MET People - session #2 「10億人に日本を売り込むPR女子のキャリア戦略」イベントレポート

私たちがリアルに出会った素敵な方々をリアルにご紹介する「MET People」。第2回目のスピーカーは、麗しきPRプロデューサーの小松崎友子さんです。 メディアを通じて日本をアジアに売り込む仕掛人・小松崎友子さん。さて、小松崎さんはどのように"自分をプロデュース"してきたのでしょうか?

私たちMy Eyes Tokyoがリアルに出会った素敵な方々を、国籍・性別問わずリアルにご紹介するトークイベント「MET People」。前回ご紹介した"美しいがん患者でいよう"は、大変多くの反響をいただきました。お読みいただいた方、本当にありがとうございました。

そして今回は第2回「MET People」のイベントレポート、テーマは「10億人に日本を売り込むPR女子のキャリア戦略」です。ゲストとして、主に中華圏に日本のプロダクトやサービス、果ては日本"そのもの"をご紹介する活動を続けているPRプロデューサー、小松崎友子さんをお迎えしました。

小松崎さんはこれまでにも、数多くのご講演をされてきましたが、その多くがビジネスにフォーカスしたものでした。一方で私たちは、より小松崎さんの人間的な部分を引き出そうと考えました。

どのような経緯で独立し、会社を作ったのか?

独立するのに不安はなかったのか?

最初から社長を目指していたのか?

女性からよく聞かれることは?

男性からよく聞かれることは?

就職活動に臨む学生の皆さん、社内でのキャリアアップを狙う方々、一念発起でキャリアチェンジに踏み出す方々に、このスピーチをお届けいたします。

私たちがリアルに出会った素敵な方々をリアルにご紹介する「MET People」。第2回目のスピーカーは、麗しきPRプロデューサーの小松崎友子さんです。

実はこの日(11月10日)の前日、小松崎さんが製作段階から携わった日中共同制作映画『東京に来たばかり』の日本封切り初日を迎えました。この映画については別ページにて詳しくお伝えしますが、朝の新宿の劇場に大勢の人たちが詰めかけ、満席どころか立ち見ができたほど。この現象をプロデュースしたのも小松崎さんでした。

メディアを通じて日本をアジアに売り込む仕掛人・小松崎友子さん。さて、小松崎さんはどのように"自分をプロデュース"してきたのでしょうか?「10億人に日本を売り込むPR女子のキャリア戦略」My Eyes Tokyo山崎千佳のレポートです。

*会場:ギークカフェ水道橋

*協賛:セレナイト(詳しくはこちらをご覧下さい)

*小松崎友子さん x My Eyes Tokyo:こちら

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「私は今までに、男性からも女性からも、いろんな質問を受けました」

こんな言葉で始まった、小松崎友子さんのプレゼンテーション。まずはこんな質問から!

Q. 設立間もない社員わずか数名の会社が、なぜこんな大きい仕事に関われるの?

華奢で細腕の小松崎さん、いったいどんなビッグプロジェクトに関わってきたのでしょうか・・・

例① 日中共同製作映画「東京に来たばかり」

この映画のワンシーンに日本の飲料メーカーの自動販売機を登場させる試みに、小松崎さんは挑みました。清涼飲料水の大手企業全てにあたり、その中で一番最初に手を挙げたのが大塚製薬でした。そして劇中で、登場人物たちがポカリスエットで喉を潤しました。

しかし、映画の一瞬のワンシーンに商品を登場させただけでは不十分。小松崎さんは次なる一手に出ます。

2012年3月の北京での映画完成記者会見。会場は、日本で言えば国会議事堂にあたる場所。インフルエンサーやキーマンが集結する場所の席ひとつひとつに、ポカリスエットのサンプルを置いていったのです。

その他にも映画のリーフレットに、ディスカウント大手"ドン・キホーテ"のキャラクターを載せ、「東京に来たらドンキに行こう」と言わせ、しかも東京の地図とクーポンを挟み、映画完成記者会見で参加者全員に配りました。

まとめて言うと、わずか社員数名の会社が"大塚製薬"や"ドン・キホーテ"といった大企業と対等な関係でプロジェクトを進めたのです。

*『東京に来たばかり』監督のジャン・チンミンさんとのインタビューはこちらから!

