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介護で一番大切なのは人材

2016年02月18日 23時36分 JST | 更新 2017年02月18日 19時12分 JST

川崎の有料ホームで、あいついで高齢者3人が転落死、実は夜勤の介護スタッフが突き落としたという。しかも犯人はこれまで、自作自演のシナリオを語ることで、周囲を欺いていた。なんともやるせない事件である。

川崎ではないが、私もこのグループが経営する有料ホームを見学したことがある。6年前、両親がほぼ同時に要介護となったとき、なにかと意見が異なった兄と即、意見が一致したのは、このホームは不適切ということであった。

有料ホームにしては毎月の値段は割安であったし、中流層には手ごろと見えた。しかし、ホーム見学で一番重要と思われた見守りがゆき届いてないということはちょっと見ただけで感じとれた。せっかく見学に来たのに対応してくれるスタッフがすぐにみつからず、ホーム側の対応は不親切できわめてビジネスライク、無関心な感じさえした。

建物は新築なため一見、きれいではあるものの、なによりも急成長しているというところが不安材料なのである。つまり、そういったところは無理して短時間で人材を集めているため、充分に人材を見定めたり、研修をしていない場合が多いということを知人から忠告され、ホーム見学の重点とした。

ホームは都内、都下で15軒、見学した。これが多いのか少ないのか、あるいは平均的なのかはわからない。資料を取り寄せ、アポをとり、見学に行く、これだけでも結構な労力と時間を要する。

筆者は二十年来、ドイツ、ミュンヘンに生活の拠点がある。日本の介護保険、および後見人制度はドイツの制度を参考にしているため、取材ではドイツのホームを多数、見てきているし、高齢問題について、全く知識がなかったわけではなかった。

しかし、いざ自分の親の入所先を探すとなると、さまざまな感情がこみあげてくるし、一筋縄ではいかない。どのホームも帯に短し、たすきに長しでなかなか理想と巡りあえない。限られた時間しかないのに、実際には存在しない「青い鳥」を探しているのではないかと気も滅入った。

ただ、十軒以上見学するうちに、どういう点を重視するべきかが大体、わかってきた。良いホームを見きわめるための注意点を以下にまとめてみた。

*入口や接客室が雑然としていないか

「顔」ともいえるホームの接客室に荷物、資料、衣料が積み上げられているところがあったが、余裕がないという印象となるし、従って、介護も適当にやっているのではないかと暗澹たる思いになる。

*建物は転用ではないか、新築でも問題点はないか

元ビジネスホテル、学校、元社員寮などの建物を改装して転用しているところは段差があったり、フロアプランが到底、介護には不向きなところがある。

実際に見学してみないとわからないのだが、元社員寮であった建物は個室にトイレがないため、各フロアに設けられている「集合トイレ」に段差があるタイル詰めの床にあるサンダルに履き替えなければならない。年をとると平面でも転ぶ場合があるのにこのようなトイレで転倒はないのか。

また、元ビジネスホテルのホームは廊下が狭く、しかもまっすぐではない上、部屋も狭く、いびつな形をしていて車椅子が必要となった場合、一体、どのように移動するのか。結婚式用のチャペルは食堂になっていたが、最上階は元バーであったのか、眺望もすばらしかったが、こういった建物でさえ有料ホームに転用するのかと驚いた。

*医療はどうか(ホーム推薦医か、医療付属か)

医療が付属しているところは一瞬、安心かもしれないけれど、もし意にそぐわない場合、別の医療機関と契約し直すという自由はあるのか。ホームの専属医ではなく、別の在宅医療を選ぶことは可能か。実際には医療を受けてみないとわからない場合もある。

*地域を変えてみる

日本の有料ホームの価格は地価と連動している場合が多いため、地域によって高額なわりに内容が乏しいということも多いにありうる。希望の地域で財力や介護内容の希望にそぐわない場合、発想を転換して別の地域で探すという方法もある。

*親会社はなにをしているのか、急成長していないか

残念ながら、日本にはカトリック精神や慈善事業で運営されている有料ホームは極めて少ない。日本の有料ホームの親会社は多くが不動産をはじめとする異業種。特に関東平野は土地の値段と連動しているため、不動産が多い。親会社の経営状態、事業の展開などは下調べするべき。

*従業員はどういう表情で働いているか

いくら建物が新築できれいに見えても、介護を担うのは、あくまでも従業員、介護スタッフ。研修制度をどのようにしているか、どういう点を重視して人材を雇用しているのか、聞いてみることは基本だ。どんなに高級なホームでも、日々の面倒をみてくれるのは介護スタッフなのだから、せめて見学のときは介護スタッフの表情をさりげなく観察することも重要。

*家族も試しに宿泊してみる

大切な親が24時間お世話になるホームには、できれば家族も宿泊してみたい。一日の流れがわかるし、試食も兼ねてみると、食事の味付けもわかる。家族がきりきりしながら一人あるいは少人数で無理な介護にあたるより、プロに任したほうが良いということもある。

細かい点をあげれば、他にもあるのだが、最後に、「どんなに高額なところでも実際に介護にあたるのは生身の人間である」ことを強調したい。良いホームの見きわめ方で一番重要なのは介護の人材以外にありえない。実際には入居してみないとわかりにくい点でもある。

介護をする人には優しい人が多い。このことは、親を5年間、都内の有料ホームにあずけてみて実感できた。こういう人たちが働いているのであれば安心、と思える多くの介護スタッフや看護婦、医療関係者と出会えることができたのは幸いだった。ただ、介護の場は異動や入れ替わりが激しい。入居後も頻繁に訪問を続け、家族の希望を伝える必要がある。

私の知り合いには、「高齢者に学ぶことは多い」、と好んでお年寄りの相手をする人がいる。そういう人は話していても楽しいし、ほがらかで、辛抱強い。信念をもって介護にあたっているという人は必ずいるものだ。いや、むしろ、こういった人のほうが多数であると信じたい。

日々、一生懸命、介護している人たちのことを考えると、一部のスキャンダラスな事件が起きるのは大変、残念である。ホ-ムを経営する側にも、人をみきわめることができなかったという重大な落ち度、経営責任があったということは否定できまい。