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インターネットはマスメディアである

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 先日、「日本人バックパッカーに多い『Googleボケ』」という記事を書いたところ、facebookで46,000以上のLike!がつきました。一生分のLike!を使い果たした気分です。読んでいただいた方、どうもありがとうございました。

 ハフィントンポストさんの「マスメディアぶり」を大いに実感したわけですが、今回に限らずWebでバズるコンテンツを出していると、よく思うことがあります。それは「Webはマスメディアである」ということです。

 Webはよく、オールドメディア(新聞、TV、ラジオ等)に対するアンチテーゼとして捉えられます。オールドメディアをディスる"マスゴミ"という言葉は、その象徴です。

 しかし、最近のインターネットはマスメディア的性質が極めて強く、具体的にはテレビによく似ていると感じます。本来は「自分から情報を探しにいく」能動的なメディアだったWebが、どんどん「流れてくるものを見る」受動的なメディアへと変化しているのです

 「流れてくるものを見る」といえば、まず思い浮ぶのはツイッター、facebookをはじめとするソーシャルメディアのタイムラインでしょう。

 ソーシャルメディアは今や、多くの人々にとってポータルサイトとなりつつあります。ツイッターやfacebookを1日数回チェックする人は少なくないと思います。昔は誰もが家に帰ったら「とりあえず」TVの電源をつけていたように、電車に乗ったら「とりあえず」ツイッターやfacebookを開き、流れてくるポストを眺めます。

 この「とりあえず」感は、とてもテレビ的だと思います。何か具体的に知りたいことや見たいものがあるわけではなく、でも何となくリモコンのスイッチを押すように、何となくツイッターやfacebookを開くのです。それは能動的なようで、極めて受動的な行為です。

 また、ソーシャルメディアに限らず、今日のインターネットは 「流れてくるもの」で埋め尽くされています。こちらが探すまでもなく、欲しいものを勝手に教えてくれるAmazonのリコメンド機能。個々人に最適化されたリスティング広告。コンテンツをパッケージ化してくれるキュレーションサービスも、Webのマスメディア化に拍車をかけています。

 ご存知の方も多いと思いますが、GunosyというWebサービスがあります。各個人のソーシャル行動を分析して、その人が興味を持ちそうな記事を自動で選んで送ってくれるという大変気が利くサービスなのですが、僕は3日で見なくなりました。自分好みの記事が毎日決まった時間に送られてくるという何とも受動的な感じが、あまりに退屈だったのです!

 今日のインターネットは、自分から何かを探しに行こうとしても、結局ほとんど「流れてくるもの」で埋め尽くされてしまうのです。

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 Webで面白いのは、ニッチコンテンツです。

 Webには、TVや新聞が作れない様々なニッチコンテンツがたくさん存在します。"マスメディア"まではいかないもののミドルスケールのメディア、さらに無数の小さいニッチコンテンツが存在し得ることが、Webの魅力です。

 インターネット黎明期は、こうした危ういニッチコンテンツこそがWebのメインストリームでした。当時はGoogleの検索エンジンもAmazonのリコメンド機能も優れたキュレーションサービスもなかったため、インターネットは無法地帯であり、情報のジャングルでした。頑張って探しても、全く期待を裏切るコンテンツが目の前に現れることが日常茶飯事でした。

 何かを調べるときには不便ですが、しかし知的好奇心旺盛な人々はその不自由さを楽しめました。昔のインターネットは、今のようにユーザーに優しくなかったからこそ"偶然の出会い"に満ちていました。Webは"偶然の出会い"を楽しめる変人たちのものであり、だからこそエッジの効いた魅力的なコミュニティだったのです。

 その後、インターネットのインフラは急速に整備されました。「世界中の情報を整理する」Googleの検索エンジンが生まれ、Amazonのリコメンド機能が生まれ、Yahoo!Japanのようなポータルサイトが生まれ、そしてソーシャルメディアが生まれました。Webはビジネスとなり、TVが視聴率を追い求めるように、WebはPV至上主義になりました。

 インターネットは誰もが楽しく使える立派なメディアとなり、黎明期のカオス感、アンダーグラウンド色は失われ、人々が「受動的に」情報を消費することができるマスメディアになりました。ジャングルの木々は焼き払われ、今や立派な高層ビルやショッピングモールが立ち並んでいるのです。

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 Amazonがあっても本屋に行くのが楽しいのは、本屋には"偶然の出会い"があるからです。棚を眺めてお目当ての本を探していると、ふと全然違う本が視界に飛び込んできて、手に取ってしまうことがあります。これこそがAmazonにはないリアル本屋の価値です。

 これは少々極論ですが、僕は「世界中の本屋はジャンルや著書別に整理して並べるのをやめて、全部テキトーに並べれば良い」と思っています。そうすれば、お目当ての本を買うためだけに来るお客さんは来なくなり(全員Amazonで買いますよね)、本屋には無駄を惜しまず偶然の出会いを楽しみに来る変人だけが集まるからです。本屋は変人が集う現代のサロンとなり、エッジの効いた最高に魅力的なコミュニティが生まれるでしょう!

 今日のインターネットには、良くも悪くも"偶然の出会い"がほとんどありません。自分で情報を取捨選択しているつもりでも、実際は流れてくるものを消費しているのです。Webアルゴリズムの基本概念である"最適化"とはまさにそれを目指しているのですから、当然です。

 毎日ネットばかり見ているのは、毎日TVのワイドショーばかり見ているのと何ら変わりません。もっと"偶然の出会い"を求めてジャングルに飛び出しましょう!

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(2014年5月1日「Splash Hits」より転載)

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