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日本に関心がない人でさえ、日本茶が好きだったりする。それくらい、お茶というのは生活の一部に成り得るのです。--イアン・チュンさん

2014年05月02日 20時42分 JST | 更新 2014年06月30日 18時12分 JST

時の流れは早いもので、5月に入りました。ちょうどこの時期は、童謡「茶摘み」でおなじみの"八十八夜"を迎えます。この時期に摘んだ茶は上等なものとされ、この時期にお茶を飲むと長生きするともいわれているそうです。

夏も近づくゴールデンウィークに、ぜひ皆様にご紹介したい方がいます。

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日本橋にある"道路元標"にて。皆さんが日本文化の魅力を探る旅に出る、そのきっかけは皆さん様々でしょう。私たちは、世界中の方々が歩まれるその旅路の原点になりたいと思っています。

ハワイご出身のイアン・チュンさん。日本の茶農家や茶屋、茶器の職人さんの情報や商品を世界に発信する"Matcha Latte Media"の代表です。これまでに世界約50カ国の人々に日本茶の魅力を伝えてきました。

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私たちがイアンさんと出会ったのは、2012年。都内で行われた小さな起業イベントでした。そこには海外出身の起業家も多数出席しており、その中にイアンさんの姿がありました。イアンさんの事業内容を聞いた私たちは、即座に彼のビジネスに関心を持ちました。

そして2013年、私たちMETが開催したプレゼンイベント"Mechakucha Night"に、イアンさんは一般参加者およびプレゼンターとして参加して下さいました。それを受けて私たちは、2度も私たちのイベントに参加して下さったことに感謝の意を表し、私たちの新たな試みである"MET Morning Interview"という公開インタビューイベントにお招きしました。

なぜイアンさんは、日本茶を世界に広めようとされたのか - イベント当日、会場はバイリンガルの日本人たちが、ハワイからやってきた"日本茶の伝道師"のお話に真剣に耳を傾けていました。

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*インタビュー@Geek Cafe(東京・水道橋)2013年12月21日

*起業家インタビュー(大槻美菜行政書士事務所)

英語版はこちらから!

 

■ 日本茶農家との出会い

私を一言で表すならTea marchant、いわゆる"茶商"です。私の仕事は、日本各地からお茶を買い、世界に輸出することです。インターネットを通じて世界中に日本茶を広めるコンサルタントが出発点でしたが、そのきっかけは友人が私に紹介した男性でした。

その人の名は松本靖治さん。"京都おぶぶ茶苑"という農園を営んでいます。その一方で松本さんはこの数年間、世界各国を周って日本茶の講習を行っています。それで彼が「私は外国人に日本茶について教えているんですよ」と言うと、お客さんは「それはすごい!私もあなたのお茶をいただいてみたいですね」と言って購入するのです(笑)

松本さんは、すごくカリスマ性のある方です。もう私なんて足下にも及ばないくらい。でも彼の海外での売上は、残念ながら微々たるものでした。だから私は松本さんと出会った時、彼をサポートさせていただきたいと思いました。私はマーケティングもできますし、ウェブサイトも作れますから。

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京都おぶぶ茶苑ウェブサイト(英語版)

私は茶苑でのインターンシッププログラムを立ち上げ、海外から研修生を募りました。おぶぶ茶苑の英語版のウェブサイトを運営し、手数料をいただいていました。それから私はこのビジネスモデルを、おぶぶ茶苑だけでなく他の企業にも応用することを考えました。



■ その国に関心が無くても興味を持つもの。それが"お茶"

今私は"ユノミアス"という日本茶のマーケットプレースを運営し、オンラインで多くの種類の日本茶を販売しています。ユノミアスでは茶農園や日本茶各種、茶器、ハーブティーなどを取り扱っており、さながら"日本茶のアマゾン"と言っても差し支えないでしょう。お茶は取り扱いが簡単だし、何より私自身が強く興味を持っているものです。私は日本文化が大好きですが、その中でも日本茶は日本文化の中心だと思っています。

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ユノミアス ウェブサイト(英語版)

