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My Eyes Tokyo Headshot

ダイバーシティの風を、東京にも吹かせたい

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7月4日のアメリカ独立記念日にちなみ、かの国で自らの進むべき道を決めた日本人をご紹介しています。ニューヨークで活躍する日本人バイオリニストの大曲翔さんに続き、今回は主に東京で活動する国際交流団体"The International Center in Tokyo"(ICT)代表の加藤翼さんです。

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加藤さんとの出会いは今から約2年前。2014年9月初めに開催した"セルビア洪水被災地復興チャリティイベント"で、私たちと共催させていただいたのが、加藤さん率いるICTでした。

そのイベントを行うにあたり、準備期間わずか1ヶ月の間に私たちは何百通ものメールやメッセージのやり取りを行いました。普通それだけの交流をしていたら、ほんのちょっとの違和感は生じるもので、それでも妥協しながら前に進んでいくのが大人の流儀ですが、加藤さんとは1ミリたりとも違和感を感じませんでした。

それもそのはず、加藤さんがICTを立ち上げたきっかけや、ICTが掲げる目標が、私たちMy Eyes Tokyo(MET)と多くの面で共通していたのです。

今回は、私たちMETと完全な"同志"である加藤さんの、東京とニューヨークという世界2大都市で繰り広げられる、"ダイバーシティ(多様性)"をめぐるTrue Lifeをご覧下さい。

■ "日本ファン"を増やしたい


私たちの活動の目的は、東京にいる外国人と海外の文化に興味がある日本人が交わる場を作ることです。そのために、在住外国人向けに日本文化を知っていただくクラスやワークショップを開くわけですが、私たちはその先のことも見ています。つまり彼らが母国に帰った後、ご友人やご家族に日本のことを話すことで"日本ファン"が増える、そのきっかけ作りをしたい。そんな思いで日々動いています。

私たちの活動に参加してくれる外国人は、多くは若い人たちで、アニメをきっかけに日本に来たような人たちが多いです。他に日本で仕事をしている人や英会話講師、メーカーの日本駐在員の奥様方もいらっしゃいます。一方で日本人は海外在住経験がある人、留学を考えている人、英語力を伸ばしたいとお考えの方々ですね。

今のような活動を始めたのは、私の母が大きく影響していると思います。母はかつて日系航空会社のフライトアテンダントで、私を産んだ後に退社して自宅で英会話を教えていました。私は帰国子女ではないし海外留学経験もありませんでしたが、そのような環境が幸いして、私は小さな頃から英語には触れることができました。そして次第に海外にも興味を抱くようになりました。

■ キャリアを捨ててニューヨークへ



ある日、政府系金融機関に勤める私の夫にニューヨーク赴任の話が飛び込んできました。当時私は旧財閥系銀行に勤めていましたが、彼と共に現地に行くことに決めました。

その理由は2つありました。「どうしても海外に住んでみたかったから」、そして「海外で親友を作りたかったから」です。"親友"と呼べるほど深い仲を築くことができる友達を、英語でのコミュニケーションを通じて作れるまでになりたいと思いました。当時は外国人の友達がいなかったんです。しかも夫は帰国子女で海外経験豊富だったから、そんな彼のことも海外に住めばさらに分かるのではないか……夫のニューヨーク駐在は、それらが全て可能になるチャンスだと思いました。

本当のことを言えば、私は銀行員ではなく外交官になりたかった。外交官として日本のことを海外に伝えたり、海外の人と共に活動するような仕事がしたいと思っていました。だから私は、キャリアを捨てて夫と一緒に日本を出ることに躊躇はありませんでした。

■「日本語を話さなくちゃ……」



夫のニューヨーク駐在期間は2年。私はそのうちの最後の半年を、現地の大学に通ってネイティブの人たちと学ぶことに充てようと決めました。先ほどもお話したように、母が自宅で英会話教室を開いていたから、英語を聞くことには慣れていました。でも会話には自信はありませんでした。だから一秒たりとも時間を無駄にしたくないと思い、そのために必要な英語コミュニケーション力を身につけるために動き始めました。わずらわしい"駐妻"(駐在員の奥様)の世界には、ほとんど関わりませんでした。時間の無駄でしたから(笑)

