出しや切り口が増えることが重要なのです。

(この記事は、2013年12月10日の「Splash Hits」より転載しました)

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