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1日300人が訪れる「五月が丘まるごと展示会」-40軒の家庭が紡ぐ"物語"に触れて想うこと:研究員の眼

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先日執筆した、「まちづくりレポート|住宅団地活性化なるか!」でも触れたのだが、広島市内の戸建住宅団地を見学する機会を得て、住宅団地に対する見方やまちづくりの考え方を大きく改めなければいけないと感じている。

そのきっかけとなったのが、昨年5月に見学した、「五月が丘まるごと展示会」だ。広島市佐伯区の五月が丘団地では、毎年5月上旬の3日間、このイベントを開催している。

団地内にある40軒近くの個人宅を開放し、その家庭で制作した作品や自慢のコレクション、ガーデニングなどを一斉に披露する催しである。今回で10回目を迎えた。

主催は住民有志からなる実行委員会で、運営は、出店者の参加費や協賛金などですべて賄っており、無料で乗り降りできる巡回バスも走らせている。

10回目となる、まるごと展示会は、今では広く知られるようになり、1日に300人以上が訪れ、中には期間中の来場者が1,000人を超えるお宅もあるという。

筆者が訪れた日も、実行委員会が作成したまち歩きマップを片手に、巡回バスを乗り降りし、目印のハタが下がったお宅を探しながら歩く人々をたくさん眼にした。

数軒のお宅を見学して、展示作品の、趣味の域をはるかに凌駕した完成度の高さや、センスのいいコレクションに驚くとともに、展示場所である住宅にも非常に感心した。

家主の個性を反映して、住まいのしつらえもそれぞれが個性的であるのだが、そこには、自分らしい生活を追求しようとする姿勢が共通している。

筆者は見学を終えて、数十年経過した団地の歴史を感じざるを得なかった。同じ団地の中で時を過ごしながら、個々の家庭でそれぞれの文化的な営みを育んできた。それがここに息づいている。

住宅団地は単なる住宅の集積地ではなく、個々の家庭が紡いできた物語の集積なのだ。

これは五月が丘団地に限らないはずである。高齢化や人口減少といった側面にばかり気を取られ、まちづくりを考える上で最も重要な部分を見落としていたように思う。

そのことを、「五月が丘まるごと展示会」が、住民の力で10年継続してきたという圧倒的な説得力で気付かせてくれたのである。

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(2017年1月26日「研究員の眼」より転載)
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社会研究部 准主任研究員
塩澤 誠一郎