単一の電子デバイスに基づくカオス振動子を用いた人工ニューラルネットワークの構築によって、非従来型アナログ演算への興味深い方向性が得られる。
3d rendered illustration of an active neurone
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最近、シナプスのようなダイナミクスと適応的な伝導性を示すメモリスターデバイスのグリッドによって、アナログ(非ブール)演算のニューラルネットワーク型の実装が実証された。今回S Kumarたちは、高非線形性二酸化ニオブ・メモリスターデバイスでカオスダイナミクスを利用できる可能性を調べている。

このアイデアは、生体ニューロンは「カオスの縁」と呼ばれる領域で機能するという理論から着想を得たものであり、この理論は、ヒトの脳が複雑な情報処理タスクに、非常に効率的に取り組めるという能力のカギであると考えられている。

著者たちは、開発したデバイスにおいて制御可能な領域のカオス的自己振動を実証し、典型的な計算困難な問題(巡回セールスマン問題)を解くことのできるメモリスターグリッドを、カオス素子を組み込んでいない手法と比べてより正確に、より高効率でシミュレートしている。

単一の電子デバイスに基づくカオス振動子を用いた人工ニューラルネットワークの構築によって、非従来型アナログ演算への興味深い方向性が得られる。

Nature548, 7667

2017年8月17日

doi:10.1038/nature23307

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