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「超高齢社会」乗り越える技術-老老介護時代の「車いす」:研究員の眼

高齢福祉分野では介護ロボットの開発も活発に行われている。

2017年10月10日 15時07分 JST | 更新 2017年10月10日 15時07分 JST

最近、高齢の母の自立歩行が困難になり、介助用車いすを使う機会が増えた。車いすを押していると、道路に左右の傾斜があることに気づく。車いすをまっすぐ進めることは案外難しく、どうしても傾斜のあるほうへ曲がってしまう。

鉄道駅のホームも線路側に緩やかな傾斜があり、車いすが線路に転落する事故も発生している。このような車いす利用者の不安を解消するためには、自操用であれ、介助用であれ、車いすを安全・確実にまっすぐ動かす技術が必要だ。

そう思っていたら、9月下旬、ヤマハ発動機が傾斜した路面もまっすぐ走れる「片流れ制御機能」を搭載した「電動アシスト車いす」を東京大学と共同開発したという報道があった。ヤマハ発動機では、1995年から既存の手動車いすを簡単に電動化できる「車いす用電動ユニット」を製造・販売している。

そこに電動アシスト自転車の技術が応用され、腕で車いすの車輪を漕ぐ力をモーターがアシストする「電動アシストユニット」を開発、さらにさまざまな制御機能が付加されているのだ。

腕の筋力が衰えて自操が難しくなった車いす利用者も、「電動アシスト車いす」があれば、自立生活を長く続けられる。小型で軽量なので自動車移動と組み合わせれば行動範囲も一層広くなるだろう。

車いすを漕ぎ出す時、上り坂・下り坂の時、悪路などハンドリムに大きな負荷がかかる場合も、利用者の状況や環境に合わせてモーターがアシストする。

アシストする距離を調節したり、両輪のトルクを制御して片流れを防いだり、下り坂のスピードを押さえたりすることが可能なのだ。

少子化が進展する中で本格的な高齢社会を迎え、すべての介護を若い世代に委ねることはできない。超高齢社会は高齢者自身が高齢者を支える「老老介護」を前提とする必要がある。介助用車いすを押す非力な高齢者をアシストする上でも、介助用車いすに電動アシスト機能を加えることが必要だろう(*1)。

段差解消のための数メートルの緩やかなスロープも高齢者が介助用車いすを押すのは大きな負担で、緩やかな下り坂でも高齢者が車いすのスピードを抑えることは想像以上の力を要するからだ。

高齢福祉分野では介護ロボットの開発も活発に行われている。高齢者の自立支援型、介助支援型、コミュニケーション型などさまざまな用途の製品が開発され、AIを活用した認知症対応のセラピーロボットなどもある。

少子化と人口減少をともなう超高齢社会を乗り越えるには、高齢者の残存能力を十分に活かし、介護者(ケアラ―)の負担を軽減・代替することが不可欠だ。高齢課題先進国・日本のモノづくりにおける高度な製品開発力と製造技術力が遺憾なく発揮されることを期待したい。

(*1) 第44回国際福祉機器展H.C.R.2017(9月27日~29日)では、ナブテスコ(株)が「介助用電動アシスト車いす」を出展していた。

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(2017年10月3日「研究員の眼」より転載)
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