ニューヨークで私が英語を勉強したのは、無料のESL(English as a Second Language:第2言語としての英語)クラスでした。このような学校はニューヨーク中にいくらでもあって、私は3つのESLクラスに朝・昼・晩通う生活を半年ほど続けました。それ以降は1つの学校に絞ったんですけどね。

ニューヨークでは、夫と話す以外は完全英語漬けで、日本人の友達は作りませんでした。現地の日本語メディアにも一切触れず、夫が帰宅したら「ああ、日本語話さなくちゃ」って思ったほど(笑)だけどなかなか英語力は思うように伸びませんでした。

■「しゃべらないなら帰れ!」



当時の私は、独り言を英語で言っていたほどでしたが、通っていた学校では誰とも何も話さない人でした。そんな私に、すでにニューヨークで仕事もしているクラスメイトのコロンビア人男性が言いました。

「君さ、クラスに来ているのはいいんだけど、何でしゃべらないの?あなたがいる分、他の人がこのクラスに参加できないんだよ。だったらその席を、他にこのクラスに参加したがっている人に譲った方がいいよ」

私はしゃべりたかったんです。元々がおしゃべりでウルサいタイプですから(笑)でも皆の英語を聞き取ることはできても、自分の意見を言うのに時間がかかりました。話そうとしても、彼らのバーッと話すスピードに圧倒されたり、日本人ぽく文法を気にして話せずにいました。

でも「これでめげていたら、終わりだな」と思いました。だから私は、翌日から自分を変えました。授業中は、何でもいいから挙手をして、言葉が出てこなくて「あ〜〜」としか言えなくても、とりあえず一日2回は何か発言しようと思いました。英語が下手でも、ゆっくりと話せば人は耳を傾けてくれるもの。そしたら私に「帰れ!」と言ったクラスメイトも私を認めるようになったんです。私にも意見があり、きちんと自分を持っている人なんだと感じたからでしょうね。第一、ニューヨークの街には下手な英語をしゃべっている人なんてたくさんいますから(笑)

■ "学ぶ"から"使う"へ


そんなふうに格闘するうち、ニューヨークに来て半年ほど経って急に英語力が上がりました。私も話せるようになったし、ニューヨーカーの話す速い英語にも慣れてきました。

その段階で、私は英語を"学ぶ"ことから卒業して、英語を"使う"ことにシフトしようと考えました。英語を使って何かをしようと思ったのです。ESLクラスで仲良くなった人たちを通じ、フランス・韓国・中国・パナマ・トルコ出身の5組の夫婦と仲良くなりました。私が中心になってパーティや小旅行を企画したり、一緒にショッピングやカフェに行ったりしました。

思えばそれらが、今の活動の原点かもしれません。大人になってから親友と呼べる人たちができた、しかも全く国籍や育ってきた環境が違う人たちと……そんな素晴らしい体験をさせていただいたニューヨークでの生活が、夫の駐在期間満了と共に終わり、私は日本に帰国しました。

■ NYでの体験を東京でも



帰国後、私は抑え切れない気持ちを爆発させるように"The International Center in Tokyo"(ICT)を立ち上げました。ニューヨークから帰って来てわずか3週間後、まだ船便で日本に送った荷物が届いていないのに、です(笑)私がニューヨークのESLのクラスや学校の放課後、休日などにいろんな国の人たちとしたことが東京でも体験できるようなプラットフォームを、いち早く再現させたかったのです。

特に、私にはお手本がありました。日本帰国の半年前まで通っていたESLで行われていた、アメリカの文化や歴史を先生の目線で面白おかしく伝えるクラスでした。今の時代らしく、先生が集めてきたYouTube動画や記事をプロジェクターに映し、私たち生徒はそれらを見てディスカッションしました。

それまで教科書中心の英語講義しか経験の無かった私にとって「こんな面白い英語の学び方があるんだ!」と、すごく新鮮でした。英語を学ぶというよりは、アメリカを学ぶ感じです。それに倣って私は、日本に住んでいる外国人に"今の日本""リアルな日本"を伝え、彼らからのフィードバックをいただいて私も学びを得る、そんなクラスを開きたいと思いました。

ICTを立ち上げて一番最初のクラスは、カフェでのフリーディスカッションでした。テーマは特に決めず、好きなことを話す感じです。しかも初めは外国人は来ていませんでした。

