「ネコ市ネコ座」トークショー、杉本彩さんが猫保護活動への理解を呼びかける

昨日、2014年9月7日に岐阜県大垣市で開催された「ネコ市ネコ座」。そのイベントの一つで、一般財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長を務めるなど、動物愛護・啓蒙活動を行っている、杉本彩さんと、ネコ市ネコ座実行委員長で、猫カフェ「Neko Republic」を運営する河瀬麻花さんとのトークショーが開催されました。今回、猫ジャーナルではその模様を、猫のように聞き耳を立てて、大垣にて取材して参りました。猫を抱く杉本さんの写真は、トークショーに先駆けて行われた、岐阜県知事との会見での一コマです。

昨日、2014年9月7日に岐阜県大垣市で開催された「ネコ市ネコ座」。そのイベントの一つで、一般財団法人「動物環境・福祉協会Eva」の理事長を務めるなど、動物愛護・啓蒙活動を行っている、杉本彩さんと、ネコ市ネコ座実行委員長で、猫カフェ「Neko Republic」を運営する河瀬麻花さんとのトークショーが開催されました。今回、猫ジャーナルではその模様を、猫のように聞き耳を立てて、大垣にて取材して参りました。猫を抱く杉本さんの写真は、トークショーに先駆けて行われた、岐阜県知事との会見での一コマです。

左から、ネコ市ネコ座実行委員長の河瀬さん、杉本さん、岐阜県の古田知事岐阜ねこを救う会代表Iさん。

それでは、トークショーの一部始終は以下よりどうぞ。

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司会:杉本彩さんをWebで検索する際に、必ず出てくるのが「動物」「猫」という単語です。いつから動物愛護に関わるようになったのでしょうか?

杉本:もう20年以上前になりますが、20代のころからです。河瀬さん(が猫の保護活動を始めたの)と同じように、街にかわいそうな猫がいて、放っておけずに、保護したのがきっかけで、それがエスカレートしていきました。保護活動を続けていると、近所で「この人にいえば何とかしてくれる...」という状況になって、ご近所から「あそこに猫が生まれたので、助けてください」「どこそこに病気にかかった猫がいるから何とかしてほしい」と、SOSがひっきりなしにやってくるようになって。それで、どんどん、この活動を個人でやり始めました。

地域猫活動」というのがありますが、街に住む、「野良猫」といわれる飼い主のいない猫がたくさんいます。その猫たちは、生まれてすぐ、近隣の住民の方によって、保健所に持ち込まれて、殺処分されているという、悲しい運命をたどっています。そういった現状を知って、何とか食い止めたい、殺されるためだけに生まれてくる命をなくしたい、ということで地域猫活動に加わるようになりました。

杉本:この地域猫活動とは、飼い主のいない猫たちに、去勢・不妊手術を施し、子供が生まれない状態にするものです。さらに、野外で生きる猫は、室内で飼われている猫に比べて、寿命があまり長くありません。ですから、その短い終生を、ご近所の皆さんで力を合わせて生きていけるよう見守っていこう、というのものでもあります。

そういった活動を行うようになって、猫に限らず、日本の動物たちが非常に悲惨な現状に置かれていること(がわかってきた)。これは何に問題があるのか、というところに行き着いて、法律がしっかりと整備されていないとか、いろいろな問題が、どんどん明らかになってきました。これは何とかしないとならないと、独り、個人で啓蒙活動をするようになりました。それが、長い間続いていまして、いよいよ行き着いた答えが「個人で活動していてもどうにも限界がある」ということでした。皆さんとタッグを組んで、この声をより大きなものにしていき、行政に訴える活動をしなければならない、というところにたどり着き、今年の2月に財団法人を立ち上げたのです。20年以上かかりましたけれども、ようやく素晴らしい仲間のつてを得ましてスタートを切れました。

