PRESENTED BY ネクストリボン

ダイバーシティー&インクルージョンを掲げ がんと闘う人たちを社内外で支援

“がんとの共生社会”の実現に向けて、民間企業による先駆的な動きが始まっている。このテーマと真摯に向き合うギャップジャパン株式会社の取り組みをリポートします。
Koji Mori

がんとの共生社会を目指して

先進企業の取り組みインタビュー

ネクストリボン先進企業 vol.1

“がんとの共生社会”の実現に向けて、民間企業による先駆的な動きが始まっている。このテーマと真摯に向き合うギャップジャパン株式会社の取り組みをリポートしよう。

アメリカンカジュアルブランドのGapを展開する米大手専門小売企業Gap Inc.は、「Do more than sell clothes(服を売る以上のことをしよう)」という志を掲げ、創業以来さまざまな社会課題に目を向けてきた。これまでもグローバル企業として環境保護や女性の生活向上、児童労働の撲滅、エイズ対策支援、LGBT支援などの分野で先駆的な社会的インパクトの創出に取り組んできた。そして、その志を受け継ぐ同社の日本法人ギャップジャパンが今、新たなテーマの一つとしているのが「がんとの共生」だ。

「日本国内で、がんにかかった人の約4割が治療開始前に会社を辞めてしまうことや、多くの人ががんであることを会社に言えないことは、私たちにとってショックな事実でした」

ギャップジャパン人事部の志水静香氏はこう語る。課題があればそこに真っ先に動くのがGapのフィロソフィー。すでに社内外で積極的な取り組みを見せている。その背景にある考え方は同社が大切にする「ダイバーシティー&インクルージョン」だ。

多様性を尊重する風土

「社内に関して言えば、グローバルファッションブランドとして、この会社で働くすべての人が、多様な個性や能力を最大限に発揮できるような風土・文化を実現することが私たちの目標です。それが『子どもができたから、病気になったから』といった理由で阻害されてはならない。支援が必要であれば会社にできることを考え、実行します。がんと闘う社員の支援もその一環です」

同社でもがんに罹患する社員や、がんに罹患した家族をもつ社員がいる。また、闘病後の職場復帰も実現しているという。ポイントの一つは相談できる環境があることだ。

「ベースにあるのは信頼関係に基づくコミュニケーション。オープンドアポリシーのもと、普段から、意見があれば上司にでも人事にでも話ができる組織風土がありますし、人事も現場のニーズをできるだけ吸い上げるよう努力しています。自分の病気のことも気兼ねなく相談しやすい環境なんです」

そのうえで重要なのは、それぞれの意思や事情に応じた個別のマネジメントだと志水氏。

「最初はやはり仕事と治療の両立に不安を感じている人が多いですね。しかし、会社としては闘病を支えたいし、戻ってきてもらいたい。もちろん復帰を無理強いすることはできませんが、そのための環境を整備していることは伝えます」

またみんなと働きたい!

同社の人材マネジメントのテーマの一つが「自立」。それは、がん治療中の社員への支援にあたっても変わらない。どうしたいかを決めるのは本人だ。例えば「復帰はしたいが店長職を続けることは難しい」という場合には、会社から職務を変更する選択肢を提示することもある。

「大切なのは、それぞれの考え方や状況を聞くこと。そして、本人の希望に応じて何ができるのかを寄り添って一緒に考えていくことです」

同社はもともと、人事・労務の面においてフレキシビリティーが高い。休職期間は2年までだが、退職後に再入社することも可能。さらに、店長職や本社の一定の職務以上の社員を対象に、働く場所や時間を自分で主体的に決められる柔軟な制度を導入。そしてまた、転勤も強制されない。病状や治療の状況に応じたさまざまなオプションがあることも、がんと闘う社員を支えるものとなっている。

「闘病中の人から『またみんなと一緒に働くことを心の支えに頑張っています』とメールが届くこともあります。これは私たちにとっても、非常にうれしいことですね」

同時に、Gapは社会に向けた情報発信にも動き出している。2016年5〜6月には、小児がん支援をテーマに、限定コレクション商品の販売やイベントなどに取り組んだ。

感動と共感で人を動かす

「自らも小児がんと闘いながら、自宅で手作りレモネードを販売して、売り上げを小児がん研究に役立てたアレックス・スコットという少女のエピソードにインスパイアされた企画です。小児がんについては日本では実態があまり知られていませんが、入院生活が長引き、学校で社会生活を学ぶ機会が損なわれるなどさまざまな課題があります。ですから、単に寄付金を募るだけでなく、人々に積極的に関心をもってもらいたいという思いをこの企画には込めています」とGapマーケティングPRの小神野直子氏。

エピソードにちなんだレモネードスタンドを設けたほか、SNSでは、情報発信と同時にワンクリックごとに同社が10円を寄付するソーシャルマッチングプログラムを展開、10万シェアを達成した。

さらに、2016年9月30日から3日間にわたって、乳がんサバイバー支援のために、限定スポーツウェアの販売やヨガイベントなどを開催。

「働き盛りや子育て世代の女性に多い乳がんに関しては、早期発見・治療の啓発のみならず、治療に取り組みながらいかに輝いて毎日を過ごすかということが今の課題です。そこで、ファッションやエクササイズを楽しんだり、オープンに人と関わることが大切だと考えました」

ファッションブランドだからこそできることは何か――。感動や共感をフックにした同社の取り組みは「がんとの共生社会」実現に向けて人々を一歩ずつ着実に動かそうとしている。

Gapフラッグシップ原宿で開催された、乳がんサバイバーを支援するチャリティーヨガイベントの様子。同時に「乳がん予防・治療にもたらすスポーツの効能」をテーマとしたミニトークショーも開かれた。

鮮やかなピンク色が印象的なショッピングバッグ。乳がんサバイバー支援キャンペーン期間中に全国のGapストアにて1枚100円で販売し、寄付にあてられた。主旨に共感し、中には1人で10点以上購入した人も。

初夏の土日2日間にわたり、Gapフラッグシップ銀座でイベント開催時に1本300円から販売されたレモネード。売り上げは全額が小児がん支援に取り組むNPO法人キャンサーネットジャパンに寄付された。

アレックスのレモネードスタンドを再現したかわいらしいカートが人目を引き、2日間とも大盛況。多くの人が冊子を手にし、関心を深めていた。実際に小児がんを克服した人たちもSNSで情報を知り、数多く訪れた。

Gapは人事部とマーケティングチームがタッグを組み、今後「一人ひとりの個性や可能性を引き出す社会の実現」に向けた取り組みを社内外に発信していく。

ギャップジャパン株式会社

Gap人事部シニアディレクター 志水 静香氏

AMD、マイクロソフト、ゼネラルモーターズなどを経て、1999年にギャップジャパンに入社。採用、研修、報酬管理など人事全般の管理業務をプロジェクトリーダーとして牽引。2011年シニアディレクターに着任。13年からGap部門の人事を統括。

ギャップジャパン株式会社

GapマーケティングPR シニアマネージャー 小神野 直子氏

アウトソーシングPR 会社を経て、2008年、ギャップジャパンにGapブランドのPR担当として入社。現在はGapマーケティング部/ストラテジックPRにてシニアマネージャーとして、ブランドマーケティング、PR、CSV(共通価値創造)マーケティングを行っている。

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