例② 夜景サミット in 香港

小松崎さんが仕掛けた、もう一つのビッグイベント「夜景サミット in 香港」。今年9月に行われた、一言で言えば「日本の夜景を香港の方に知ってもらい、魅力を感じてもらうイベント」です。世界的に夜景が有名な香港に、堂々と自分たちの夜景を売り込める長崎や北九州などの各自治体を招き、さらに在香港日本国総領事館、日本政府観光局香港事務所、JETRO、香港日本人商工会議所などの協力を得ました。

また、香港の街角で偶然見かけた「香港ウォーカー」にも日本の夜景を特集してもらうために、香港角川の社長のもとへ走りました。角川サイドにとっても「夜景というのは特集したことがない。面白そう!」と、一緒に組んでもらえることに。しかも最後に小松崎さんが細腕で角川さんの編集部にプッシュしまくり、大々的に特集記事を組んでもらい、しかも日本の芸能人たちが飾っていた表紙には、東京の夜景という"景色"が大きく載ったのです。

さらに香港の旅行会社が多数参加。メディアは合計13社で、香港からはアップルデイリーと東方日報の2大メディア、日本からはNHK、日経新聞、共同通信、そして旅行の専門誌が、小松崎さんプロデュースのイベントを取材したのです。

そんな小松崎さんへのFAQ、2つ目はこれ!

Q. どうやってこういったネットワークを築けたの? こんな小さい会社に、なぜこんな団体がバックアップしてくれるの?

小松崎さんは決まって、こう答えているそうです。

「誰でもできますよ」

小松崎さんのヒューマンネットワークの多くは"飲み仲間"から派生したもの。例えば、パンダのネクタイをしていた男性がパーティーの席にいて、その方に「素敵なネクタイですね」と本心で言ったら、実は中国との太いパイプとなる大変な有力者だったとか。 小松崎さんは言います。「ただの名刺交換で終わるのではなく、何か具体的な企画をもってお話できる状態にしていることが重要だと思います。またスピード感も大事です。会って話しても1週間後には忘れられてしまうので、"今度何かやりましょうね"ではなく、小さいことでもいいから"このプロジェクトに関する資料をお送りします"など、何かしら具体的な材料を提示することですね」

ちなみに先ほど挙げられた"パンダのネクタイ"の方は、ある大物政治家のブレーンだったのですが、知らずに近づいたとのこと。MET徳橋の「もしそう知っていたら、近づいていきましたか?」の質問に、小松崎さんは「それならそれでアプローチしていくということもあります」と答えました!

小松崎さんへのFAQ、まだまだあります。

Q. どこで広報や広告宣伝、PRの知識を学んだの?

小松崎さんがある場所で講演をした際、講師プロフィールとして"電通出身"と書かれたそうですが、それは全くの事実無根。広告宣伝をしている会社にいた、と話したことを広告宣伝の会社=「電通」として認識されてしまったそうです。その会社もほぼ未経験で入社。日々の仕事から広告宣伝について学んでいったとのこと。またPRについては、それらの勉強はしていないし、広告宣伝を学ぶセミナーにも通ったことは無いそうです。しかも大学での専攻は教育学でした。 小松崎さんは言います。

「自分の感覚で、やりたいと思えばなんでもできると思います。本を読むのも大事ですが、本に書いてあることはもう誰もが知っていること。だから本を読んだところで、他の人から抜きん出ることは無いと思います。

マーケティングなら尚更、日々の生活の中にヒントがたくさんありますよね。コンビニの売れ筋商品やテレビCMから学べることはたくさんあります。なぜならそれらは、数多くのプレゼンを勝ち抜いて選ばれた結果生まれたものだからです。

また人の動きを観察し、人から学ぶことが大事です。私は主婦のお友達と話をするのが好きだし、主婦の方々は消費者の代表格。"あれがいいわ"、"これ買ったよ"、"○○に旅行に行ったよ"など、ヒットの要因になるキーワードが彼女たちの会話に隠されています。だから私は、女友達と定期的にランチ会を開いたり、彼女たちの周辺からヒアリングしています」

小松崎さんが独立前に勤務していた広告会社は、ハリウッド映画や日本の映画会社とのタイアップ専門の広告代理店。しかし一方で、小松崎さんは有休を取っては大好きな香港に行き、仕事とは関係なく香港で開催されている映画のマーケット「香港フィルマート」に参加し、香港を中心としたアジアの映画業界・テレビ業界とのネットワークを広げていきました。

その後、北海道を舞台にした中国映画『狙った恋の落とし方』(原題:非誠勿擾)が大ヒット。中国人の10人に1人が観たと言われ、その結果中国人が東京や京都を経ずにダイレクトに北海道に押し寄せるという現象が起きました。