司会:東日本大震災もその契機になったのでしょうか。

杉本:そのことでも、新しい問題を感じました。災害が起こったときに、ペットと同伴避難するマニュアルがほとんどないのです。ペットというのは、私たちにとって、本当に大切な人生のパートナーで、大切な家族なのです。被災された方にとって、本当に心の支えでもあるのです。それなのに、一緒にしっかり避難できないのは、心のダメージも非常に大きいものです。被災したダメージに加えて、適切な避難ができないことは、より大きなダメージになってきます。そういったところを、しっかりと整備していく必要がある。ペット同伴避難について、皆さんもいろいろな提言を出されています。私も東北の被災地に通いまして、自治体と交流を持ったり、個人の活動家の方と交流を持つなかで、個人の活動家のSOSによって、私も約7匹の猫を被災地から引き受けてきました。その当時、自治体の施設も、民間の施設も震災直後は本当に足りなくなってしまいました。そのため、保護したはいいけれど、行き場のないペットたちがたくさんいたのです。

当時、避妊去勢手術がなされてない状態で災害が起こってしまったために、引き取った猫のうち、メス猫はみんな妊娠していました。その後、うちで全部生まれて、トータルで20匹以上の猫を私個人が抱えることになりました。ある程度しっかりと、子猫を世話して、しっかりと、面倒を見てくださる里親さんを探して、ほとんどの猫を譲渡させてもらいましたが、4匹の被災地から来た猫は、うちの家族として京都の自宅に残っております。今現在、私の家族は、その子たちも合わせてトータルで猫が9匹、犬が3頭というにぎやかな大家族で暮らしています。

司会:街ですれ違った1匹の猫をきっかけに、これほど大きな活動をされるまでになったということですが、現在の思いは?

杉本:毎日毎日、試行錯誤の連続です。私たちの財団自体も、どのように取り組んでいくか、システムとしてしっかり構築していかなければなりません。しかし、問題は待ってはくれません。全国各地から、いろいろなご相談が寄せられています。環境省が管轄している、愛玩動物の問題だけではなく、実験動物の問題、自然界で生きている動物たちの問題まで、たくさんの問題が寄せられるのです。私も今まで勉強してこなかった分野もありますから、今、猛勉強中でもありますし、それと同時に、当財団でできることは全力で取り組んでいきたいなと思って、試行錯誤しながら頑張っています。

司会:今、感じなければならない問題というのはどういうところなのでしょうか?

杉本:やはり、誰でもお金を出せば簡単にペットを購入できることが、すごく問題だと思うのです。一つの命を引き取るのは、自分が子供を産むのと同じくらい、本当にいろいろなことを考えて、しっかりと準備して、最低限の知識を持って引き受けなければいけないのです。ただ、かわいい子猫や子犬がショーケースに入って販売されているものですから、ついつい、「かわいい!」という感情だけで、(飼うための準備を伴わない)衝動買いになってしまっているという現状があります。それが故に、「購入したペットがどれくらい大きくなるのかわからない」とか、「しつけの仕方がわからなくて、すごく問題行動を起こすようになった」といった理由で、手に負えなくなって、無責任に飼育放棄をする人も、後を絶たないのです。

それから、ペットは人間と同じように、歳をとったり病気をしたりするものです。そのなかで、医療費がかかったり、介護の手間がかかったりします。そのような、先の先まで想定して、その命を引き受けていかないと、後から「こんなはずじゃなかった」「こんなに大変だとは思わなかった」という事態になってしまうのです。その結果、老猫・老犬の面倒を見たくないなどといって、飼育放棄して保健所に持ち込む人が、たくさんいらっしゃるのです。ウソのような本当の話です。そのために、新しい飼い主が見つからず、殺処分されてしまう。

本当に、気の毒にというか、人としてこんなことをしていいのかという疑問が起きます。こういうことを、社会で容認していいのか、と。こういうことが容認できる社会とは、人に対しても優しくない社会だと思うのです。動物は言葉を持たず、人間社会のなかで、一番の弱者だと思います。その命が守られていない、しっかりと皆が思いやりを持ってその命と向き合っていない社会で、私たち人間の本当の幸せ、本当に安心・安全で、心豊かな、そういった幸せが保証されているかといえば、それは大きな疑問を感じます。

