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琥珀に恐竜時代の鳥類の翼

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白亜紀の幼鳥の翼が、琥珀の小片の中からありのままの姿で発見された。その特徴の数々は、この原始的な鳥類が、現生鳥類とさほど変わらぬ翼を持っていたことを物語っている。

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翼が樹脂に張りついてしまったエナンティオルニス類の鳥(想像図)。
Chung-tat Cheung

ミャンマー北東部にある中期白亜紀の琥珀鉱床で採集された、わずか数cm3ほどの2つの琥珀片から、約9900万年前に樹脂に閉じ込められたとみられる鳥の翼2枚が発見された。標本はいずれも翼の一部だが、骨や羽毛の他、皮膚などの軟組織の痕跡が立体構造を保持したまま残っており、ここまで見事な鳥類の羽衣の証拠が得られたのは、この年代では初めてのことだという。この発見は、中国地質大学(北京)の古生物学者Lida Xing(邢立達)率いる研究チームによって、6月28日付でNature Communicationsに報告された(参考文献1)。

白亜紀(1億4500万~6600万年前)の鳥類の羽衣を示すこれまでの証拠は、圧縮化石に残された平面的な標本か、琥珀の中に保存されてはいるものの、どの種のものか全く手掛かりのない単独の羽毛だけだった。

論文の共著者であり、王立サスカチュワン博物館(カナダ・レジャイナ)で琥珀に封入された化石について研究している、古無脊椎動物学の学芸員Ryan McKellarは、「羽毛が骨格と組織を伴う形で発見されたのはこれが初めてです」と話す。

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今回発見された化石標本の1つ。翼の下面から見たもので、前縁の羽毛の暗褐色と、白っぽい綿羽および大羽が認められる。
Royal Saskatchewan Museum/R.C. McKellar


細部に宿る真実


標本の1つでは、翼の先端に見られる小さな爪を取り巻く琥珀部分に、いくつかの爪痕も認められた。その位置関係や周囲の気泡の特徴などから、これらの爪痕は、粘性の高い樹脂にまみれて翼が樹皮から剝がれなくなってしまった鳥が、死に際にもがいたときにできたものだと考えられる。

2枚の翼には共に、羽毛の本来の色合いが残されていた。大部分は暗褐色だが、大羽はやや淡い色のものから白っぽい帯状の模様を持つものまでさまざまで、「小翼羽」と呼ばれる前縁中央部の羽の付け根部分には、白い斑点も見られた。一方、綿羽(下羽)は主に白色だった。

また、羽毛の構造や配置は現生鳥類のものと類似していた。それぞれの骨のサイズがハチドリよりも小さく、発達が不完全なことから、これらの翼は共に幼鳥のものだったことが示唆される。さらに指骨の特徴からは、これらの個体がおそらく、恐竜とともに約6600万年前に絶滅した、爪のある翼と歯を持つ原始的な鳥類エナンティオルニス類の一種であったと考えられる。

ところが、骨は未発達なのに対し羽毛はむしろ成鳥のものに近く、換羽した形跡も認められなかった。これは、この鳥類の発達が速く、現生鳥類に見られるような綿羽のみに覆われた幼鳥期が全くなかったことを示唆している。「簡単に言うなら、この鳥たちは孵化した瞬間から飛べたということです」とMcKellarは説明する。

フィールド博物館(米国イリノイ州シカゴ)で恐竜の研究をしている学芸員のPeter Makovickyは、今回の知見で、二次元の化石から三次元の模型を推測する際に必要な「謎解き」作業がいくらか軽減されるだろうと喜ぶ。

「色や模様が保存されています。そして羽毛の配置も、それらと骨格との関係が三次元で正確に保存されているのです。これほど細かい情報が得られるなんて、本当に素晴らしい標本です」。

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160904

原文: Nature (2016-06-28) | doi: 10.1038/nature.2016.20162 | Bird wings trapped in amber are a fossil first from the age of dinosaurs

Rachel Becker

参考文献
  1. Xing, L. et al. Nature Commun. 7, 12089 (2016).

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Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160616

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