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人間ドックのスケジューリングについて思うこと 医療資源の効率的な活用と受診者の待ち時間の短縮化:研究員の眼

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はじめに

毎年6月から8月にかけては、人間ドックを受ける季節となっている。私も、東京に移り住んでからのここ10年間は、6月か7月に、いつも同じクリニックで人間ドックによる検査を受けている。

私の通うクリニックの場合、受付から最後の清算まで、全体として、約3時間程度で終了する形になっている。

たかが3時間なので、あまり気にする必要もないのだが、時々、検査項目によっては長い待ち時間となり、全体のスケジューリングがどのように行われているのだろうか、とふと疑問に感じたりもする。

さらに効率的な運営が行われていれば、待ち時間をより短縮できるのではないか、とも思ってしまう。これは、時間に追われている現代人の悪い癖なのかもしれない。

人間ドックの検査項目

人間ドックの検査項目には、①身体計測(体重、身長、腹囲)、②血圧、③採血、④視力、⑤眼底・眼圧、⑥聴力、⑦心電図、⑧肺機能(肺活量)⑨胸部レントゲン、⑩腹部超音波、⑪胃部レントゲン(バリウム検査)、⑫問診、⑬診察、等が含まれている。

また、受診者の希望に応じて、各種のオプション検査も行われることになる。例えば、⑪の代わりに、「胃カメラ」等が選択されたりする(*1)。さらに、女性の場合には、女性特有の検査も行われることになる。

これらの検査項目において、検査に要する時間はそれぞれ異なっている。もちろん、病院サイドも、時間がかかる検査については、それがボトルネックになって、全体の効率を損なわないように、複数の検査ブース等を設定している。これによって、全体の検査が滞らないように管理されている。

私の通っているクリニックでは、①から⑧の検査については、基本的には1つか2つ(採血は3つ)の検査ブースを配置しているが、⑨、⑩、⑪、⑫については、3つ以上の検査ブースを配置しているようである。

人間ドックの検査項目のスケジューリング

さて、これらの検査項目のスケジューリングは、一般的にどのように行われているのだろうか。

全員が同じ検査項目の順番に従って受診するケース

昔は、学校や職場等の健康診断と同様に、受診者全員が最初の検査項目から、順番に検査していたように思われる。今でも、そのようなクリニックも多いのかもしれない。

受診者をグルーピングして、いくつかのパターンを有しているケース

私の通っているクリニックでは、検査の順番は、受診者によっても異なっている。かといって、全く無秩序に順番を決めているわけでもなさそうで、どうも、いくつかのパターンがあるようにみえる。受診者をいくつかにグルーピングして、それぞれのパターンに従わせているようにみえる。

看護師に「次は○番の検査項目に行って下さい」と指示されて、言われるがままに、該当検査項目の場所の棚に検査ボードを立てかけている。時には、ボードが多く並んでいて、かなり待たされることになる。

加えて、特定の看護師が、各検査の繁閑を見る中で、看護師全体に対して、「○番の検査項目へ誘導して下さい」というようなことを述べて、全体のスケジューリングの管理を行っている。

個々の受診者をスマートフォンで管理しているケース

これに対して、聞くところによれば、最近は、個々の受診者にスマートフォンを配布・携帯させて、スマートフォンでスケジュール管理をしているクリニック等もあるようである。

1つの検査が終了すると、スマートフォンが各検査項目の待ち状況を勘案して、各受診者に対して、最も適切な次の検査項目を指示してくれるようである。

これも何か機械に管理されているようで、必ずしもいい気持ちがしないと思われる人もいるかもしれないが、時間の効率的管理のためには、止むを得ない。

人間ドックのスケジューリングの研究

必要性

こうした人間ドックのスケジューリングについては、医療機関にとっては、①医療資源(医療機器台数や看護師数等)の適切な管理、②効率的な業務運営、③待ち時間をできるだけ少なくすることによる受診者の不満解消によるサービス水準の向上、という観点から、大きな意味を有している。

加えて、これから、さらなる高齢化社会を迎えて、人間ドック受診者が増大してくることが想定されることから、この問題は、社会全体にとっても、同様に重要な意義を有してくることになる。

