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中国が「サッカー超大国」を目指す本当の理由

2016年12月04日 23時14分 JST | 更新 2016年12月04日 23時14分 JST

グローバルスポーツビジネスにおいても、中国の成長が目覚ましくなっています。中国はヨーロッパ中のクラブチームやスポーツ関連企業を買収。世界のリーグやチームが、中国でのビジネスに目を向けています。

また、世界中のクラブチーム、連盟組織、リーグ、スポンサー企業などのスポーツ業界が中国という大国と、そこに暮らす人口13億7000万人に目を向け、成長発展の機会を求めています。

◆中国でのサッカー人気の高まり

サッカーは、中国の人気スポーツイベントのトップ5のうち3つを占めるほど人気です。1位はFIFAワールドカップ、次がNBA。上位5つのうち卓球世界選手権だけが例外のスポーツです。スポーツ全体を見ても、ここ3年に渡ってサッカー人気は着実に高まっていて、都会に住む16歳から59歳の年齢層では、31%がサッカーに興味があると答えています。

ヨーロッパのクラブチームでは、レアル・マドリードが中国で一番人気。続いて、イタリアのインテル、ACミランが続きます。これはセリエAが、1980年代後半に欧州リーグとして初めて中国で放送された歴史的な経緯に由来します。

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ちなみにバスケットボールは中国で最も人気の高いスポーツで、1995年に設立された中国プロバスケットボールリーグ(CBA)は国内のトップリーグ。また、NBAは、ここ十数年に渡って中国国内でも試合を開催しており、今では中国で長年人気を集めてきた卓球やバドミントンを凌ぐほどになりました。

◆拡大するサッカーのマーケット

2014年10月、中国政府は2025年までのスポーツ産業の予算を5兆元(8130億USドル)とし、国民の健康アップから海外投資の増大まで、これまでの行政手続きを簡略化して推進。中国の大手企業もスポーツ施設の建設のために基金を設立するなど、巨額の投資を行っています。

中国サッカー協会は2016年4月、中国を「2050年までに世界的なサッカー強国にする」との長期計画を発表。中国人のサッカー参加意識を促し、全土に急速にトレーニングセンターやサッカー場を建設する施策を推進(2030年までに1万人につき1サッカー場を備える)。さらに男女ともに中国代表チームのレベルアップを図ろうとしています。

中国スーパーリーグに所属するのは16チーム。その不動産事業にもそれぞれのオーナーの特徴が現れています。投資家たちはスタジアム周辺の都市や地域を幅広く発展させることでクラブのポテンシャルを見据えています。

◆中国スーパーリーグの超大型移籍金

ここ3年、中国のクラブチームが海外のビッグネーム獲得に巨額の移籍金を投じたことが大きな話題となり、中国スーパーリーグは海外の放送局を含め、世界の注目を引くようになっています。今季は英スポーツ専門チャンネルのSky Sportsが、中国スーパーリーグの試合を生中継。現地のナイトゲームを、イギリスの週末ランチタイムに放送しています。

FIFAのトランスファー・マッチング・システムによると、中国クラブの海外移籍金は2014年から2015年の間、60.5%も増加。今季も中国クラブによる海外ビッグネーム獲得のニュースが話題を呼んでいます。

ロシアのFCゼニト・サンクトペテルブルクからはブラジル人のフッキが上海上港に移籍。その移籍金は中国史上最高額となる6100万ドルと報じられました。また、その前にも中国クラブの江蘇蘇寧が、ウクライナのシャフタール・ドネツクからアレックス・テシェイラ・サントスを移籍金5100万ドルで獲得しています。

◆影響力が広がる中国マネー

選手獲得だけでなく、中国企業や富裕層による欧州サッカークラブチームの買収劇は、サッカー界に激震をもたらしています。ACミランやインテルは、中国の資本が買収、アトレティコ・マドリードやマンチェスター・シティも、中国の投資家が投資をしています。

イングランド、フランス、イタリア、スペインのトップチームにも、すでに中国の資本になっているクラブチームが複数存在しています。ただ、ドイツは今のところレギュレーションで守られているため、ブンデスリーガでの中国投資はありません。

投資はそれぞれ異なるものの、中国政府のサッカー戦略もそうした動きを促しています。今後さらに投資は増えることが見込まれ、2015-16年シーズン、欧州のサッカークラブチームが中国のスポンサーから得た投資額は3500万ドルを超えています。

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◆中国資本はエージェントにも食い込む

クラブチームや選手への投資が大きなニュースになりがちですが、中国はたくさんの大手サッカーエージェントも買収。国際的な影響力を強めつつあります。

2015年2月、大連万達グループは、スイスのスポーツマーケティング企業インフロント・スポーツ・アンド・メディア(以下、インフロント)を12億ドルで買収しました。インフロントは、サッカーだけでなく世界中のメジャースポーツにリンクした会社で、様々なクラブチームや連盟をクライアントに抱えています。

大連万達グループはまた、世界最大のトライアスロン運営企業であるワールド・トライアスロン・コーポレーションも買収し、アトレティコ・マドリードやその他、たくさんのプロジェクトに投資し、中国でのサッカー発展に寄与しているのです。

◆中国がサッカーに力を入れる本当の狙い

サイモン・チャドウィック教授(サルフォード大学)はこれら中国の動きに関して、「クラブを買収したり、エージェントとスポンサー契約を獲得したり、巨額の国内投資は一見するとサッカーが主眼のようにみえるが、実は向こう10年を見据えた産業部門の構築にすぎない」と述べています。

中国政府はサッカーを使って産業発展を促そうとしています。そうしたビジョンには、FIFAワールドカップ大会の開催地となることも含まれていて、そうなれば国内のスポーツ産業も活性化すると見込んでいます。

中国政府が目指しているのはサッカーだけでなくスポーツを、コンピューター産業のように大きな産業として構築することです。スポーツから中国のため収益を上げ、雇用を創出し、輸出による収入を生み出すことで、中国はソフト・パワーを持ち、その社会文化的影響力は世界を席巻するかもしれません。

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