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AI(人工知能)との付き合い方-「風が吹けば桶屋が儲かる」は、本当か?:研究員の眼

AIが示す相関関係を根拠にして政策の意思決定をするのは早計だが、無視することもできない。

2018年02月01日 17時58分 JST | 更新 2018年02月01日 18時04分 JST
chombosan via Getty Images

最近、AI(人工知能)に関する話題が、新聞やテレビなどのメディアに取り上げられない日はない。理由は、AIの発展が現代社会へ与える影響があまりにも甚大だからだ。

AIがビッグデータを活用することで、ある「がん細胞」に効く薬を瞬時に発見するなど医学分野における効果が期待される一方、AIが人間の多くの知的労働を代替し、これまでわれわれが従事してきた仕事がAIに奪われるのではないかという懸念が現実のものになりつつある。

近年ではセンサー技術が進歩し、あらゆるデータを容易に集められる上に、コンピューターが大量のデータを高速で処理できるようになったおかげで、社会のさまざまな現象を瞬く間に解析することが可能になった。

その結果、思いもよらない事象間に相関関係があることがわかったりする。昔から日本でよく知られる『風が吹けば桶屋が儲かる』も検証できるかもしれない。但し、注意しなくてはならない点は、相関関係は必ずしも因果関係を示すわけではないことだ。

昨年7月のNHKスペシャル『AIに聞いてみた~どうすんのよ!? ニッポン 』という番組では、AIが人口や医療・消費動向など700万ものデータを駆使し、日本社会の知られざる姿を明らかにした。

分析結果からの提言のひとつは『40代ひとり暮らしが日本を滅ぼす』というものだ。解説を読むと、『「40代ひとり暮らし率」が増えるとき、「自殺者」が増え、「生活保護費」も増加、さらには「合計特殊出生率」が減って少子化が進み、「餓死者」まで増えるという状況が見て取れます』とある。

AIが示す相関関係を根拠にして政策の意思決定をするのは早計だが、無視することもできない。消費動向のマーケティングなどでは、因果関係が明らかでなくても、相関関係を活かした戦略は有効だからだ。AIが活用するビッグデータは、「質より量」が問われ、結果がわかれば理由は必要ない。

2017年の株式時価総額のランキング上位5社には、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックが並んでおり、『ビッグデータを制するものが世界を制する』というのもうなずける。

AIやビッグデータの活用は、われわれの暮らしに役立つ一方、社会はアルゴリズムが不明な巨大なブラックボックスを抱え込む恐れはないのだろうか。宇宙開発には最先端技術だけでなく、信頼性が確立された既存技術を多く使うそうだ。

巨大なブラックボックス化した宇宙船は、制御不能に陥るリスクが高いからだろう。AIを真に活用するためには、宇宙船『地球号』もAIとの付き合い方に十分注意することが必要だ。

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(2018年1月30日「研究員の眼」より転載)
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