私たちは、扱う製品をお茶に絞り込んでいます。なぜならお茶は巨大なマーケットを持っているからです。例えば日本に関心がない人でも、日本茶になら関心を持つ可能性が大きい。だから私のお客様は世界中に存在するのです。その多くは日本茶好きの方々ですが、でも彼らが必ずしも日本に興味を持っているわけではないですし、日本に興味を持つ必要もありません。日本茶のマーケットには、日本が好きな人たちと、お茶が好きな人たちが重複する部分があります。世界のお茶市場が大きくなればなるほど、より多くのお茶好きの人たちが日本茶に興味を持つと思います。なぜなら、日本茶の中で海外に輸出されているのはわずか3%に過ぎず、残りの97%はまだ日本国内にしか流通していません。つまり、それだけ世界でのマーケット拡大の余地があるのです。

欧米人は、小さな農園から購入することに強くロマンを感じるものです。先週私はシアトルに行きましたが、市内には"ホールフーズ"というオーガニック製品に特化したスーパーがあります。そこではチョコレート一箱が10ドル(約1000円)で販売されていたりしますが、一方ですぐそばにあるドラッグストアには、同じものが半額の5ドル(約500円)で販売されていました。全く同じチョコレートですが、ホールフーズに買い物に行く人たちは、高品質でオーガニックで、地元の小さな農園が好きな人たちです。そのような人が、私たちのお客様です。「○○さんから直接購入できますよ。しかもその商品には、ストーリーもあるのです」と言ってお勧めします。

そしてお茶のことを知ったら、浅蒸し茶や深蒸し茶といった、さらに特別なお茶についてもお伝えします。私たちのお客様の中にはリピーターも多くおりますし、また私たちが扱っているお茶の中でも一番高額のものが売れたりします。なぜなら彼らの国では手に入らないからです。だから私たちが大きくなるチャンスはたくさんあるのです。

 

■ 日本に心を奪われた

正直言えば、私は日本に全く興味がありませんでした。それでも私の故郷のハワイには日系アメリカ人がたくさんおり、その人たちと共に育ちました。だから私が日本に初めて来た時も、「遠いところに来た・・・」みたいには思いませんでした。家に入るときは靴を脱ぐという習慣も、違和感は無かったです。しかも理由は分かりませんが、私のような中国系アメリカ人の家庭でさえ、お正月の時は門松を立てていたんですよ!恐らくハワイのスーパーやドラッグストアが門松を扱っていたからだと思います。私たちは毎年門松を買い、家のドアのそばに置いていました。

それに私の母は天ぷらや寿司、しゃぶしゃぶ、煮しめといった和食を作るのが好きでした。だから私は日本文化の影響を強く受けてきました。それに加えてアメリカ文化の影響、そして私のルーツである中国の文化の影響も受けてきました。

また、私が子どもの頃は『ドラゴンボールZ』『超時空要塞マクロス』『戦艦ヤマト』といった日本のアニメがテレビで放送されていました。

でもそれらが今の私の仕事の源でも、また私が日本に来た理由でもありません。私がリアルに日本に興味を持ち、日本文化を学ぼうと考えたのは、日本文学がきっかけでした。

アメリカで大学生だった頃、友人が村上春樹のことを教えてくれました。それで最初に読んだのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』でした。私は「このストーリーの舞台は東京でなくても、きっとどこでも成立するのではないか」と思いました。そんな普遍性を感じつつ、一方で彼の文学はとても日本的でもありました。現代の日本の姿が描写されていながら、典型的な昔ながらの日本の姿もそこにはあった。このような村上春樹の普遍性と独自性のミクスチャーに翻弄されるうちに、私はすっかり日本に夢中になりました。でも村上春樹の描く日本だけでは、昔ながらの日本の姿が完全には見いだせなかったので、もっと昔の川端康成や夏目漱石の文学を英語で読みました。そしてもっと日本が好きになりました。

大学3年生の時に、日本語を学ぶために来日し、金沢と京都に行きました。そして大学を卒業後、英語の先生として再来日しました。それから出版社で働いた後、上智大学大学院で比較文学の研究をしました。

