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高齢者の「貧困」と「犯罪」-福祉施設化する刑務所

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日本では、『21世紀の資本』(みすず書房、2014年12月)の著者トマ・ピケティ氏の来日を契機とし、格差への関心が高まり、国会でも各党の代表質問で活発な論戦が展開されている。

格差問題はどこに焦点を当てて議論するかで様相が大きく異なる。国内の格差も世代内格差か世代間格差かで問題解決の方向性が違う。

ここでは格差問題のひとつとして、高齢者の貧困について考えてみよう。

日本の所得格差の推移をジニ係数でみると、当初所得の格差は拡大している(*1)。若年世代に比べ世代内格差が大きい高齢世帯の増加や世帯規模の縮小が主たる要因と考えられる。

また、再分配後の格差はほぼ横ばい状態だが、高齢世代では、多くの個人金融資産を所有する富裕層も見られる一方、資産も所得も少ない貧困層の問題は深刻であり、159万に上る生活保護受給世帯(平成26年2月)の45.5%は高齢者世帯となっている。

法務省『平成26年版犯罪白書のあらまし』(2014年11月)によると、一般刑法犯で検挙された者は減少傾向にあるが、高齢者の検挙者数は増加傾向が著しい。高齢者犯罪の特徴は「窃盗」の割合が高く、特に女子は「万引き」が8割以上を占めていることだ。

高齢者の起訴猶予率は高いが、高齢入所受刑者は過去20年間ほぼ一貫して増加しており、入所受刑者の高齢者率は人口の高齢化以上に上昇している。

また、高齢者は入所受刑者全体に比べて、再入者の割合が高いことも特徴だ。その背景には高齢者の貧困問題がある。釈放後の引受人がいない、帰住先が確保できないことに加え、出所後に働くことが困難で経済的困窮に陥り、犯罪を繰り返す再犯者になる可能性が高いのだ。

近年では、受刑者の高齢化が進み要介護状態の人も多い。若年の受刑者は刑務作業として高齢受刑者の介護に当たることも多く、一部の刑務所は介護施設の様相を呈しているという。

平成26年3月の特別養護老人ホーム待機者は52万人に上るとの調査結果もあり、出所後に介護を必要とする人が入居できる見込みは低い。

頼る身寄りもない出所者は、介護を受けるために「万引き」や「無銭飲食」を繰り返して再入所することもあり、「貧困」と「犯罪」は極めて深く関わっているのだ。

出所しても安心して暮らせる環境の不備が再入所につながるなら、それは社会福祉の問題でもある。犯罪の少ない「安全社会」とともに、介護の心配ない「安心社会」をつくることは表裏一体の課題だろう。

高齢者の「貧困」と「犯罪」の関係から鑑みると、格差をマクロ統計的に捉えるだけでは不十分であり、その背後に潜むミクロの課題を解決することが、政治の大きな役割ではないだろうか。

*1 厚生労働省「平成23年所得再分配調査報告書」

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(2015年2月24日「研究員の眼」より転載)
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社会研究部 主任研究員
土堤内 昭雄

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