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「給付型奨学金」に期待-「貧困の連鎖」止める教育機会の平等を!:研究員の眼

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「子どもの相対的貧困率」16.3%、OECD加盟34か国中で25位、日本の子どもの6人にひとりが貧困世帯で暮らしている、と聞いてもピンとこない人が多いだろう。

一日あたりの生活費が1.25ドル未満である「絶対的貧困」に比べ、「相対的貧困」とは具体的にどのような状況かわかりにくいからだ。

しかし、風邪をひいても医者にかかれない、栄養のある食事を十分摂れない子どもがかなりいるのだ。

最近では、子どもを支援するNPOなどが食事を提供する「子ども食堂」が各地につくられ、孤立しがちな家庭や子どもたちの地域の交流拠点になっている。また、大学生などによる無償の学習支援も行われている。

これら相対的貧困状態にある子どもを支援する取り組みは緊急を要するが、そもそも子どもの貧困を生み出さない社会をつくることが長期的な対策として重要だ。

貧困問題の特徴は、親が貧困状態にあると子どもが貧困になり、その子どもがおとなになると再び貧困状態に陥ることを繰り返す「貧困の連鎖」だ。負の連鎖を断ち切るために最も重要な政策は教育だ。

親世帯の経済状況に関わらず、幼児教育から高等教育まで、だれもが教育機会を平等に享受できることが必要だが、日本の教育に対する公的支出割合(GDP比)はOECD諸国のなかでも非常に低い。

現在、大学・短大への進学率が5割を超え、その半数以上の大学生(昼間部)が奨学金を利用している。しかし、卒業後の返済負担は大きく、政府は2017年度から返還不要の給付型奨学金を創設する。

文部科学省によると、国立・私立、自宅生・下宿生などの条件により、月額2~4万円を支給するそうだ。保護者の経済的負担を軽くし、意欲のある学生の進学を支援する一助になることが期待される。

一部企業では、就職後の奨学金の返済負担が大きい社員に、返還額を追加支給する「奨学金返済支援制度」を設けている。人材の定着を図ることが目的だ。また、以前から民間企業が設立した財団法人が、給付型奨学金を出している事例も多い。

日本から海外への日本人留学生や、海外から日本への外国人留学生に対して奨学金を出す財団もある。昔から、教育は「国の礎」と考えられてきたからだろう。

日本社会の貧困の拡大の背景には、中間層の衰退がある。今日の貧困問題は、ひとり貧困層だけの問題ではない。高額な大学授業料などの負担に苦しむ中間層は多く、高等教育費の負担軽減が必要だ。

現在の貧困状態を改善し、貧困の連鎖を断ち切り、労働力人口の減少を補償する生産性の向上のためには、教育により固定観念に囚われない多様な能力を有する人材育成が不可欠だ。

本格的な人口減少時代を迎えた日本社会が取り組むべき成長戦略は、一にも二にも「教育」の充実ではないだろうか。

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(2017年3月21日「研究員の眼」より転載)
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土堤内 昭雄