小松崎さんが当時勤務していた会社にも、各自治体から問い合わせがたくさん来ました。「我が街を舞台にしてくれる中国映画は無いか?」と。ただしその会社は、中国映画を全く扱っていませんでした。

そこで小松崎さんは閃きました。「独自に香港に行きネットワークを広げていたことが、ここで活かせるのではないか?」。これが独立するきっかけとなりました。独立後、日本を舞台にした中国映画を探していたところ、2010年秋に『東京にきたばかり』を見つけました。制作費は集まったものの、脚本もキャスティングも決まっておらず、これから動き出すという絶妙なタイミング。そこで小松崎さんは自分を売り込み、北京にある監督(ジャン・チンミン氏)の会社との契約にこぎつけたそうです。

そして、最後の質問。

■いつから社長になろうと思ったの?

小松崎さん曰く「男性からよく聞かれること」。答えはズバリ・・・

「一度もそんなことを思ったことはない」!

会社を辞めてからフリーで活動していた小松崎さん。ある大手の上場企業と契約する段階になり、先方から「個人の方とはお仕事で組めないので、株式会社にしていただけませんか」と言われ、あわてて会社を設立したそうです。

しかしその後、専属の税理士や顧問弁護士が付き、株式会社として組織を大きくしたいという気持ちが湧いてきたと言います。

講演は佳境に入ります。小松崎さんからのメッセージです。

1. 女性にひとこと

「事業をやるとなると何か勉強したり、知識や経験が必要なのではと思いがちですが、そんなことはありません。独立するというのは、一番好きなことが自由にやれることだと思いますし、また男性よりも女性の方が合っていると思います。なぜなら世の中にあふれているものは、結局男性の発想というよりは、女性の方が何か欲しいとか綺麗になりたいという欲で成り立っていると思うからです。

それに、女性は本能的に優れているところがあると思います。特に主婦の方ですね。家庭に入って子供を育て、いろんな世代の家族を見て、世の中の情報をキャッチする。感性が非常に優れていると思います」

ここで私、ワーキングマザーのヒラリーマン、山崎千佳はたまらず質問しました。

Q. 私自身もワーキングマザーで仕事をして主婦業をして、毎日バタバタと過ごしています。でも一方で、何か自主的にやって成功したいなという思いもあります。ただ、どうやったら良いのか分からないし、すごく怖いという思いもある。事業を起こして失敗したらどうしようとか、身ぐるみはがされて丸裸になったらどうしようとか、起業することがすごくリスキーなことに思えるのです。

このような思いを抱いている人は、私だけでなく他にもたくさんいると思います。もしかしたらみんなポテンシャル持っている、起業家の卵かもしれません。でもなかなか一歩が踏み出せない。だからそういう方たちの背中を押してくれる、インフルエンサー的な存在として是非小松崎さんにお話いただきたかったのです。

小松崎さんは答えました。

ご意見をお聞きして、"自分がなぜ教育学を専攻したのか"を思い出しました。

学生時代、私はあまり良い先生に出会えず、むしろ反面教師と思うような人しかいませんでした。それに私は長女なので、兄や姉を見て学ぶということがありませんでした。だから学校こそが自分の社会であり、世界でした。だから自分が先生になって、学校をより良く変えていこうと思ったのです。

教育は一番尊いものだと思います。誰もが確実にいろんな力を持っていますから、それぞれのダイヤの原石を見つけ出し、良さを引き出して、伸ばして、磨いて輝かせ、育てる -- そのようなことををしたいと思いました。

それは学校現場だけではありません。社会の中で、そしていろんな人との関わりのなかで、いろんな力を見つけ出していく。ある人と組むことによって、その人が伸びていく。その人の才能が今まで50しか発揮されていなかったら、それを100にまで発揮させる。"プロデュース"という仕事が何なのかと言えば、人が持っている大切な才能を世に送り出すことなのだと思っています。この仕事の存在を大学の時に知り、私は学校ではなく、外の世界でやっていこうと思いました。

だから私は敢えて言います。社会に向けてご自身の力を存分に発揮していない主婦の人たちの姿を見ているのがもどかしい。素晴らしい感性や感覚を持っているはずなので、それを大いに形にして外に発信していってほしいと思います。

2. 男性にもひとこと!

