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中小ビル事業の生き残りと成長

2014年06月22日 23時33分 JST | 更新 2014年08月19日 18時12分 JST

テナントのAクラスビル志向が強まる中で

東京都心部で、高いグレードと広い床面積を持つAクラスビルの開発が続いている。

昨年は歌舞伎タワー、ワテラスタワー、お茶の水ソラシティ、東京スクエアガーデンなどが竣工し、今年は虎ノ門ヒルズ、京橋トラストタワー、日本生命大手町ビル、飯田橋グランブルームなどが竣工あるいは竣工予定となっている。これらのビルは満室か、ほぼ満室で開業しており、東京のオフィス市況の回復をこれら新築Aクラスビルが主導している。

テナントによる新築Aクラスビルへの需要の高まりは、(1)リーマンショック以降、長く続いたオフィス不況により、AクラスビルとB・Cクラスビルの賃料格差が大幅に縮小したことと、今後の市況回復・賃料上昇期待から、Aクラスビルのお値打ち感が高まっていることが第一にあげられる。

さらに、(2)東日本大震災以降のBCP(事業継続計画)重視の中で、Aクラスビルにおける耐震性を含めた防災性や、非常時のバックアップ体制への評価が高まったこと、(3)テナント企業によるオフィスのビル集約・ワンフロア集約等の要望から大規模ビルへの需要が増加したこと、(4)東日本大震災後に省エネ性能を中心に高機能オフィスビルへの評価が高まったこと、(5)再開発や建替えが多いため多数の新築Aクラスビルが都心部に立地しており、立地改善が図れることなども理由としてあげられるだろう。

先日、オフィスビル等の運営・管理業務大手のザイマックスから「オフィスピラミッド2014」という、規模別・築年数ごとのオフィス床面積調査が公表された(図表参照)。いわば、オフィスビル版「人口ピラミッド」で、近年の大規模ビルの供給急増と中小ビル供給の少なさを視覚的に確認できる。

これによると、都区部に立地する中小ビル面積の79%は築20年以上を経過しており、大規模ビルが46%であるのとは大きな違いとなっている。つまり、中小ビルのほとんどが一世代以上前の新しくはないビルといえる。

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1990年以降、オフィスビル機能は大きく改善が進んでおり、一般的に、築年の古いビルは最近のビルと比べると、設備面を中心に様々な点で見劣りがする。

例えば、見た目や内装・設備の新しさはもちろん、デザイン(外観・ロビー・内装)、視認性、天井高、執務空間の使いやすさ、耐震性、災害時対応、省エネ性能(LED照明・Low-eガラス等)、空調設備、共用設備(エントランスやトイレ)、防犯設備などである。

特に東日本大震災以降は、BCP(事業継続性)対応や高い省エネ性能はオフィス選択の基本条件となっており、そうした点も、新築ビルへの需要を高めていると思われる。

Aクラスビルの建築計画が次々に立てられ、供給がこれからも続くことを考慮すると、Aクラスビルが中小ビルの需要を吸い上げる流れは今後も続くと考えられる。

しかし、中小ビルに入居するテナントのすべてが大規模ビルに移転するわけではない。都区部中小ビルの稼働率は9割を上回っており、高い耐震性やBCP対応、省エネ、空調、セキュリティ、視認性、高級感、天井高など、最新の設備・構造・サービスを持つ数少ない高機能の中小ビルは、中小ビル市場の中で、高い競争力(低空室率・高賃料)を確保できると考えられる。

Aクラスビルでは、競合ビルの多くが築浅で様々な高機能を整備しているため、ビルの特徴を打ち出しづらくなっているのとは対照的である。

高機能の中規模ビルとしては、野村不動産のPMO(プレミアム・ミッドサイズ・オフィス)が有名な成功例であり、現在17棟が供給されている。サンケイビルは中規模の高機能オフィスビルとしてS-GATEブランドを立ち上げ、三菱地所レジデンスも中小ビルのリノベーションとコンバージョン事業への進出を公表するなど、中小ビル事業をめぐる新たな動きも続いている。

中小ビル全体としては、今後もAクラスビルや大規模ビルに需要を奪われるなど、厳しい競争にさらされると考えられる。

しかし、好立地のビルを中心に、新築や修繕によって高機能を装備した中小ビルは、大規模ビルとの競争においても、相対的にかなり高い競争力を確保できるだろう。というのも、弁護士や税理士などの「士業」や、他社とフロアを共有化したくないIT企業など、高機能の中小ビルに強い需要を持つテナントが一定以上、存在するからだ。

外資系総合不動産サービス会社のジョーンズラングラサールによると、2013年第4四半期のBグレードビルのキャップレートはAグレードビルと比べて120bpの格差があった。

建築費の高騰が懸念材料であるが、現在、加熱といわれるほどの活況が続き、投資適格物件の少なさが指摘される東京のオフィス投資市場において、「オフィスピラミッド」が示すいびつな築年分布は、競争力の高い中小ビル事業が中期的に有望であることを示しているように思われる。

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株式会社ニッセイ基礎研究所

金融研究部 不動産市場調査室長

竹内 一雅

(2014年6月19日「研究員の眼」より転載)