予想に反した電子対形成

基礎物理学の原理では、同じ電荷の粒子は互いに反発し合うと考えるが、考えられないことが固体では可能であり、電子が集まることがある。

基礎物理学の原理では、同じ電荷の粒子は互いに反発し合うと考えるが、考えられないことが固体では可能であり、電子が集まることがある。電子は、適切な格子振動によって媒介されると、斥力に打ち勝って、束縛された対を形成することがある。これは、超伝導をもたらすよく知られた効果である。今回S Ilaniたちは、他の電子によって媒介される電子の相互引力といういっそうエキゾチックな効果を生み出している。彼らは、2つのカーボンナノチューブ電子デバイスを、サブマイクロメートルという高い精度で隣同士に配置して、これを実現した。

一方のナノチューブの中の小さな領域に閉じ込められた電子の間の斥力を、他方のナノチューブを正確に配置して調整することによって、引力に変えることができる。この研究によって、電子による電子対形成が可能かという長年の基本的な疑問が解決され、量子電子デバイス用の新しいプラットフォームが得られる。

Nature535, 7612

2016年7月21日

原著論文:

doi:10.1038/nature18639

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