外国人の集客に頭を悩ませるうち"Meetup"という世界的なネットワーキング・サービスの存在を知り、それを利用し始めてから外国人もクラスに来るようになり、ディスカッションもテーマを決めてそれに沿って行うようになりました。外国人がICTに参加する目的は、わざわざ日本で英語を話すことではなく、日本人の友達を作ること。そのようなことも、私はこの活動を通して知りました。

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ディスカッションから始まった活動が、やがて様々な形へと発展。

■ 世界と交わり 日本を伝える


2012年にICTを立ち上げて以来、ワークショップやイベントを延べ150回以上開催してきました。運営には日本人だけでなく韓国、ベトナム、カナダ、アメリカ、台湾などから来た人たちも参加してくれるようになりました。

2014年10月には、日本企業と在住・訪日外国人のニーズをマッチングする"NeedsArch(ニーズアーチ)"という新たなプロジェクトを始めました。これは、主に日本の中小企業が知りたい外国人向けサービスのニーズを聞き取り、一方で私たちのイベントやワークショップに参加する日本在住および訪日外国人がモニターとなって意見やアイデアを企業にフィードバックするという仕組みです。つまり、日本国内にいながら外国人の意見やアイデアを得られるワークショップ型のリサーチです。

このNeedsArchを通じて、これまでに歌舞伎のフェイスマスク、染物、壁やガラスなどに自由に書ける塗料、陶器や日本茶、米菓などのモニタリングを行ってきました。海外進出・展開を視野に入れる企業様の海外進出前のプレ調査や、訪日外国人旅行者向けに日本土産の商品開発に取り組む企業様のインバウンドマーケティングのお役に立つのはもちろん、モニターの外国人にとっても、日本文化や日本製品に触れる機会として喜ばれています。

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特殊な塗料を使用した「マスキングカラー」のモニタリングイベント。12カ国の人々が参加した。
2015年10月

今、私の中に新しい命が宿っています。今年10月に生まれてくる予定ですが、その後は少しの間、私はお休みさせていただく必要があります。これまでほぼ私が中心となって企画・運営をさせていただきましたが、これを機に国際交流やボランティアにご興味のある人たちに多くご参加いただき、様々なアイデアを一緒に実現できればと思います。そうすれば、これまでの私たちだけではつながり得なかった人たちにもつながり、ネットワークがより拡大していくと思います。

また私自身も母になるので、新しく"ママ友"にもICTの輪が広がっていくかもしれません。そうなれば、ICTが主催するイベントに参加する外国人もより多様化すると思いますし、それにより企業様向けの商品・サービスモニターにも幅が出てくるでしょう。

ただし、私はICTを必要以上に大きくしたいとは思いません。"深く、長く続ける"ことが私たちのモットーです。国際交流団体としてのICTも、定期的でありつつも心を込めた、「あの場所に行けば素敵な人たちに出会えるよね」と思ってもらえるような、そして私たち主催者側もひとつひとつ楽しみながらご提供させていただける、そんなアットホームなイベントやワークショップの開催を、これからも続けていきたいと思います。またNeedsArchを通じて日本の文化や芸術、その他様々な"日本らしさ"を在住・訪日外国人に伝え、彼らから魅力的な日本を世界に発信してもらうことで日本の"ファン"を増やしていけたらと思っています。

「日本在住および訪日外国人と日本人が共に楽しむプラットフォームを提供する」というコンセプトは、ニューヨークで生まれました。一方でそのプラットフォームに集まる外国人たちに広く発信してもらうことで、海外に日本のファンを増やしていきたいという思いの源は、かつて外交官に憧れていた時代に芽生えたものでした。 ニューヨーク生まれ・東京育ちのICTと、そこから派生したNeedsArchにより、それら両方を具現化できる。だから私は今、とても満たされています。

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私たちの活動のコンセプトは"外国人と日本人がつながる場所を作ること"、そして"日本を外に伝えていくこと"。これらを続けながら、私がニューヨークで肩まで浸かった"ダイバーシティ(多様性)"の風を、この東京にも吹かせたいと思います。



【加藤さん関連リンク】

The International Center in Tokyo:www.intlcentertokyo.com/(英語)
NeedsArch:www.needsarch.com/
ICTのMeetupページ:こちら(英語)

(2014年11月13日「My Eyes Tokyo」に掲載された記事を加筆修正し転載)