それから数年後、私は先ほど申した"京都おぶぶ茶苑"の松本さんに出会いました。私が日本のIT企業でマーケティング担当として仕事をしていたころです。私はお茶の世界にもっと触れたかったのですが、IT企業とお茶は何の関係もなかったので、思い切って会社を辞めて・・・

すみません、英語で「独立する」って、何て言うんでしたっけ?(会場爆笑)

 

■ 言語の翻訳だけでは全然足りない

英語から日本語への翻訳は、皆さんにもできるでしょう。でも日本の文化と英語圏の文化、双方の文化の背景を知らないことには、あるものを人に説明することがすごく難しくなることがあります。例えば先ほどの「独立する」という言葉と「Become Independent」は、意味は同じですが、その言葉の持つ響きは微妙に違ってきます。

お茶にも同じことが言えます。例えば煎茶や玉露、ほうじ茶などの日本茶の解説を読むと、"うまみ""甘み""渋み""苦み"さらには"つやつやする"という言葉が出てきます。これらをきちんと伝えられる言葉は、英語にはありません。いくら"うまみ"について説明しても、日本文化に精通していない人には全く通じません。特に海苔や寿司を知らない人(今では寿司を知らない人はあまりいませんが)に、皆さんが「"うまみ"は寿司を巻く海苔のような味がする」と説明したとしますよね。するとその人は「このお茶は、お寿司みたいな味がするの?」って聞いてくるかもしれません(笑)

日本語と英語は全然違う言語です。でも全く異なる文化から生まれたものだから、それも当然です。皆さんは日本の食文化の中で育っています。寿司や醤油、そしてうまみといったものに慣れ親しんでいます。

一方で欧米人にとってのお茶というのは、その理由は分かりませんが、特にアメリカではワインのようなものです。だから欧米でお茶に携わっている人たちは、ワイン業界で使う言葉を借りてお茶を説明します。例えばワインについて英語で勉強した人は「このカベルネ・ソーヴィニヨンにはブラックベリーやオークの風味やスモークの香りがあります」みたいな表現を、お茶に当てはめたりします。「この煎茶には甘みと、ほうれん草のような野菜の味と柑橘類の風味を感じる」みたいに。日本人は、こんな表現はしないと思います。

なので私が運営する"Matcha Latte Media"は、言葉の翻訳だけでは十分でない場合、言葉の意味すらも、海外の人たちに伝えるために変えてしまうことがあります。だから日本文化とは異なる文化に育った人たちにも理解できる。これがMatcha Latte Mediaの活動の基本です。

 

■ 日本の小規模生産者のためのマーケットプレースを

「これぞ日本文化!」と言えるような面白いものは、多くが東京以外の小規模生産者の手で作られています。特に食品ですね。それらは私が作るようなウェブサイトを通して流通するわけではないですから、海外の人たちの目に触れることはありません。そして最も難関なのが、海外への物流の問題です。小規模生産者の皆さんだけでは、とても手に負えるものではありません。

だから私たちは、小規模生産者たちが海外への物流や輸送、国際規制、海外の顧客とのコミュニケーションをサポートをする企業を興したいと思っています。そして私たちが日本国内のたくさんの小規模生産者をサポートする体制が整ったら、彼らの製品が世界中の消費者の目に触れるようにするために、マーケットプレースを作りたいと思っています。

この活動は、日本だけに留まりません。他の国でも同じことができると思います。中国のアリババ(阿里巴巴)やアメリカのeBay、アマゾンを活用して潜在顧客を掘り起こすことができるでしょう。かつての茶農園は、そのようなことができませんでした。潜在顧客を掘り起こせない農園はたくさんあり、また彼らをビジネス面でバックアップする人を雇用できずにいます。

しかし京都おぶぶ茶苑の松本さんは違いました。京都府和束町という、人口たった5000人の小さな町で、彼はITのスペシャリストを見つけ、雇おうと考えました。田舎でそのような人材を確保するのは、かなり難しいです。だから私がサポートさせていただこうと考えました。私はビジネスとして、田舎の小さな茶農園を支援したいと思ったのです。



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