「今日ここにお越し下さった男性の皆さんには当てはまらないのでご安心ください(笑)それは、女性である私の話に耳を傾けようとしていただいたからです。

仕事をする中でよく感じること -- 男女の差はないと表向きには言われていますが、「女性だから言っても分からないだろう」と男性側が思っていることを感じる瞬間があります。そして、女性だからと言って私を下に見ていると感じることがあります。

でも私は、女性の方がマーケティングのセンスが優れていると言い切れます。今伸びている会社は、トップがこのことをよくご存知で、女性の力をうまく引き出し、うまく活用しています。一方で変なプライドを持っている男性や会社は変わらないでしょうし、一生そのままで終わるかしれませんね」

ちょっぴり辛辣な言葉で締めくくった小松崎さんの講演。でも、ただ聞くだけでは終わらないのが「MET People」。講演の後はディスカッションタイムです。

この世の中は、男性と女性で成り立っています。だから男女で共に何かを作り上げていく作業は必須。小松崎さんが関わっている"インバウンド"(外国人観光客を誘致する活動)も、もちろん例外ではありません。

そしてインバウンドと言えば、最近ビッグニュースが飛び込んできましたね! 2020年東京オリンピック開催です。このニュースに、インバウンド業界は一斉に喜び、また大きなビジネスチャンスと捉えています。

そこで参加者の皆様に出したテーマは、こちら!

「2020東京オリンピックに向けて日本は何をしたら良いか?」

男性と女性、熱い議論を交わしています。時間は15分。そして、各チームで導き出した答えは・・・

Aグループ

英語・中国語ができるかの手段にばかり目がいってしまうが、その前に"どういう商品だったら世界に売ることができるか"を考える必要がある。

Bグループ

日本人が見失いがちな日本の食文化を再発見するべき。お米や、味噌・お酒といった発酵食品など、価値のあるものをうまくPRできないか?

Cグループ

「おもてなし」は、現状ではハード面でもソフト面でも為されている。

ハード面:電車が定刻にくる、街も綺麗、東京メトロの表示の親切さ、お店のおしぼりなど。

ソフト面:電話で5秒待たせても「申し訳ございません!」と謝るなど、丁寧かつ謙虚。

では何が欠けているか?これについては言われて久しいが「おもてなし」を伝えるためにもコミュニケーションツールとしての「英語」が必要。では英語力をあげるためには?・・・これ以上は言えません(笑)

Dグループ

英語はやはり必要。でも、どうしたら良いかの具体的なアイデアまでは上がりませんでした。

海外の友人に言われたのは「日本国内あちこち旅行したいのに、交通費が高い」

皆さんのご意見を受けて、小松崎さんが言いました。

「私は香港が好きで、よく行きますが、香港に移住するつもりは全くありません。どう考えても日本の方が住みやすいです。食事も美味しいし、空気も綺麗だし、新商品やサービスがどんどん出てくるし、他の国に比べても良いものがたくさんあります。

"香港や上海の人はそんなに日本に興味あるのか?"と日本人の友人によく聞かれますが、日本が大好きな人は実際にすごく多いのです。円安になったのでやっと日本に行けるようになったと喜んでいる人が香港にはたくさんいますし、上海の物産展では"くまモン"のキャラクターに人だかりができていました。だからまだまだ売れるものはたくさんあります。

今まで日本は、海外に売リ込む努力をしてきませんでした。だからそう動くようにシフトを変えていきたい。正直今インバウンドビジネスに携わり始めたばかりですが、私も良いタイミングでこの業界に足を踏み入れたと思います。これからが楽しみです」

そして最後に、ディスカッションでもその重要性が議論された"語学"について。

「やはり語学力は必要であると実感します。例えば香港は、都市別観光客数ランキングで世界一です。様々な要素がありますが、その中の重要な要因のひとつは、英語が通じること。イギリス領だったということもありますが、だから欧米人が安心して来れるわけです。香港では、タクシーの運転手さんが英語が通じるから、私も安心して乗れますしね」

英語朝活などで語学力アップの促進に動いているMET、この一言に大いに背中を押されました!

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日本と中華圏をつなぐ大きなプロジェクトに小松崎さんは携わっているので、この分野でのキャリアが長いのではと思っていたのですが、インバウンドビジネスを始めたばかりということが意外でした。こんなに恐れなく、エネルギッシュに前へ突き進む姿に、私は圧倒されました。

大きな後ろ盾は無くとも、自分の強い思いで実際に動き出し、もちろん人の紹介はあれど、そのチャンスを逃すことなく掴み取る力。また、夜景サミット開催1週間前に急遽現地に趣き、旅行会社などに参加の最後のお願いをして回るド根性は、まさに体育会系です。 小松崎さんのイメージは、その華奢な身体とフットワークの軽さから、日本と中華圏を優雅に飛び回る可憐な蝶々。これからもしなやかに・・・!

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