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カンブリア紀の「優しい巨人」

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どう猛な捕食動物として描かれてきた古生代前期の大型遊泳動物「アノマロカリス」に、濾過摂食する種類がいたことを示す化石が見つかった。

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Credit: BOB NICHOLLS/BRISTOL UNIVERSITY

今から5億年前、カンブリア紀の海には、鋭い鉤爪状の前部付属肢で獲物を捕える、どう猛な捕食動物が泳ぎ回っていた。

この動物群は当初、エビの胴体に似た付属肢部分のみで単独の生物体を構成すると誤解されており、頭部に該当する構造がないことから、ギリシャ語で「奇妙なエビ」を意味する「アノマロカリス」と名付けられた。

体長は最大1mと当時の動物としては巨大で、多くの生物が飛躍的に進化を遂げたカンブリア紀の海洋生態系において最上位捕食者として君臨していたと考えられている。ところが今回、Nature 2014年3月27日号496ページに報告された研究(参考文献)によると、その仲間の少なくとも1種類は「優しい巨人」だったようだ。

2009年と2011年にグリーンランド北部で発掘されたアノマロカリス類Tamisiocaris borealisの複数の化石から、この種には、長さ約12cmの付属肢に細長い棘が等間隔に並んだ櫛状構造があることが明らかになり、この構造の分析から、T. borealisが最小で0.5mmまでの大きさのプランクトンをすくい取って食べていたことが示唆されたのである。T. borealisも、他の多くのアノマロカリス類と同様、5億2000万年前のカンブリア紀前期に繁栄を遂げた。

研究者たちは、T. borealisが、他の上位捕食者と進化の「軍拡競争」を繰り広げる中で、大型の獲物を捕える摂食法を捨て、微小な獲物を濾過する摂食法を進化させたと推測している。

摂食戦略を変更させたことでT. borealisは、海洋に存在する限られた量の食物をめぐる最強クラスの動物たちとの過酷な競争から解放されたのだと、論文の共著者であるブリストル大学(英国)の古生物学者Jakob Vintherは話す。「その結果、T. borealisはどの動物にとっても脅威とならず、またどの動物からの脅威も受けずに済んだのです」と彼は説明する。

Vintherによると、濾過摂食という行動様式は地球史の中で複数回進化し、それらはいずれも海洋の食餌供給量が豊富な時期に起こったという。その中でT. borealisは、現在のところ最古の濾過摂食性大型遊泳動物といえる。

一方で、以前の化石証拠から、アノマロカリス類の付属肢は獲物を突き刺したり捕捉したりするのに適していたことが分かっている。

ポモナカレッジ(米国カリフォルニア州クレアモント)の生物地理学者Robert Gainesは、これはアノマロカリスがどう猛な海の捕食者であったことを示す証拠だとしながらも、今回発見されたT. borealisの付属肢にある羽毛のような細い棘毛については、「小型プランクトンもしくは動物プランクトンを濾過するための古典的な適応です」と話す。

現代のクジラ類やサメ類のように、太古のアノマロカリス類もまた、異なる摂食様式を持つ複数の種類で構成されていたのかもしれない。

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140605

原文: Nature (2014-03-26) | doi: 10.1038/nature.2014.14934 | Prehistoric 'weird shrimps' traded claws for nets

Jessica Morrison

参考文献: Vinther, J., Stein, M., Longrich, N. R. & Harper, D. A. T. Nature 507, 496-499 (2014).

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