司会:最近耳にする「アニマルポリス」というキーワードがありまして、それについて解説いただきたいと思います。

杉本:当財団の「EVA」でも力を入れて取り組んでいるところです。「アニマルポリス」とは、その名称のものがアメリカに既に存在しています(参考:アニマルポリスってなんだ?/dog actually)。また、それと同じ名称でなくとも、その他の動物愛護先進国のヨーロッパなどでも、それと同様のシステムがあります(オランダ、イギリスのRSPCA・日本語版Wikipediaはこちら)。動物虐待の事件は、今たくさん起こっている上に、後を絶ちません。虐待、殺傷、ネグレクト(飼育放棄)、いろいろなものがありますが、それを専門に捜査して取り締まる機関が日本にはないのです。動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)環境省による概要解説ページ)というものが、日本でも存在してはいるのですが、なかなかそこに力を入れて警察が動いてくれない。法律はあるのに、それがきちんと機能していないのが、悲しいかな日本の現状です。そういったことを回避するために、動物愛護法の知識をしっかりと持った警察官が、強制力を持って、捜査権限を持って、動物虐待事案に対して、捜査し、取り締まをしてくれる機関が、絶対に日本にも必要だということで、それを導入してほしいという、請願を起こしています。

昨年は、私の住んでいる京都から設置してほしいという声を起こして、約7万2千以上の署名をいただいて京都市長へ請願しました。京都市だけではなく、京都府、警察を巻き込んで、やらなければいけない。それを実現するには、乗り越えるべきテーマがまだたくさんあり、設置には至っていないのですが、兵庫県では、この訴えを真摯に受けとめてくれたある議員が、勉強会を開いてくださって、そこで私も講義をさせてもらいました。それがきっかけで、地元の愛護団体の方と、タッグを組んで、兵庫県に「アニマルポリス・ホットライン」という電話相談窓口ができたのです。これは、まだ本格的な「アニマルポリス」ではないのですが、電話相談窓口が開設できたことで、そういった問題が起こったときに、どこに相談すればいいかが明確になったわけです。

そのため、たくさんの相談が、今、寄せられています。「アニマルポリス・ホットライン」は「アニマルポリス」の第一歩としてスタートするべきものだと思いますから、本格的な「アニマルポリス」への期待が、兵庫県で高まっています。そして、警察と自治体とで、しっかりと共有した情報を持って、どのような事件が起こっているかを、まず認識するのがとても大切なのです。その点で、兵庫県は他府県を一歩リードしているといると思います。

司会:「アニマルポリス」が世の中に出てくるようになれば、動物の悲しいニュースも無くなるかもしれませんね。

杉本:動物虐待・殺傷事件も、最近たくさん、ニュースで目にしていると思います。これは動物の問題ではなく、私たち人間の問題なのです。佐世保の、中学生による同級生殺害事件では、事件に至る前に、たくさんの猫を殺害していたという前兆があったわけです。動物虐待の事件は、必ずエスカレートして、人間への危害に発展していくのです。そこをしっかりと受けとめて、人間の被害に及ぶまでに、動物虐待の時点でしっかりとそれを取り締まり、罰していく必要があります。

繰り返しますが、動物だけの問題では、決してないのです。小さな子供たちが安心して、安全に暮らしていくためにも、その問題は、人間が取り組んでいかなければならないことを、たくさんの皆さんに意識していただきたいと思っています。最近は芸能活動よりもこちらの活動ばっかりしていますね(笑)。

河瀬:おっしゃっていただきたいこと、をすべてお伝えいただいて感無量です。私も子供ころから猫を見ると拾うクセがあると、親からいわれるほどで。何の罪も犯していない小さな命が、殺されていることに、子供のころから素朴な疑問を感じていました。それを何とかなくしたいと思う心が、大切なのかなと思って、今まで何とかやってきました。

司会:今回「ネコ市ネコ座」という形で、多くの皆さんに触れてもらう機会が生まれたのですが、今後やっていきたいことは?