従って、こうした人間ドックのスケジューリングについては、いくつかの研究も行われてきている。

目的

目指すべきは、「(一定の医療資源の制約下で)受診者全員の総検査時間が最小となる最適スケジュールを作成する」ということになる。より具体的には「各受信者の検査項目の順番を決定する」ルールを定めていくことになる。

この問題を考える上においては、モデルの単純化等のため、一定程度、受診者や検査項目をグルーピングすることも必要になってくる。

スケジューリングにおいて考慮すべき要素

ただし、実際のスケジューリングを考える上においては、各受診者の、検査開始時間、検査項目、検査時間等が異なってくる、ことも考慮する必要がある。

さらには、検査項目の順番を考える上においては、「特定の検査項目を受けるためには、ある他の特定の検査項目を終了していなければならない。」というような制約(この観点から、「⑪胃部レントゲン(バリウム検査)」は、必ず最後の方で行われることになる)もある。

加えて、できれば、「受診者は、検査開始の順番で全ての検査を終了する」ことが望まれることになる。

なお、これに関連して、全体の総検査時間が最小化されたとしても、一方で、特定の受診者の検査時間が長くなることも望ましくなく、「受診者間での検査時間の平準化」も求められてくることになる。

実際への適用

こうしたいくつかの制約要因も踏まえた上で、モデリングを行うことが考えられるが、これに伴い、より問題が複雑化していくことになる。

こうした点を考えていくと、全てを事前に決定することは難しく、大きく原則的な考え方を定めた上で、実際の運営において、状況に応じて適宜修正を行っていくことが不可欠になってくるように思われる。

その意味では、先に述べたスマートフォンを活用したスケジューリングは、ある意味で1つの望ましい方式を示しているのかもしれない。

おわりに

久しぶりに胃カメラを受診して

今回は、久しぶりに、内視鏡による胃カメラを受けてみた。大分以前に胃カメラを受けたことがあるが、その時は口から挿入する形で、大変苦しい思いをして、できれば2度と受けたくないものだと思っていたが、年齢的に一度はしっかり診てもらうことも必要だと思って、胃カメラを選択した。

今回は鼻から挿入する形であったが、かなりスムーズに終わり、これだったら、来年以降も毎年受けてもいいな、と感じた。ただし、鼻から挿入する場合でも、医師や看護師の腕によるところもあるようで、今回はたまたまラッキーだったのかもしれない、という気もする。

いずれにしても、若干食わず嫌いな点もあったと、認識を新たにしている。実は私と同じような経験・考え方をして、胃カメラを敬遠している人はかなりいるのではないかと思っているので、再考されることをお勧めしたい。

因みに、多くの人がバリウムによる検査を選択しているので、胃カメラによる検査を選択した場合には、予約制で少数派となり、待ち時間も少なく終わるようである。

通常の人間ドックでは、バリウムによる検査が最後になり、最も多くの待ち時間を費やすことが多いと思われるが、胃カメラを選択した場合には、このプロセスが効率化されることになる。ただし、料金は上乗せされる形になるので、この点は了承する必要がある。

人間ドックに思うこと

人間ドックのスケジューリングの重要性を述べてきたが、受診者の立場からは、基本的には3時間程度の人間ドックの時間は、自分の健康を見つめ直す良い機会であると思われる。

従って、あまりあくせくせずに、少なくとも受診日当日はストレスも感じずにゆったりと構えておくのが望ましい、と思われる。

待ち時間には、通常はあまりじっくりと読む機会のない雑誌に目を通したり、(平日に受診すれば)同様に通常ならば見ることのないテレビ番組を見たりすることで、何か新たな発見をすることになるかもしれない。もちろん、そんな前向きに物事を捉えずに、ただぼーっとして、リラックスしているのでもよい。

いずれにしても、通常は、健康にあまり気を使わない、あるいは使うことができないほど日々の仕事等に没頭している人も、この時ぐらいは、スケジューリングは医療機関にお任せして、待ち時間があれば、ゆっくりして、日常とは異なるわずかな時間を楽しむことでよいのではないか、と感じた次第である。

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(*1) さらに、最近では、虫歯や歯周病の早期発見等を含めた歯の健康を総合的にチェックする「歯科人間ドック」が広がりをみせてきているようである。

(2016年8月2日「研究員の眼」より転載)
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