河瀬:猫が好きな人も、猫に興味のない人や嫌いな人もいらっしゃると思います。ただ、野良猫の問題や、「猫が嫌いと思ってしまうような行動を猫がしてしまうこと」は、解決する方法が必ずあるのです。それをみんなに知ってもらうために、今回のイベントや、お店(猫カフェ)をどんどん増やしていきたいです。目標としては、Neko Republicが、全都道府県に一つずつあって、相談する窓口になれたらいいなと思っています。

杉本:より多くの方に耳を傾けてもらうには、楽しいイベントと繋げていく必要があると思うのです。1年間に、犬猫合わせて、行政が把握しているだけで、16万頭以上が殺処分されています。その処分というのは、決して安楽死ではありません。二酸化炭素ガスが注入されて、何分もの間苦しみ、窒息していく形で、もがき苦しんで亡くなっていくのです。その光景はまさに地獄のようなものです。

16万頭を1日あたりで計算すると400頭以上にもなります。そのなかの大半が猫なのです。理由は、飼い主のいない猫たちの問題がなかなか解決していかないというところにあります。この殺処分数を、ゼロに等しくするためには、地域猫活動を周知・理解していただき、推進していくしか、絶対にないのです。

猫の糞尿のことで被害に遭っている方もいらっしゃいますが、そういった被害を解決するところまで、地域猫活動をする側は努めなければなりません。そうして初めて、一つの地域猫活動として、成立するものなのです。ぜひお困りの方がいたら、ご相談いただきたいと思います。また、嫌いだ、迷惑だといって排除するのではなく、猫が嫌いな人も、猫を救いたい人も、ぜひ一つになって、手を取り合って問題解決に向かっていただきたい。そうすれば、必ず解決に至ることは、たくさんの国内の前例が示してくれています。ご理解いただきたいと願っています。

成功しているところは、行政と、地域のボランティアさんと、しっかりと連係をとって取り組まれています。そこで一番問題なのは、猫の去勢・不妊手術にはお金がかかることです。地域によって、助成金が出ているところもあれば、ないところもあります。大垣市は、まだ助成が出ていないため、ボランティアさんは自己負担しています。メス猫の避妊手術ですと2万円以上かかりますし、オス猫の去勢手術も1.5万円くらいかかります。それが何匹もとなると、非常に大きな支出になります。

そこで、寄付を募っているのですが、まだまだ不足している現状があります。また、行政のしっかりとした助成が出ていないことが、ものすごく弊害になって前進していかないこともあるため、ぜひ皆さまも、ご自分のできる範囲でボランティアの方々のサポートをしていただければ、非常にありがたいなと思います。

河瀬:動物愛護の先進県になるということは、人間が豊かだということだと思うのです。小さな命に、優しくできる人たちが多い街は、絶対に人も暮らしやすい街になると思っております。

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同時に開催された、Neko Republicの臨時店舗では10時から15時の営業時間内に、約120人もの来店があったとのこと。また、猫に因んだ出店が並んだ「ネコ市ネコ座」のブースにも、多数の来店者が黒山の人だかりでした。

「動物は言葉を持たず、人間社会のなかで、一番の弱者だと思う」との杉本さんの言葉は、猫はすでに人間の保護下でなければ暮らせない生き物であると考える者として、首肯するものです。特に都市部では顕著であり、都市部と比べて自然の残る地域であっても、猫を含めた動物が野生のままに生きられる場所は、実は皆無で、もし、仮に自然へ帰すことを是とするならば、「動物が繁殖できて人間と共存せずにすむ自然」を構築しなければ片手落ちになってしまいます。猫との触れあいによって、保護活動に協力できることがより広まることを、猫ジャーナルとしても願うと同時に、微力なブログとしては、猫との生活の豊かさや猫の魅力、猫との暮らし方を少しでも日々の記事で伝えられたらと思っております。

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(2014年9月8日「猫ジャーナル」より転載)